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連載

【第4回】タネまきの基本、床まきをマスターしましょう

文・写真

三橋理恵子

みつはし・りえこ

園芸研究家。一年草・多年草をタネから育てる研究をしている。著書に『三橋理恵子の基本からよーくわかるコンテナガーデン』(農文協)、『イラストで学ぶ、はじめてのガーデニング』(角川マガジンズ)などがある。


※タネのまきどきなどは神奈川県横浜市における栽培に基づいて記載しています。

【第4回】タネまきの基本、床まきをマスターしましょう

2017/04/25

小さな床を用意してタネをまきましょう

床(とこ)まきとは、小さなまき床(容器)を用意して、その中に用土を入れて床とし、タネをまく方法です。私はタネまきのほとんどを床まきしています。そのくらい出番の多いまき方です。苗生産の業界には箱まきという方法がありますが、それを家庭園芸向けに小型化したのが床まきです。苗は少量あればいいので、私は手のひら以下の大きさの豆腐パックなどをまき床に利用しています。サイズが小さいので、発芽適温を保てる場所に手軽に移動できます。また、苗がほんの少量ずつあればいいときは、セルトレイ(セル成型トレイ)を使ってもよいでしょう。

少量多品種のタネをまきたいときに便利なのがセルトレイ。小さなセル1つに1種類のタネを少しずつまきます

床まきは、芽が出た後に移植する必要があります。本葉が数枚育ったら芽を周囲の土ごとピンセットですくって、通常は直径6cmのポットに鉢上げします。よって移植に耐える草花であることが前提。主根がダイコンのように太く真っすぐ伸びるようなタイプは、根が切れると生育不良になるので、床まきには向きません。タネ袋には、移植できるかどうかの記載があるので確認しましょう。

まき床は、タネにとって発芽のためのベッドだと考えましょう。表土は敷布団、覆土は掛け布団です。ふかふかして適度に湿り気のある用土の中で、タネたちを気持ちよく発芽させてあげましょう。まき床の準備は、そのための環境づくりです。

まず、タネまき用土を用意します。用土は粒がそろっていて適度に軽く、水はけのよい清潔なものを使います。粒がまちまちだと、タネが土の粒の隙間に深くもぐって発芽できなくなることもあります。表土の上にタネをきれいにのせるには、きめが整った用土を平らに美しくならしておきます。まずはこれがタネまきのスタートラインです。

タネをまいたら、それぞれのタネにちょうどよい厚さの覆土をします。覆土は、だいたいタネと同じ厚さが適量ですが、中には発芽に光を必要とする好光性種子もあり、これらにはごく薄く覆土したり、光を通す性質のあるバーミキュライトを用いたりします。反対に光が発芽を抑制する嫌光性種子は、タネの厚さの2倍ほど覆土します。

まき床に水やりをするときに、水圧で土やタネが移動してしまうことがあります。それを避けるために、水を入れたトレイにまき床を置いて底面吸水させるか、ハンドスプレーで細かい霧水を与えます。小さなタネたちのことを思いやりながら、タネがなるべく快適に発芽できるようにサポートするのが私たちの役目です。それが上手な発芽につながります。

左の写真は底面吸水、右はハンドスプレーによる水やり

タネを均一にきれいにまきましょう

案外難しいのが、タネが重ならないように均一にまくこと。多くまき過ぎて、後で密集した小さな芽を間引くのも大変ですし、まいたタネを全部、大切に育てたいときも、丁寧さがキーになります。まき床の面積とタネの数からだいたいの当たりをつけて、できたら1粒ずつまきます。親指と人さし指でタネをつまんで、まき床から10~15cmくらいの高さから落とします。まき方は、いろいろ。均等にばらまく、渦巻き状にまく、条(すじ)状にまくなど、タネの大きさや数によって使い分けます。自分の手の感覚を頼りにして、丁寧に1粒ずつまくことが大切です。

タネをまいたら、表土のどこにタネがあるか確認します。土もタネも茶色っぽいので分かりにくいのですが、表土をじっと眺めていると、だんだん視界の中にタネの姿が見えてきます。溝に入り込んだタネや重なったタネをピンセットで拾い上げて、均一になるよう置き直します。均一に美しく芽が出て、後で鉢上げしやすくなります。

中には、指ではつまめないくらいの微細なタネもあります。微細種子を均一にまくのは難しいのですが、少量の砂と混ぜてばらまくと、均一にまけます。砂は覆土の役目もするので、あまり多く混ぜないように。この場合、覆土はしません。

丁寧に床まきをして、タネたちのベッドをきちんと整えたら、まき床を発芽適温が保てる場所に移動します。屋外に置くなら園芸用ラックなどを利用します。庭にじか置きにすると、虫などの被害にあいやすくなります。なるべく環境を一定にするため、雨風の当たらない軒下などが向いています。屋内に置く場合は、まき床の下に水受けのトレイを敷きます。

タネまきの季節といえば春と秋が一般的ですが、私は厳寒期の1月を除いて一年中、床まきをしています。小さな床なので、屋外が発芽適温にならないときは屋内にも置けて便利です。普段からタネまきに必要な道具を準備しておけば、まきたいときにいつでもまけます。

丁寧にタネをまくには、屋内のテーブルの上でまくのが一番。道具をあらかじめきちんと用意してからまきましょう

床まきの手順

〈準備するもの〉

タネまき用土をトレイに入れ、よくかき混ぜます。土に空気をしっかり含ませると、立枯病も防げます。トレイに入れるほどの量でないときは用土の袋の中でかき混ぜます。

キリで底面にたくさん穴を開けたまき床に、タネの大きさによって2~4cmの深さに用土を入れます。用土は多少沈み込むので、手や板で軽く押さえて詰めます。特に四隅は用土が沈み込みます。まき床の表面を板などで美しくならします。

まき床に緩い水圧で水を与えます。気温の高いときなどは、水に立枯病予防の殺菌剤を入れておいてもいいでしょう。底から茶色い水が出てくるようなら、用土にみじんが多い証拠。さらに水を与えて、みじんを流します。水やり後にもう一度、ごく優しく板などでまき床をならします。

タネを白い小皿に必要数だけ出し、 まき床に丁寧に均一にまきます。

タネの種類によって必要な厚さだけ覆土をします。通常はタネの厚さ程度です。タネをまくときと同じように、用土を少量つまんで表土に均一に落とします。発芽に光を必要とする好光性種子なら、小粒のバーミキュライトで覆土をします。

ハンドスプレーで霧水を与えて、表土を湿らせます。タネと土を密着させる役割もします。水を与えた後、板などで軽く押さえてもいいでしょう(鎮圧)。

イラスト:阿部真由美

ラベルに植物名とタネをまいた日付、粒数を油性ペンで書き、まき床の隅に差します。用土が浅いときはラベルが風で飛びやすいので、横向きに倒して差してもいいでしょう。まき床を管理する場所に置きます。この後、まき床の表土が乾かないように毎日、水やりをします。

次回は「ポットまきでタネまきをもっと手軽に」を取り上げる予定です。お楽しみに。

JADMA

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