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【第1回】新芽や葉裏に小さな虫がたくさん付いている

望田明利

もちだ・あきとし

千葉大学園芸学部卒。住友化学園芸研究開発部長として、家庭園芸薬品や肥料の開発普及に従事。現在は園芸文化協会理事、家庭園芸グリーンアドバイザー認定講習会講師などとして活躍中。各種園芸雑誌等に病害虫関係の執筆多数。自らも自宅でさまざまな種類の草花を栽培している。

【第1回】新芽や葉裏に小さな虫がたくさん付いている

2020/12/15

今回から草花・花木編です。第1回はキクやパンジー、バラをはじめとした植物の新芽に、まとまって付く虫についてご紹介します。

【目次】
被害. 新芽や新葉がモザイク状になる、植物が萎縮する
 ●犯人:アブラムシ
  アブラムシの生態
  アブラムシの防除方法
  [ちょっと雑学1]ネズミ算とアブラムシ算
  [ちょっと雑学2]アブラムシと共生関係の虫と天敵
  [ちょっと雑学3]アブラムシのちょっと変わった生殖方法

被害. 新芽や新葉がモザイク状になる、植物が萎縮する

●犯人:アブラムシ

アブラムシは植物に群れて寄生し、汁を吸います。植物が枯れることはありませんが、まとまって付くので生育が著しく悪くなります。それよりも恐ろしいことは、アブラムシがウイルス病を媒介することです。ウイルス病に感染した植物の汁を吸って、次に健全な植物の汁を吸うときに感染させます。感染すると葉の色がモザイク状になる、植物が萎縮してしまうなどの症状が現れます。これを治す薬剤はありません。抜き取って焼却処分にします。

アブラムシの生態

4月ごろから発生し、5~6月ごろに繁殖します。1匹、2匹の寄生で気付くことは少なく、群生した状態で気付くことが多いです。1日で10匹程度の子どもを産むため、数日で数十匹に増え、何十匹何百匹が密集した状態になり目立つようになります。7~8月ごろの夏の暑い時期は減少し、9~10月ごろになると再び目立ちます。
また、アブラムシの中には特定の植物にだけ寄生して植物の汁を吸う種類もいます。サクラの葉に細長いコブ状の袋を作るサクラフシアブラムシや、ウメの葉を縮れさせてしまうスモモオマルアブラムシなどがその例です。

現在約700種類のアブラムシが知られています。特定の植物に寄生する種類や、多くの植物に寄生する種類がおり、ほとんどの植物に寄生します。1つの植物に対して何種類ものアブラムシが寄生することもあります。例えばバラには淡緑色のイバラヒゲナガアブラムシ、緑色のバラミドリアブラムシ、淡黄緑色や緑色のモモアカアブラムシ、黄色や暗緑色のワタアブラムシなど、10種類程度のアブラムシが寄生します。同じようにキクにも10種類程度のアブラムシが寄生します。アブラムシは黄緑色、淡緑色、緑色をした種類が多いですが、黄色や赤褐色、暗赤褐色など様々な色のアブラムシが存在します。新芽や新葉、葉裏などに2~4mm程度の小さな虫がまとまって付いていたらアブラムシだと思ってください。

アブラムシの防除方法

アブラムシは繁殖力が強い半面、薬剤に弱い虫なので、汎用性のある殺虫剤をかけむらがないようにていねいに散布してください。効果がない場合は植物の根や葉から吸収され植物体内を移動して、葉などから吸汁して食害する害虫を退治する「オルトラン(R)粒剤」や「オルトラン(R)液剤」、「ベニカ(R)水溶剤」などが便利です。

薬剤に弱いアブラムシですが、薬剤に強く抵抗性が付きやすい種類のアブラムシもいます。そのような場合は虫の気門(人間の口と鼻にあたる部分)をふさいで呼吸を阻害して退治する「アーリーセーフ(R)」などの薬剤が適しています。また、アブラムシにも好きな色と嫌いな色があります。好きな色は黄色なので、黄色の粘着紙をぶら下げておくと飛んできたはねがあるアブラムシを捕殺できます。逆に嫌いなのは“ピカピカ光るもの”です。そのため、シルバーマルチを利用すると風が吹くたびにピカピカ光るため、アブラムシは寄ってきません。光るテープなども同様です。

[ちょっと雑学1]ネズミ算とアブラムシ算

急激に数が増えることを「ネズミ算式に増える」といいます。雌雄半々のつがいのネズミが月1回12匹の子どもを産み、子どもや孫、ひ孫なども同じ条件で繁殖すると2カ月後には98匹、1年後には約277憶匹に増えます。こちらをアブラムシに置き換えた、アブラムシ算はどうでしょうか。最適な繁殖条件の場合、雌が1日10匹の雌の子どもを産み、10日で親になり同様に子どもを産むと2カ月後には約6000万匹に増えます。計算上ではアブラムシの圧倒的な勝利ですが、アブラムシは気温などが繁殖に適している時期に爆発的に繁殖しますが、その時期は天敵も増えてくるので実際はそれほどではありません。

[ちょっと雑学2]アブラムシと共生関係の虫と天敵

アリが植物を登っていく原因は、アブラムシなどの植物の汁を吸う虫が寄生している場合が多いです。アブラムシの甘い排泄物を嗜好品としてなめにきたアリは、代わりにテントウムシなどのアブラムシの天敵を退治します。つまりアリとアブラムシは共生関係にあるのです。アブラムシを食べる天敵は多く、代表的なものはテントウムシです。幼虫・成虫ともにアブラムシをよく食べます。

[ちょっと雑学3]アブラムシのちょっと変わった生殖方法

アブラムシは、ちょっと変わった生殖方法で増えます。4~10月ごろは雌が、雌だけで増える単為生殖で、自分と同じ遺伝子を持つクローンの雌の幼虫を産みます。秋になると雄を産むようになり、雄と雌が有性生殖することで産卵します。植物に産み付けられた卵は越冬し、春になるとまた雌だけが生まれます。寒い地域では成虫のままでは越冬できず卵の状態で、暖かい地域では成虫のままで越冬します。生息密度が高くなると、はねのあるアブラムシを産みます。

次回は「葉に斑点が出たり、変色したりする(害虫編)」です。お楽しみに。

注釈

防除薬剤は病害虫の効果だけで記載しております。使用の際は適用作物をご確認の上、ご使用ください。

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