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連載

【第7回】夏まきで楽しむパンジーとビオラ

文・写真

三橋理恵子

みつはし・りえこ

園芸研究家。一年草・多年草をタネから育てる研究をしている。著書に『三橋理恵子の基本からよーくわかるコンテナガーデン』(農文協)、『イラストで学ぶ、はじめてのガーデニング』(角川マガジンズ)などがある。


※タネのまきどきなどは神奈川県横浜市における栽培に基づいて記載しています。

【第7回】夏まきで楽しむパンジーとビオラ

2017/07/25

夏まきすれば、10月には1番花が見られます

もう長年、8月にパンジーとビオラのタネをまいています。7月も終わりのころ、タネと道具の準備を済ませると、またこの時期が来たかとわくわくします。初めて育てる品種や花色も多いので、発芽はどんなか、どんな花が咲くのか、未知数がいっぱい。かわいい顔をしたパンジーやビオラの花だからこそ、自分で育てたものは愛着もひとしおです。

色などの好みもあるでしょうが、パンジーなら中輪タイプは花付きがよく、茎がすっと立ち上がって咲くのでおすすめです。ビオラは花が小さいものの、花付きは抜群。花弁の模様や色もビオラの方が多彩です。植えるときの色の組み合わせなどを考えて、かわいい花顔を持った主役になるもの、クリアカラーのわき役になりそうなものなど、それぞれを選ぶとまとめやすくなります。

パンジーとビオラは花顔がさまざま。他の草花と合わせやすいのは、ブロッチ(花の中心に入る斑紋)やヒゲのないクリアカラーです

夏にタネをまいて順調に育てれば早く株が育つので、10月ごろに1番花が咲きます。秋まきすると寒くなるまでに苗が大きく育たないことが多いので、開花は春からとなります。冬も花を楽しめるかどうか。そこが夏まきするかしないかで決まります。ちなみに春咲きの品種では、夏まきしても冬は咲きにくいので、秋まきします。

〈夏まきのスケジュール〉

丁寧に1粒ずつ床まきしましょう

タネのまき方は普通の床まきと一緒です。品種によって発芽日数に違いがあるため、必ず1品種に一つのまき床を用意します。タネが少量なので、粒数を数えて1粒ずつ丁寧にまきます。間引きをせずに育てるなら、タネとタネの間隔を1.5〜2cmほど空けて均等にまきます。竹串やピンセットを使うとうまくまけます。まき床に立てるラベルに何粒まいたか書いておくと、どのくらい発芽したかすぐ分かります。

〈タネを均一にまく方法〉

用土は水はけのよいものを使います。用土の密度を少なくして空気の層を多めにすることで、地温を低くします。水はけがよくなることで徒長と立枯病も防げます。芽が出るまで、水やりは毎朝、ハンドスプレーでまき床の底から水が出るくらいまで与えます。

夏にタネをまくので、発芽適温に合わせられるか、うまく発芽するかが心配ですが、案外すんなり発芽します。もちろん、タネまきは屋内で行いますが、日差しの弱くなる夕方以降がおすすめです。クーラーの入った人が快適に過ごせる室温ならベストですが、多少暑さを感じるくらいでも大丈夫です。まき床を夜間だけ屋外に出すと、日中と夜間の気温差でより発芽を促せます。

パンジーとビオラは品種がたくさんあり、花色もさまざま。それぞれで発芽日数や芽の出方が違います。一斉に発芽するものが多いのですが、中にはぽつぽつと少しずつ発芽してくる品種もあります。よって発芽は1〜3週間と幅があります。ただし、1週間たっても発芽の兆候が見られないようなら、気温が高すぎる可能性があります。こんなときは、まき床をより涼しい場所に移動します。気温が高いと、双葉にタネの殻がついたまま発芽することがあります。うまく取り除けない場合は、間引きます。

夏まきは涼しい屋内で発芽させます。双葉が開いたころ、タイミングよく屋外の日当たりと風通しのよい場所に移動させるのがポイントです

徒長と立枯病に注意して苗を管理しましょう

芽が出て双葉がしっかり開いたら、屋外の日当たりにまき床を移動させます。芽が出てきたらまき床は乾き気味に管理します。水やりは表土が乾きかけてから。よく日の当たる場所では、浅いまき床は乾燥しやすいので水切れに注意します。発芽がまちまちのまき床は、いつ屋外に出したらいいか悩むところです。発芽がそろっていなくても、出た芽が徒長しないうちに外に出します。

