文・写真
三橋理恵子
みつはし・りえこ
園芸研究家。一年草・多年草をタネから育てる研究をしている。著書に『三橋理恵子の基本からよーくわかるコンテナガーデン』(農文協)、『イラストで学ぶ、はじめてのガーデニング』(角川マガジンズ)などがある。
※タネのまきどきなどは神奈川県横浜市における栽培に基づいて記載しています。
【第21回】コンテナや花壇に、育てた苗を定植しましょう
2018/09/04
コンテナへの定植では草丈・株張りに合った鉢を選んで
苗が育ってどう植えるかプランが決まれば、いよいよ定植です。でもまだ花壇には草花がたくさん咲いているかもしれません。そんな時期に定植しやすいのはコンテナ。コンテナなら早く花が終わって空きが出ることもあります。また、秋まきと春まきでは、使うコンテナが違うことも多いです。秋まきの草花はパンジーなどわい性のものも多く、小型から中型のコンテナが活躍します。一方春まきでは夏場水切れをさせないために、大型のコンテナがメイン。保管しているコンテナを出してきて定植できます。
新しいコンテナでなければ、用土を入れる前に水をかけてブラシでよく洗い、泥やコケを落として乾かしておきます。底の穴にはネットを敷きます。きちんと段取りして準備することで、その後も丁寧に作業する下地を作れます。
さらに前もって用土をコンテナに入れて準備しておけば、当日定植だけに専念できます。生ごみ堆肥を作っていれば、コンテナ用土としても使えます。土の質や草花、鉢の深さなどに合わせて、小粒赤玉土や市販の培養土を混ぜて、水はけよく配合します。有機質分が足りなければ堆肥も足します。鉢替えでこの生ごみ堆肥用土を使っていれば、用土の質は同じ。ストレスなく、草花の根の伸びもスムーズです。もちろん草花の種類や季節によって用土は調整しますが、自分の使いやすい基本の用土を持っていると扱いやすく、後の水やりも楽です。
コンテナへの定植では、草花の草姿や草丈と鉢の大きさとの相性をよく考えます。特に鉢の深さは重要です。春から秋は気候がよく、予想以上に草丈が伸びることが多いです。タネ袋に記載されている草丈は、おおかた草花の花が付く位置で設定されています。咲き進むうちにさらに草丈が伸びるため、コンテナの深さとのバランスがだんだん悪くなりがち。特に春まき草花では草丈が伸びることを予測して、わい性草花でなければなるべく深い大鉢を使います。夏場のコンテナは乾きやすいので、深鉢でより有機質分をたっぷりにして、保水力に富む用土にしておけば万全です。
根の制限されるコンテナでは、花壇より生育が進まないのが普通です。よって株間もやや狭くできます。ただし、春まきの草花では土環境が合っていると、思いの外、伸び過ぎることもあります。1種植えでも寄せ植えでも、植え過ぎない方が後々よくまとまります。
花壇へ植える前にはまず土づくりを
花壇では、植える前の土の準備が大切です。まずはなるべく深く掘って耕すことが大切。土の上下を入れ替えて天地返しすることで、土は黒々としてきます。ほとんどのタネまき草花は、水はけがよく有機質に富んだ土を好みます。花壇の土はだんだん有機質が無機化してぱさぱさしてきます。足りなくなった有機質分を足すことが大切です。有機質はバーク堆肥や牛ふん、自家製堆肥など。有機物を足して耕すと、土は団粒化し水はけもよくなります。すぐに植える場所でなければ、60~70cm以上掘って生ごみを埋めることもできます。堆肥を足した分、普通は土が盛り上がるので、その分の用土をあらかじめ取っておきます。
堆肥を入れることで、微量要素を含む肥料分も供給されますが、それだけでは肥料分は足りないので、主に窒素、リン酸、カリの三要素を元肥として土に混ぜます。このときは長く効く緩効性タイプの肥料を使います。肥料によって効く長さが違いますが、春まき、秋まきともに、長く効くものがおすすめです。
