制作・文・写真
青木純子
あおき・じゅんこ
園芸家・フォトグラファー。京都市在住。庭で育てた草花を使い、生花のアレンジや押し花、ドライフラワーを作るアフターガーデニングを提案。2015年から『ガーデンフラワーカレンダー』(主婦の友社)を発行。ホームページはhttp://www.j-aoki.gr.jp/
【第25回】野菜と花のポタジェ菜園
2016/01/07
夏の定番野菜、ミニトマトやゴーヤー、ズッキーニたち。ローメンテナンスな花や葉ものも加えて一緒に育てれば、野菜も花も葉ものも楽しめる夏のポタジェ菜園の完成です!
夏らしい、楽しい菜園をめざして!
いつもの野菜作りに遊び心をプラス
今では恒例になった、連載でおなじみの友人Hさん宅の夏野菜作り。いつもの野菜作りに、今回は少し遊び心を加えてみました。花やカラフルな葉ものを植えて夏色の菜園をめざしたり、ミニトマトのアーチ作りに挑戦したり。
色鮮やかな花や葉ものを添えると、夏の菜園が華やかになります。もちろん、手間いらずの夏の植物を選ぶのがポイント。「サンちゅらか」や、日なたでも半日陰でも育つコリウスなどを植えると、彩りも華やかで手入れも楽です。また、ミニトマトの苗をアーチの左右の足元に植えてアーチに沿って枝を誘引すると、立体的なミニトマトのアーチができあがります。そのうえ、スペースの有効利用にもオススメの仕立て方です。
今月は、見ても楽しくて、おいしい夏野菜が採れるポタジェ菜園の栽培日記をご紹介します。
5月18日 まずは苗の植えつけです!
今回選んだ野菜は下記の8種類。
・ズッキーニ
・ミニトマト「キャロルパッション」と「キャロルツリー」
・エンツァイ
・ゴーヤー
・金時草
・モロヘイヤ
・オクラ
特に今回は、定番野菜に加えて、栄養価が高く夏の疲れを取るという「ねばねば野菜」の金時草やモロヘイヤ、オクラなどを抜てき。そして、夏色の花壇を演出する植物に、ローメンテナンスな「サンちゅらか」やマリーゴールド、コリウス、ストロビランテスを植えました。
限られたスペースの菜園で多種類の野菜を上手に育てるには、どの野菜にもまんべんなく日が当たることがポイント。それには、それぞれの野菜の株の広がりや草丈を考えて、苗を配置するのが一番大切です。そして野菜の成長の邪魔をしない位置に、夏の花や葉ものを植えるのも大事。特に、横に大きく葉を広げるズッキー二は、他の野菜に迷惑をかけにくい花壇手前の位置がオススメです。
6月16日 ズッキーニがもう収穫できました!
約1カ月前に植えた野菜や花の苗たち。後方の白いアメリカアジサイ「アナベル」の花が満開の頃、それぞれの野菜たちが個性を発揮し始めました。なかでも、成長旺盛なズッキーニは、もう収穫時期を迎えてビックリ。左手前に植えたエンツァイやモロヘイヤも少しずつだけど収穫開始です。
ズッキーニの収穫が終わったら、整理してあいたスペースを掘り返し、細かい根を取り除きます。完熟堆肥や苦土石灰などをすき込み土壌改良したら、そこに、夏の花や葉ものを足して菜園をもっと彩る予定です。もちろん、ニンジンなどのタネまきもまだ間に合います。
家庭菜園では一度にたくさん収穫できないけれど、それでも採れた野菜でどんな料理を作ろうかと、思いを巡らせながら収穫するのが一番うれしいひとときです。
Hさん宅の菜園の夏の風物詩、ゴーヤーの豪華なグリーンカーテン。毎年、直径約20cm、高さ約30cmの鉢を6個、すのこ板の上に並べて作ります。鉢の色は菜園になじむ緑色。そして持ち運びも軽くて丈夫なプラスチック製です。これなら、水をたくさん欲しがるゴーヤーも、水の蒸散が素焼きの鉢より少なく、1日1回たっぷりの水やりで済むそう。
また、使わなくなった洗濯物干し支柱に、グリーンカーテン用の緑のネットを固定して、ゴーヤーのつるを這わせます。ゴーヤーの苗にも、長い支柱を添えてネットに絡みやすく工夫。そんなアイデアも、長年育てたゴーヤーから教わったとHさん。
また、ゴーヤーのグリーンカーテンも、緑や白の実がなる数種類のゴーヤーを選んだり、紫花が咲くスネイルフラワーなどのつる性の植物を絡ませたりすると、花も実も楽しめるすてきなグリーンカーテンに仕上がるそう。毎日、リビングから眺めるゴーヤーのカーテンは圧巻です。リビングの窓を覆う緑葉が夏の強い日ざしを遮り、部屋の中から見ているだけで心穏やかになるとか。
7月17日 野菜と一緒に植えたコリウスたちもグングン成長!
