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【第11回】新芽が萎縮している、葉が小さい

望田明利

もちだ・あきとし

千葉大学園芸学部卒。住友化学園芸研究開発部長として、家庭園芸薬品や肥料の開発普及に従事。現在は園芸文化協会理事、家庭園芸グリーンアドバイザー認定講習会講師などとして活躍中。各種園芸雑誌等に病害虫関係の執筆多数。自らも自宅でさまざまな種類の草花を栽培している。

【第11回】新芽が萎縮している、葉が小さい

2021/10/19

順調に生育していると思っていた植物の新芽が萎縮して、新しい芽が伸びてこない、新葉がきれいに展開せず湾曲する、葉が小さい、蕾が少ないように感じるなど、新芽部分の症状について解説します。

【目次】
被害. 新芽が萎縮している、葉が小さい
 ●犯人その1:ホコリダニ
  ホコリダニの生態
  ホコリダニの防除方法
  [ちょっと雑学]植物を害するダニの種類
 ●犯人その2:ウイルス
  ウイルスの生態
  ウイルスの防除方法

被害. 新芽が萎縮している、葉が小さい

●犯人その1:ホコリダニ

ホコリダニには、チャ(茶)で見つかったチャノホコリダニ、シクラメンで見つかったシクラメンホコリダニなどがいます。他にもインパチエンス、ガーベラ、ケイトウ、サルビア、セントポーリア、ダリア、ベゴニアなど、多くの草花類に寄生して害を及ぼします。新芽、新葉、花芽などに寄生してさまざまな被害症状が現れます。主な症状は
新芽が成長点から芯止めしたように伸びない、奇形になる、葉が巻いたようになる、葉が小さくなるといった症状、葉裏が褐色になり、光沢が出る症状、蕾の減少。花弁の変形、萎縮、花色の脱色などの症状です。

シクラメンホコリダニによる芯止め症状(セントポーリア)(写真提供:住友化学園芸株式会社)

シクラメンホコリダニによる芯止め症状(セントポーリア)
(写真提供:住友化学園芸株式会社)

チャノホコリダニによる芯止め症状(ダリア)(写真提供:住友化学園芸株式会社)

チャノホコリダニによる芯止め症状(ダリア)
(写真提供:住友化学園芸株式会社)

チャノホコリダニによる芯止まりと葉の変形(インパチエンス)(写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集)

チャノホコリダニによる芯止まりと葉の変形(インパチエンス)
(写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集)

チャノホコリダニによる花穂と葉の萎縮(ケイトウ)(写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集)

チャノホコリダニによる花穂と葉の萎縮(ケイトウ)
(写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集)

チャノホコリダニによる葉の変形(サルビア)(写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集)

チャノホコリダニによる葉の変形(サルビア)
(写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集)

ホコリダニの生態

枯れた植物などに生息し、成虫の状態で越冬しますが、ハダニに比べて寒さに弱いため、越冬できる成虫は少ないです。春先、温度が上がり新芽が伸びると同時に活動を始めます。高温になるほど繁殖が盛んになり、夏では7日程度で卵から成虫になります。成虫の大きさは0.1~0.2mm程度で、肉眼では判断しにくいです。

ホコリダニの防除方法

寄生した苗や鉢花を持ち込まないことです。春先に苗を購入する際は寄生に気が付かないことが多いのですが、夏場の高温時を好む害虫のため、気温が高くなってから苗などを購入する場合は新芽の状態を確認しましょう。6~9月ごろに新芽部分に前記のような症状の有無をよく観察します。症状があるようなら購入は控えましょう。退治用の薬剤としては、ホコリダニの登録のある「アーリーセーフ(R)」、「モレスタン(R)水和剤」などを寄生された新芽付近に丁寧に散布し、1週間後に再度散布して確実に退治します。

[ちょっと雑学]植物を害するダニの種類

第2回に登場したハダニ、今回のホコリダニ以外にも草花類を加害するダニがいます。例えばユリやチューリップの球根に寄生し、地上部の生育不良や球根を腐敗させるネダニ。フシダニの仲間で、チューリップの葉や花弁をかすり状に色抜けさせるチューリップサビダニ。キクの葉に輪郭のはっきりしない黄色い病斑をつくるキクモンサビダニなど……。他に変わった種類として、昔は毛せん病と呼ばれていましたが、ブドウの葉表面にイボ状の突起物をつくり、葉裏面に白い毛が生えるブドウハモグリダニもいます。

●犯人その2:ウイルス

ウイルスによってもたらされる代表的な症状は、葉が濃緑色と淡緑色のモザイク状になるモザイク病ですが、新芽・新梢部分の萎縮、葉や株全体の小型化、葉に発病するえそ斑紋病、花弁の変色などさまざまな症状が現れます。クリスマスローズでは、モザイク状や萎縮以外に、他の植物にあまり表れない症状として、新葉の葉脈に沿って蕾や茎までも黒く変色するブラックデス(黒死病)があります。

モザイク病による株の萎縮(ポピー)(写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集)

ウイルスの生態

植物を害するウイルスは700種類程度が知られています。ウイルスは生きている細胞の中でしか生きられず、自力で植物体内に侵入することはできません。ウイルスを保菌したアブラムシやコナジラミなどの吸汁性害虫によって感染する方法と、ウイルスに感染した植物の樹液が付着することによって感染する方法が中心です。また、感染した植物の種子も保菌していますので採取して使用しないでください。

ウイルスの防除方法

以前は症状が軽微な弱毒ウイルスを植物に摂取させて強力なウイルスの感染を予防する薬剤があったのですが、現在(2021年7月末時点)は販売されていません。感染すると防ぐ方法がないため、根から抜き取って株ごと焼却処分にします。多くはアブラムシ、コナジラミなどの吸汁性害虫がウイルスに感染した植物に寄生し吸汁することによって保菌し、健全な植物に寄生して吸汁することによって感染させます。従ってこれらの害虫を退治することによって感染を防ぎます。樹液感染は吸汁性害虫による被害ほどはありませんが、高価なラン類では樹液伝染を防ぐためにハサミを1回使用するごとにアルコールランプで消毒して次の植物にハサミを入れます。

ウイルスの防除方法

次回は「生育中の植物が枯れる」です。お楽しみに。

注釈

防除薬剤は病害虫の効果だけで記載しております。使用の際は適用作物をご確認の上、ご使用ください。

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