日当たりのよい屋外で育てれば、徒長の心配はありませんが、水切れしないように注意が必要です。水やりは、芽がしっかり根付くまでは底面給水かハンドスプレーで芽が倒れないように与えます

この段階での徒長は、双葉のもとになる幼軸の部分が伸びてしまうこと。いったん伸びた幼軸は元に戻りません。幼軸は株の元になる付け根の部分。ここが伸びていると株がぐらぐらして安定しないので、よい苗に育ちません。徒長を防ぐことがよい苗作りの条件です。徒長を防ぐには苗を日によく当てて、水と肥料分を控えて育てます。夏まきでは気温が高いため、苗の成長が早く、少し軟弱な感じになります。秋にまくより丁寧に扱う必要があるのはそのためです。

〈正常な芽と徒長芽〉

イラスト:阿部真由美

夏まきした苗の徒長防止には、わい化剤「ビーナイン」という農薬が効きます。双葉が開いたところで、400倍に希釈した農薬を芽の先に1回だけ、ハンドスプレーで散布します。発芽がそろわないなどの理由で何度も同じ芽に農薬がかかってしまうと、生育不良になるので注意が必要です。

夏場の苗育てでもう一つネックになるのが立枯病。苗が菌に侵されて青いまま、ばたばたと倒れて枯れる病気です。用土に窒素分や有機質が多かったり、水分が多い状況で多発します。これは立枯病予防の農薬を、水やり代わりに与えることで防げます。農薬の規定量に合わせて希釈して、水やりと兼用で与えます。粉剤ならば、まくときにタネにまぶしてもよいでしょう。

タネをまいて1週間ほどで、立枯病予防の農薬を希釈して散布します。もし立枯病を発症してしまったら、薬剤を与えても回復しません。この場合は、他の芽に立枯病がうつらないように、早めに鉢上げが必要です。

徒長や立枯病は防ぎたいものの、苗の生育に肥料分は必須です。週に1回程度、液肥の1000倍希釈液を水やり代わりに与えます。この段階では、置き肥は肥料あたりする可能性があるので、液肥が安心です。

鉢上げした苗が根付けば一安心。ここからはすくすく育ちます

芽が育ってきて、葉同士が触れ合うところは間引きが必要です。ただし、1粒ずつ間隔を空けてまいていれば均等に芽が出るので、ほとんど間引きの必要はないはず。奇形の芽や生育の悪いものだけを間引きます。

本葉が3〜4枚ぐらいで、直径6cmのポリ鉢に鉢上げします。使う用土は、新しく清潔な培養土。肥料はこの段階では入れない方が安全です。まき床から苗を抜くときは、苗と苗の間隔がしっかり空いていれば、ピンセットで苗の周りからすくうようにすると簡単です。根は本来、多少切れてもいいのですが、夏の場合は、切れたところから雑菌などが入り枯れることがあります。なるべく根が切れないように丁寧に鉢上げします。

何種類かまいているときは、ポリ鉢ごとに全て品種名を書いたラベルを立てます。何種類かまいていると、品種名が分からなくなることがよくあるからです。ラベルも深く差して、なくならないように注意します。ラベルの代わりにビニールテープをポリ鉢に貼る方法もあります。これなら品種名が分からなくなることはありません。

この状態で週に1回程度、液肥を与えながら育てます。ポリ鉢の底から根が見えるようになったら、今度は直径9cmのポリ鉢に鉢替えをします。このときは、鉢の底半分の土に緩効性肥料を混ぜます。苗が育ち、花が咲くころには植え付けができます。

どこに植えて楽しむのか、庭の他の草花とのバランスも大切。パンジーとビオラがより映える植栽を目指したいものです。差し色として色を加えたい場所には、赤や紫など濃い色を。庭全体になじませたい場所へは、パステルカラーを。また少し暗めのところには、黄色や白など明るい色を。特に春は花でにぎやかな季節です。濃い色とパステル系の色をうまく使い分けましょう。

次回は「来春に花を楽しむ一年草を秋まきしましょう」を取り上げる予定です。お楽しみに。

JADMA

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