あっという間に豪華なゴーヤーのグリーンカーテンができあがり、カーテンのあちらこちらで黄色い雌花や雄花が咲いています。野菜と同時に植えたコリウスたちも大きく育ち、野菜の間に予想通り夏色を添えてくれています。
特に、モロヘイヤやエンツァイの勢いはすさまじく、食べる早さより成長の方が早く追いつかないほど! 毎日、うれしい悲鳴を上げながら、サラダに炒め物にといただきました。夏バテ予防にもバッチリの「ねばねば野菜」の代表格、モロヘイヤや金時草は、軽くゆでて絞り、刻んで納豆に入れたり酢の物に入れたり。いろんな料理に使える野菜が、欲しいときに欲しいだけ収穫できるのも、菜園ならではの魅力のひとつです。
8月6日 ミニトマト「キャロルパッション」のアーチの完成です!
夏本番、野菜も花も、葉ものも楽しめる菜園の完成です。アーチの左右の足元に植えたミニトマト「キャロルパッション」の枝を少しずつアーチに沿って誘引したおかげで、菜園で一番目を引くほど立派に仕上がり大満足。見ているだけでうれしくて、収穫するのがもったいないと思うほど! また、赤いミニトマトに合わせて選んだ、赤や黄のコリウスの葉ものたちと、もちろんミニトマトのアーチの相性も抜群。彩られた菜園がなんだかいきいきしているように感じられます。ゴーヤーのグリーンカーテンもすっかり密に仕上がり、収穫量も遮光効果も期待通り。おまけにおいしいゴーヤーもいただけて言うことありません。
限られたスペースに、野菜も花も葉ものもと欲張りな植栽だったけれど、Hさん宅の菜園は夏色に彩られ、見ているだけで楽しくなるポタジェ菜園が完成しました。
自分で作った採れたて野菜の味は格別です!
ミニトマト「キャロルパッション」や「キャロルツリー」、オクラ、ゴーヤーたちのうれしい収穫! 「キャロルパッション」は、冷やして食べるとフルーツのように甘く、夏のおやつに最高です! 菜園で収穫した野菜は、もちろん産地直送だから鮮度抜群。そのうえ、無農薬だから安心していただけます。旬の採れたて野菜をいただけるのはガーデナーだけの特権です。手塩にかけて育てた約3カ月、「毎朝アオムシと戦ったかいがあった」とHさん。虫食いはあるけれど、スーパーで売られている野菜と比べて、味も濃く野菜本来の旬の味が味わえます。
ちょっとした工夫をプラスして夏野菜を育てれば、いつもの野菜作りがもっと楽しくなります。それも長くガーデニングを楽しく続けるコツ。花や葉ものを植えた分、野菜の収穫量が少し減るけれど、夏の花や葉ものを眺めながらいただく採れたて野菜の味はまた格別です!
>> 次のページで収穫した野菜の簡単クッキングをご紹介します!
毎日採れた野菜であれこれ献立を考えるのも、ガーデニングのあとの楽しみ。暑い夏だからこそ、簡単でスピーディーにおいしい料理ができたら主婦は助かります。今回も収穫した野菜を使って、手早く作れて旬の味がしっかり味わえる料理を作ってみました。簡単な料理だから、夏休みの子どもたちと一緒に作ればいっそう食卓も賑わうはず!
切って炒めるだけ。彩り抜群の「ズッキーニとドライトマトのソテー」
材料:ズッキーニ、ドライトマト、ニンニク、塩、こしょう、オリーブオイル(各適宜)
【1】水洗いしたズッキーニを約5mmの厚さにスライスする。
【2】ドライトマトを細切りにする。
【3】フライパンに、多めのオリーブオイルと細かく切ったニンニクと2を入れて炒める。
【4】3にスライスしたズッキーニを入れてソテーし、塩とこしょうで味を調えて完成。
ニンニクとゴマ油で香ばしい簡単料理「エンツァイのニンニク炒め」
材料:エンツァイ、鶏ガラスープの顆粒、ニンニク、塩、こしょう、すりゴマ、ゴマ油(各適宜)
【1】水洗いしたエンツァイを食べやすい大きさに切る。
【2】フライパンにゴマ油と細かく切ったニンニクを入れ、香りが出るまで炒める。
【3】2にエンツァイを入れて炒め、鶏ガラスープの顆粒を適宜入れ、塩、こしょうで味を調える。
【4】お皿に盛ったら、すりゴマを少量のせて完成。
食欲減退の方へ! ご飯がいくらでも食べられる「ゴーヤーの佃煮」
材料:ゴーヤー(250g)、ちりめんじゃこ(20g)、しょう油(20cc)、砂糖(50g)、酢(20cc)、かつお節、ゴマ(各適宜)
【1】ゴーヤーを縦に切り、スプーンで中のタネとワタを取り除く。
【2】約2mmの厚さにスライスし、熱湯に入れてさっとゆで、水気をしっかり絞る。
【3】砂糖、しょう油、酢を合わせて沸騰させ、その中に2のゴーヤーとちりめんじゃこを入れ中火で煮る。
【4】汁気がなくなるまで煮たら火からおろし、かつお節とゴマを入れて混ぜたら完成。
超スピード料理!「金時草のキムチ和え」
材料:金時草、市販のキムチ(お好みでキムチの量を適宜調節して)
【1】金時草を水でしっかり洗う。
【2】たっぷりのお湯を沸かして塩をひとつまみ入れ、金時草を入れる。
【3】再び沸騰したら金時草を30秒ゆで、しばらく水にさらして軽く絞り、長さ3cmに切る。
【4】市販のキムチとさっと和えて完成。
次回は「春の松江イングリッシュガーデン」を取り上げる予定です。
お楽しみに。