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連載

【第12回】レタス

佐倉朗夫

さくら・あきお

1975年、東京教育大学農学部卒業。神奈川県農業総合研究所や民間企業で野菜栽培の経済性や環境保全型農業の研究、有機野菜の栽培技術向上に取り組む。現在、明治大学特任教授、黒川農場副農場長。同大学リバティアカデミー「アグリサイエンス」講座で市民を対象とした有機農業講座を担当。著書に『有機農業と野菜づくり』(筑波書房)、『佐倉教授「直伝」! 有機・無農薬栽培で安全安心な野菜づくり』(講談社)、『家庭菜園 やさしい有機栽培入門』(NHK出版)などがある。

【第12回】レタス

2016/12/06

レタスは種類が多い故に、サラダや焼き肉料理の敷き物・包み物として、またイタリア料理や中国料理にと利用も多種多様。ポピュラーなのは結球レタスですが、近年、栽培が容易で盛夏期や厳寒期の生産に向くリーフレタスが、消費者からも人気があります。葉の色が紅色、緑色の品種がありますが、紅色系統の品種に対して使われる「サニーレタス」は商品名です。初心者には、葉の彩りや形状など、品種選びも楽しいリーフレタスがおすすめです。

全国各地で、その土地の適期に栽培され、通年、市場に出回る結球レタス 写真:谷山真一郎

分類と生態

原産地:地中海沿岸、近東、中央アジア
科名:キク科アキノノゲシ属
連作障害:なし 
生育適温:18〜23℃

作型と栽培

種類や形状が多彩で、収穫方法もさまざま

レタスの原産地は地中海沿岸、近東、中央アジアなどといわれています。現在、目にするものは、ヨーロッパで発達したグループ(結球レタスやコスレタス、リーフレタス)と、中国などで発達し、古くに日本に渡来したグループ(カキチシャ、クキチシャ)があります。
種類は多彩で、チシャとも呼ばれます。日本でレタスといえば結球レタス、それも葉は光沢があり、縁はギザギザ、葉面にシワがあるクリスプヘッド型が一般的。一方、ヨーロッパの結球レタスの主流は、葉がのっぺりとして柔らかく、緩く結球するバターヘッド型。日本ではこのタイプのレタスをサラダナと呼び、結球前の若株で収穫したものが流通しています。その他にも、ハクサイのような長円形に立ち上がって緩く結球するコスレタス(タチチシャ)、全く結球しないリーフレタス、下葉から順次かき取った葉を利用するカキチシャ、その仲間の茎が太くなる種類で茎の皮をむいて利用するクキチシャもあります。

雨の少ない冷涼な気候を好み、高温は花芽の形成を促進させる

レタスは雨の少ない地域が原産地であるため、雨の多い日本では季節と適地を選ぶ必要があります。また、レタスは冷涼な気候を好み、生育適温は18~23℃で暑さを嫌うため、日本の夏は温度が高過ぎて障害が出やすくなります。
レタスの花成(かせい=花芽が形成されること)は一般的には高温・長日で進みますが、日長に対する反応は、低温下では鈍く、品種によっても差があるなど相対的である一方、高温は常に花芽の形成を促進します。
栽培に要する時間は、リーフレタスで50~60日、結球レタスで60~80日ですが、高温による抽苔(ちゅうだい=トウ立ち)を避けられるように栽培時期を選ぶようにします。
また、レタスは連作を嫌わないとされていますが、土壌病害の抑制という視点から前作にレタス類を栽培した場所は避けた方が良いでしょう。

レタスの作型例

各作型の特徴と栽培のポイント

[春まき栽培]
温暖地では一般的には3月にタネまきをして苗を作り、4月に定植、5~6月に収穫する。タネまきが4月に遅れた場合、収穫が7月の高温期になるので寒冷地向きの栽培になる。いずれにしてもタネまき期は低温期なので、苗作りにはハウスやトンネルなどの保温施設が必要。
収穫後期は、気温が高くなり病気が出やすくなるので、早めに収穫できるように黒のマルチフィルム栽培が適している。
移植をせずに直まきで育てると生育が早まるため、タネまきは3月下旬ごろまで遅らせることができる。

[夏まき栽培]
温暖地で作りやすいのは、夏にタネまきをして霜が降りる前に収穫する夏まき栽培で、8月にタネまきして苗を作り、9月に定植、10~11月に収穫する標準的な作型。
タネまき時期が早くなると、抽苔しやすくなる。6月にタネをまき、8~9月の収穫は最も抽苔しやすい作期で、栽培は寒地や高冷地に限定される。また、9月のタネまきでは収穫期が12月になるので、不織布などのべたがけやトンネルなどによる保温が必要。

栽培手順(暖地)

