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【第14回】寒い冬も室内でタネまきしましょう

文・写真

三橋理恵子

みつはし・りえこ

園芸研究家。一年草・多年草をタネから育てる研究をしている。著書に『三橋理恵子の基本からよーくわかるコンテナガーデン』(農文協)、『イラストで学ぶ、はじめてのガーデニング』(角川マガジンズ)などがある。


※タネのまきどきなどは神奈川県横浜市における栽培に基づいて記載しています。

【第14回】寒い冬も室内でタネまきしましょう

2018/02/06

イラスト:阿部真由美

冬まきするのも、種類によって理由はさまざまです

冬も室内でタネまきをしましょう。冬は庭仕事も一段落。タネまきとじっくり向き合えます。室内なので、置き場所と相談しながら、発芽や苗育てに向く場所を探します。まき方は床まきが省スペースですが、私はポリ鉢をいくつか小さなトレーにのせて、ポットまきもよくやります。

冬にまく草花には、いくつかパターンがあります。一つは春になってからまく予定の春まき草花の早まき。早く咲かせたいものを早めにまきます。春先に園芸店に並ぶペチュニアなどの苗も冬まきしたもの。ダリアのように夏の高温期に花を休めるものは、早めにまいて苗育てする方がいいものもあります。トマトやレタス、バジルなどの野菜の苗も、3月ごろにまくと早めに苗が育ちます。ただし、春まき草花の中には発芽適温が25℃前後と高めのものもあります。これらは積極的に温度を保たないと発芽が難しいです。発芽適温20℃前後の草花の方が発芽しやすいです。

また、春まきのものの中には、初期の生育期間が長いなどで冬まきする方が、株が大きく育つものがあります。イソトマ(ローレンティア)、アスター、カナリアナス(とげなしツノナス)、オキシペタラム「ブルースター」、アサリナ、ルドベキアなどが挙げられます。これらは早めにまいても定植を急ぎません。

冬まきにおすすめの草花です(1)ルドベキア(2)イソトマ(3)アサリナ

二つ目は秋まき草花を遅れて冬にまくパターン。秋まきすると寒さで枯れてしまう寒冷地では、冬まきが向きます。またロベリアやフロックス、マトリカリア、アークトチス、ミムラスなど春の遅咲きのタイプの草花も、この時期にまきやすいタイプです。ただし、秋まき草花は冬の適度な低温で苗がよく育つため、春先に低温の状態が長く続かないと、苗は貧弱になります。温暖地では特に秋まきした苗のようには株張りはよくなりません。

もちろん大きく育たないことを逆手にとって、小さく低く咲かせられます。比較的草丈の伸びるオルレアは冬まきすると低く小さく咲きます。また四季咲きのキンギョソウやナデシコ、宿根ネメシアなども、この時期再びまきどきを迎えます。冬まきでは苗にボリュームが出ないので、種類によっては1ポットに2~3株植えにして株張りを補います。ただし、徒長させると苗が貧弱になってしまいます。

もう一つは耐寒性が比較的弱く、冬にある程度の保護が必要なものの、春に咲くタイプ。春になってからまくと、花の期間が短くなってしまう草花たちです。ナスタチューム(金蓮花)やフロックス、サンビタリア、ダールベルグデージーなどが代表ですが、わい性のタイプで、まいてから咲くまでの生育期間が比較的短いものが多いです。これらは低温管理できる温室などがなければ、冬のうちにまいて苗を育て、春から咲かせる方法がぴったりです。このほか、お住まいの地域によっては、耐寒性のある秋まき草花でも、苗が寒さに耐えられないようなタイプは、冬まきが向きます。

冬まきは秋まき草花を寒さから守るためや低く小さく育てるためにも行います(1)ダールベルグデージー(2)オルレア(3)フロックス

冬にまいて、育てる楽しみいっぱいのペチュニア

ペチュニアの開花株。冬まきすると春になってからまくより、ずっと早く咲き始めます

冬にもいろいろタネをまけるとはいえ、まくのは必要に応じてが原則です。冬にまいても標準的に2カ月くらいで苗が大きく育ち、定植期を迎えます。その時点で植える場所が必要です。花壇やコンテナが秋まきの草花でいっぱいなら、育てても適期に植えられず苗が老化してしまいます。必ずどこにいつごろ植えるのか、目的をしっかり決めてからまきましょう。

春花壇の中にも、プリムラのように早春咲きのものや、ハボタンなど早めに終わるタイプもあります。冬まきしたものをこれらと交代させて植えるスケジュールを立ててもいいでしょう。ナスタチュームやフロックスなど、わい性のものはコンテナにも向きます。

