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【第9回】虫が付いて葉が食べられている①

望田明利

もちだ・あきとし

千葉大学園芸学部卒。住友化学園芸研究開発部長として、家庭園芸薬品や肥料の開発普及に従事。現在は園芸文化協会理事、家庭園芸グリーンアドバイザー認定講習会講師などとして活躍中。各種園芸雑誌等に病害虫関係の執筆多数。自らも自宅でさまざまな種類の草花を栽培している。

【第9回】虫が付いて葉が食べられている①

2021/08/17

大切に育てていた草花の葉が、虫に食べられていることに気づくことがあります。食害されている葉の周辺をよく観察すると、加害している虫を簡単に見つけることができる場合と、探しても見つからない場合があります。今回は簡単に見つけられる場合の虫について解説します。

【目次】

被害. 葉が食べられている
 犯人その1:ケムシ、イモムシ
  ケムシ、イモムシの生態
  [ちょっと雑学] チャドクガの幼虫の毒毛や脱皮の残骸に注意!
  ケムシ、イモムシの防除方法
  [ちょっと雑学]草花類を食害してチョウになる幼虫は?

 ●犯人その2:ハバチ
  ハバチの生態
  ハバチの防除方法

被害. 葉が食べられている

●犯人その1:ケムシ、イモムシ

日本に約5000種程度いるといわれているチョウやガの幼虫です。毛の生えている幼虫をケムシ、毛の生えていない幼虫をイモムシと呼びます。また、アオムシといえばモンシロチョウの幼虫を思い浮かべる人が多いですが、青緑~緑色をしたイモムシの総称です。

ケムシ、イモムシの生態

メイガ類、エダシャク類、スズメガ類、キンウワバ類、ハマキムシ類など、多くの種類のケムシ、イモムシは人体には被害を及ぼしません。ヨモギエダシャクやキクキンウワバなどは、雑食性で多くの草花の葉を食害します。オオスカシバは主にクチナシの葉を食べます。メイガ類やハマキムシ類は葉を巻いて中で食害するなどその生態はさまざまで、種類によって発生回数や発生時期が異なります。

しかし、ケムシ、イモムシの中には、触れると発疹を引き起こすなど人体に被害を及ぼす種類がおり、ドクガと呼ばれています。成虫のガになっても毒毛を持っている種類もいますが、大多数は幼虫のときの被害です。樹木類に寄生して加害する種類が多く、草花類に寄生するものにはヒメシロモンドクガ、ドクガなどがいます。代表的なドクガは主にツバキやサザンカなどツバキ科の植物に寄生するチャドクガや、ハナズオウ、カイドウ、ツツジ、フヨウなどに寄生するイラガ類が挙げられます。

チャドクガはドクガの代表格です。年2回発生し、葉裏に卵を産み付けます。秋に産み付けられた卵は、翌年の5~6月ごろ幼虫が現れ、6~7月に産み付けられた卵は8~9月ごろに幼虫が現れます。チャドクガは老齢幼虫で体長2~3cm程度です。ふ化した幼虫は横一列に並んで葉を食害し、成長するにつれ、分散して加害します。

イラガ類には、ヒロヘリアオイラガなど数種類がおり、多くは7~8月ごろ、10月ごろに幼虫が現れます。他のケムシと異なり、背面に刺状の突起物がある種類が多いです。幼虫に触れると激しい痛みを感じるため、デンキムシ、オコゼなどとも呼ばれています。皮膚に水疱状の炎症を起こすこともありますが、チクチクした痛みだけで終わる場合がほとんどです。

[ちょっと雑学]チャドクガの幼虫の毒毛や脱皮の残骸に注意!

チャドクガの老齢幼虫1匹で長さ0.1mm程度の毒毛を50万本以上持っているといわれています。人間は首周りや目の周辺、上腕部など皮膚の柔らかい部分にこの毒毛が付着すると、赤い発疹ができてかゆくなります。また、脱皮した残骸でもかぶれます。幼虫が多数発生すると、寄生されたツバキ、サザンカなどのそばを通るだけで、風に運ばれた毒毛などで被害を受けることがあるので注意してください。

ケムシ、イモムシの防除方法

ケムシ、イモムシは、ふ化直後の若い幼虫による被害は少なく、被害のほとんどはさなぎになる前の老齢幼虫によるものです。そのため、先手必勝、チャドクガやイラガではふ化後一列に並んで群生している若齢幼虫のときに退治するようにします。また、毒を持った種類もいるため、素手で捕まえるのは避け、割り箸などで捕まえるようにしましょう。また、チャドクガは卵をまとめて葉裏に産みます。卵はだいだい色の塊になっているので、見つけ次第葉を取り除き、焼却します。防除薬剤では、「スミチオン(R)乳剤」や「ベニカ(R)S乳剤」などを丁寧に散布して退治します。

[ちょっと雑学]草花類を食害してチョウになる幼虫は?

果樹類ではミカンなどのかんきつ類の葉を食害するアゲハチョウ、野菜ではキャベツなどアブラナ科野菜を食害するモンシロチョウ、ニンジンやパセリを食害するキアゲハなどが挙げられますが、草花類を食害するチョウもいます。グロテスクな姿をしているツマグロヒョウモンはパンジーやビオラを、ルリタテハはユリやホトトギスを食害します。他のチョウにはシジミチョウ、セセリチョウなどがおり、樹木や雑草などを食害します。

●犯人その2:ハバチ

ハチの仲間には幼虫が植物の葉を食害する種類がおり、「ハバチ」と呼ばれています。葉を食害している幼虫の姿は一見するとイモムシのように見えますが、親になるとハチになります。ツツジ類のルリチュウレンジハバチ、アネモネのキイロハバチ、バラのアスカチュウレンジハバチなどの種類がいます。

ハバチの生態

ルリチュウレンジハバチの場合、土中で越冬し成虫は5月ごろ現れ、新葉の中に産卵し、10日前後で幼虫が現れて葉を食害します。年3回程度発生を繰り返し、5~9月ごろまで幼虫が見られます。葉の縁から食べ、被害が激しい場合は、葉脈だけを残して葉がほとんど食べられてしまうこともあります。

ハバチの防除方法

外見がイモムシ状に見えるため、ケムシ、イモムシ同様の薬剤で「スミチオン(R)乳剤」や「ベニカ(R)S乳剤」で退治できます。

次回は「虫が付いて葉が食べられている②」です。お楽しみに。

注釈

防除薬剤は病害虫の効果だけで記載しております。使用の際は適用作物をご確認の上、ご使用ください。

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