1.植え床の準備

土壌の酸度が心配な場合は植え付け(タネまき)の1カ月前に有機石灰を1平方メートル当たり60g施し、2週間前に堆肥を1平方メートル当たり2Lとボカシ肥料80g(春まき栽培を除く)を全面に散布し、土とよく混ぜておきます。

植え床幅70cm、通路幅50cmで畝の高さ20cmほどのベッド状にします。
春まきの移植栽培の場合は、黒のマルチフィルムを張ります。

2.タネまき

春まき栽培は、移植栽培より直まき栽培が簡単です。
苗作りをして移植栽培をする場合は、直径7.5cmか9cmのポリ鉢を使用します。タネをまいたポリ鉢は、春まきでは保温のためにトンネルやハウスの中に置きます。夏まきでは日中の強い日差しが避けられ、風通しが良くて雨が直接当たらない場所に置きます。
夏まき栽培の場合は、タネを冷やしてからまくとよいでしょう。タネを布で包み、半日くらい水に浸した後、軽く絞ってからそのまま冷蔵庫の野菜室で2~3日冷やします。発根したら冷蔵庫から出してポリ鉢にまきます。冷やすことで休眠が打破されます。

〈直まき(春まき栽培)〉

植え床の天面をできるだけ平らにして鎮圧した後、条間20cmで横切りにまき溝を作ります(横切り作条)。まき溝は厚さ1cmほどの角材か木の板を使い、深さ、幅ともに1cm程度の浅い溝にします。タネ同士が重ならないように均一にタネをまき、タネが少し見える程度に薄く覆土して強く鎮圧します。
タネまき後の水やりは、タネや覆土が流されないように丁寧に行います。水やりの後、発芽するまでの間は新聞紙などで覆い、雨などが直接当たらないようにします。

〈苗作り(移植栽培)〉

ポリ鉢の中央に空き缶の底などで深さ5mm程度の丸いくぼみを付け、くぼみに4、5粒のタネをまきます。覆土は直まきの場合と同様に薄くし、水やりはタネや覆土が流されないように注意して行います。ポリ鉢への水やりは、水を張ったプラ箱に並べて底面から吸水させる方法もあります。

3.間引き

〈直まき(春まき栽培)〉

直まきでは、葉が触れ合うか合わない程度に何度か間引きを繰り返し、本葉が5枚のころに株間を20~30cmにします。
間引いた株は間引き菜としておいしく食べられます。

〈苗作り(移植栽培)〉

ポリ鉢で育苗する場合は、本葉1枚頃に2本立ちに、本葉2枚のころに1本立ちにします。ポリ鉢で本葉4、5枚まで育ててから定植します。

4.植え付け

移植栽培では畝は横切りでなく、条間35cmの2条植えで、株間は30cmにします。春まき栽培の場合は、黒のマルチフィルムを張ります。

植え付け直前に根鉢にたっぷりと水を含ませてから浅植えし、植え付け後も十分に水やりをします。植え付けた苗の保護のため、植え付けから10~14日間だけ不織布をトンネル状に掛けておきます。

5. 追肥(夏まき栽培)

植え付けてから2週間後に1株当たり1握り(約30g)のボカシ肥料を、マルチフィルムを少し持ち上げて追肥します。同時に、株のぐらつきを防ぐために、手で株元に土を寄せておきます。

6.収穫

〈結球レタス〉

葉が内側に丸まってから、球の上部を軽く押してみて固さを感じるようになったら、結球に弾力があるうちに包丁で結球部分を切って収穫します。収穫が遅れると球が固く締まり過ぎて、内側の葉を傷めることがあります。

〈リーフレタス〉

草丈が20~25cmになったら、株元を包丁で切って収穫します。夏まき栽培では、株ごと収穫せずに外側の葉からかき取って、次々に収穫することもできます。

有機栽培のコツ

春まきのレタスは球の腐れに要注意!

春まきのレタスは、栽培後半に気温が高くなるので病気対策が必要です。主な病気は軟腐病や菌核病による球の腐れですが、いずれも病原菌は土壌中に数年以上生存して伝染源になります。低湿地などで排水不良の所では、土壌中の過湿を回避するために、畑の周囲に溝を掘ったり、高畝にしたりするなどして水はけを良くすることが重要です。
また、細菌である軟腐病菌は、地際部の傷口から侵入することが多いので、除草作業のときなどに、葉を傷つけたりしないように注意します。
菌核病はカビであり、胞子の飛散により空気伝染します。畝にマルチフィルムをすることで、胞子の飛散を抑えるとともに株元の湿度が下がり、発生の抑制に効果があります。

次回は「ミニトマト」を取り上げる予定です。お楽しみに

JADMA

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