床まき後、ポットに鉢上げしたペチュニアの苗です

冬まきをぜひおすすめしたいのがペチュニアです。ペチュニアは花も大輪でカラフルなので、タネまき草花の中でも人気があります。日が長く温暖であれば、花が咲きます。まきどきが長いのもペチュニアならでは。春から秋にもまけますが、冬にまくと春先から開花します。私もその年の最初のタネまきは、たいていペチュニアです。

ペチュニアのタネは手でつまめないほど微細。出てくる芽も小さく頼りないですが、丈夫で生育は旺盛。発芽から2カ月ほどで成熟し、花を咲かせます。冬場は上へと伸びずに地際で葉を広げていくため、徒長の心配もありません。1株で大きく広がるので、コンテナに植えるくらいならそんなにたくさん苗は必要ないでしょう。適宜、間引いて少量をしっかり育苗しましょう。

ペチュニアのタネは微細でも、生育旺盛で2カ月ほどで花を咲かせます

私が毎年欠かさずタネをまくのが「クリーピア」。特に「クリーピア(R) マジェンタインプ」のローズ色は華やかな夏花壇によく映えます。白花も中心がクリーム色がかって、とても美しくおすすめ。クリーピングタイプ(はい性)なので、直径24~30cmのロウボウル(浅鉢)に2株植えて、背の高い台に置くと大きく茂り、たくさん花を咲かせます。葉も茎も硬く、軟弱さがなく、育てやすさも抜群です。

冬まきのポイントは発芽のほかにもいろいろあります

冬まきで発芽させたまき床です。双葉が展開しています

冬まきを成功させるには、もちろんいくつかポイントがあります。最初のハードルは発芽です。冬の低温期なので、発芽適温を保てる場所にまき床などを置く必要があります。温度が必要なので一般的には2月に入って、日差しが回復してからが向きますが、お住まいの地域や環境によっては、3月に入ってからの方がいいこともあります。もちろんその年の寒さの度合いにもよります。

ただ、いつも私たちが快適に過ごせる温度ならば、20℃前後の発芽適温のものは問題なく発芽します。もちろん居間など、普段から暖かくしている場所にまき床を置きます。発芽適温25℃前後のものは難易度が高く、やや温度を高めに設定する必要があります。ちなみに夜間は暖房を切っても、寒過ぎなければ問題ありません。屋外でも日中と夜間には温度差があります。

温度だけでなく、湿度も発芽を促します。特に太平洋側の地域では、冬、空気が乾燥します。まき床の周辺を加湿器で加湿すると、より発芽を促せます。温湿度計などで、温度と湿度をまき床の近くで測れると安心です。

まき床の保温はいろいろ工夫できます。日中はよく日の当たる窓辺に置くと、まき床は暖かく保てます。窓辺が夜間冷たい空気が入って冷え込むようなら、まき床を不織布やビニール袋などで覆うのも効果的。夜間だけ発泡スチロールの箱の中に入れて暖かな場所に移動してもいいでしょう。さらに暖かな空気は上昇しやすいので、まき床を床に直に置くよりは、棚の上など高い位置の方が温度も高いので、置き場所にも工夫してみてください。

(1)オキシペタラム「ブルースター」の発芽(2)そろそろ鉢上げの時期です

無事に発芽すれば、今度は徒長しないように、よく日の当たるやや温度の低めの場所に置いて育てます。私の場合はまき床を居間から、2階の日当たりのよい暖房のない部屋の窓辺へと移します。温度が低ければ徒長しにくいですが、双葉の下の茎の部分である幼軸の伸びには注意しましょう。ここで積極的に加温すると軟弱に育って失敗するので、低温でゆっくり育てます。

本葉が数枚育って苗がしっかりしたら、鉢上げをします。まだ早春のうちは、苗の管理は引き続き室内です。ポリ鉢はトレーなどに置きます。比較的耐寒性のある草花であっても、室内の暖かな場所で発芽させて育てたものは寒さに慣れていません。また、小さな苗はより耐寒性が劣ります。昼間の暖かなうちだけ窓を開けたり、外に出したりして、徐々に外の気温に順化させます。とはいえ、三寒四温で寒い日もあるので、油断せずに管理します。

すっかり外の環境に慣れるころには、春が来て暖かくなります。冬まきの苗育てはここまでくればひと安心。後は太陽の下で苗を育てます。適宜9cmポリ鉢に鉢替えもできます。苗がある程度育てば適期に定植します。

定植前まで育った苗。こんな感じまで育てばひと安心

次回は「苗をすくすく大きく育てましょう」を更新予定です。お楽しみに。

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