また、雨で土はだんだん酸性化してくるので、石灰資材で調整します。石灰資材には、消石灰、苦土石灰、炭酸カルシウム、有機石灰などがあります。苦土石灰なら、マグネシウムやカリウムも供給できます。粒状タイプのものが使いやすいです。有機石灰や炭酸カルシウム以外は、無機質の肥料分と一緒に施すとガスが発生することがあるので、一緒に与えず間をあけて与えます。
必要な資材を施すごとに、深くしっかり耕します。よく耕して混ぜ土に空気をたくさん含ませると、よりふかふかします。植えるまでに間があれば何度か耕して表土を入れ替えると太陽殺菌でき、また雑草の種子も死滅させられます。丁寧に土づくりをすれば、それだけ草花もよく育ちます。
よく耕すと土の容積が増すため、土は盛り上がります。土を手で押すと沈み込むようなら、軽く踏み固めて平らにならします。何度か雨が降れば、土はより落ち着きます。水はけがよいかどうかも、水を与えて確認します。この手順を経ていよいよ定植できます。
ただし、秋にしっかり土の準備をしていれば、翌春、春まきの草花を植えるときは、土はまだ黒々としていて肥料分も残り、堆肥や肥料の量は少なくていいことも多いです。伸びやすい春まきの草花は、あまり旺盛に育たない方がいいので、春の花壇作りは簡略化できます。とはいえ、1年に1回、秋にはしっかり土のチェックをして土づくりをしましょう。
花壇の土の準備の手順
1. 土の状態を確認します
2. 堆肥を入れる分の土を取り除きます。抜いた土は堆肥置き場で再生させます
3. なるべく深く耕し天地返しをして、土の上下を入れ替えます
4. バーク堆肥、牛ふんなど有機物を投入してよく耕します。深く掘れば、生ごみも投入できます
5. 石灰資材を投入してよく耕します。このあと肥料投入まで2週間くらい空けます
6. 緩効性肥料を投入してよく耕します
7. 植え付けまで土を寝かせます。ときどき耕して表土を入れ替えると太陽殺菌と雑草の種子を死滅させられます
8. 盛り上がった土を、押しても沈み込まない程度に押して土をならします。水はけと土の状態をチェックしたら、いよいよ植え付けできます
※石灰資材の種類によっては、堆肥や肥料と一緒に与えたり、すぐ植え付けても問題ないものもあります
定植の手順
花壇では酸度調整して緩効性肥料を入れ、耕して有機質たっぷりのふかふかの用土を準備します。コンテナでは。苗の根鉢の高さ+ウォータースペース分を残して鉢に用土を入れ、緩効性肥料を混ぜます。土が沈み込まない程度にある程度しっかり押して土の密度を高めておきます。
苗を植え場所に数日前に移動させて、その環境に慣らします。コンテナではコンテナを置く場所に。庭は構造物などの影響で場所によって、日当たりや風通しなどが変わるので、しっかり慣らします。
プランを確認しながら、実際に苗を配置してみます。実際の株間が適当かどうか、バランスを見て判断し、最終的に植える苗と位置を決めます。
根鉢を出して、下向きに伸びる根を作ってから苗を植え付けます。深植え、浅植えにならないように植え付けの高さを合わせます。コンテナの場合は植えてから、目的の場所に移動させます。
水分を与える意味もありますが、水を与えることで根鉢を土に落ち着かせます。苗が沈み込んだ場合は、土を足します。活着までは水枯れしないようにしますが、与え過ぎも根腐れを招きます。
植えて苗の根が活着して、芽を伸ばすようになれば定植は成功です。根づくと植えたときと比べて株がぴんと立ち、違いが分かります。失敗した場合は、苗がしおれたり、生育が止まったりします。茎葉も枯れるなど異常が出ます。このあと定植場所で苗はぐんぐん育ちます。
次回は「定植の後の苗を大きく育てましょう」を更新予定です。お楽しみに。