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【第26回】春の松江イングリッシュガーデンを訪ねて

【第26回】春の松江イングリッシュガーデンを訪ねて

2016/02/02

植物が動き始めた本格的な英国風庭園、松江イングリッシュガーデンの春。新緑や球根植物が楽しめ、そのうえガーデニングのヒントも発見できたら訪ねずにはいられません。今月は、松江イングリッシュガーデンの春をご紹介!

ガーデニングのヒントが隠れている新緑が美しい春の庭園

次は春、と再び訪ねた松江イングリッシュガーデン

島根県の宍道湖畔にあるガーデンは、平成13年に造られたガーデンルーム方式の本格的な英国風庭園です。9つの整形式ガーデンとひとつのナチュラルエリアで庭園を構成。角を曲がるたびに演出の違うガーデンルームに導かれ、驚く仕掛けがいっぱいの魅力的なガーデンです。
初めて訪ねたのは夏。宿根草や樹木たちが生い茂る庭園を歩きながら、春は何の花が咲き、新緑の美しい木がどんなふうに枝葉を広げているのだろう、と想像しながら歩いていました。その時からどうしても再訪したかった春のガーデン。今月は、4月の松江イングリッシュガーデンをご紹介します。

エントランスでポットマンがお出迎え

ガーデナー手作りのテラコッタの人形、ポットマン。エントランスのシンボルです。足元を覆っているのはほふく性のコニファー。この他にも、エントランスに続く街路樹の足元をほふく性のローズマリーが覆っています。一見なにげない植栽だけど、これぞローメンテナンスの極み! 常緑だから、もちろん一年中緑。花壇の土留めにも、土を隠すグラウンドカバーとしても威力を発揮します。手入れはいたって簡単。地植えのコニファー類やハーブは自然降雨で十分。真夏、何日も雨が降らない場合のみ水やりが必要ですが、あとは飛び出した枝などを整理して形を整えるくらい。この常緑のほふく性多年草やコニファーをグラウンドカバーに使うローメンテナンスなテクニックは見逃せません。

ポットマンの後ろの花壇。八重の房咲き香りスイセン「チャフルネス」やパンジーたちがお出迎え(写真左)。街路樹の足元を覆うほふく性ローズマリーが見事です(写真右)

ナチュラルエリアの入り口で迎えてくれるデルフィニウム

花の少ないこの季節の見どころのひとつは新緑の美しさ。ナチュラルエリア入り口の大木、ネグンドカエデ「フラミンゴ」(ベンチ右)は新芽が美しい樹木です。「フラミンゴ」の名前の通り、新芽は薄ピンク色を帯び、春の優しさ、芽生えの喜びをストレートに伝えてくれます。ベンチ左の大鉢のバラ「パット オースチン」の新芽もオレンジ色。春だからこそ見られる美しい葉色です。
また、毎年、松江イングリッシュガーデンでは1000本ものデルフィニウムを植えるとか。道なりに奥に進むと、ナチュラルエリアはもちろん、サンクンガーデンやバラのテラスでもたくさんの青や紫、白のデルフィニウムに出合えます。

春のナチュラルエリアの主役は濃いピンクの西洋シャクナゲ

入り口から左に曲がって渡る木製の橋。その左側に広がる池のほとりにナチュラルエリアの春のシンボル、暑さに強いピンクの西洋シャクナゲ「アンナローズ」が見えます。足元では淡い緑葉を展開するクサソテツが群生し、新芽を広げるセキショウが金色に輝き、右奥のヤナギもまだ芽吹いたばかりで緑が浅く美しい。春の4月は、初夏や夏、秋に向けスタンバイ中の植物が多いから、ナチュラルエリアがすっきりとして爽やかな印象です。
夏はうっそうとしているけれど、4月に訪れると池のほとりのヒアシンソイデス「スパニッシュブルーベル」や、足元のスノーフレークやシャガなどを発見。植物が動き出したばかりだからこそわかる春の植物の存在です。宿根草や多年草の新芽が見分けられたら、これからガーデンがどんなふうに展開し彩られていくのか想像はどんどん広がります。もちろん、植物の植えられている場所や間隔、株の大きさや植栽のデザインなど、ガーデニングの参考にもバッチリです。

新緑の間から顔をのぞかせる西洋シャクナゲ「太陽」は迫力満点(写真左)。ガールマグノリア「アン」の薄紫の花や銅葉のベニバナトキワマンサクがアクセント。新芽に春の日ざしが当たり気持ちよさそう(写真右)

いつ訪ねても手入れの行き届いた整形式ガーデン

整形されたレイランドヒノキ「レイランディー」やクサツゲの植え込みはいつ訪れてもきれい。年に3~4回庭師さんが入って整形されるそう。この時期になると気温が高くなるから、冬用の芝「ペレニアルライグラス」の成長が旺盛。1週間に1度刈るメンテナンスの作業が大変とか。右は英国産のレンガと石を積み上げた柱に木製のルーバーをかけて作った、英国風パーゴラから枝垂れるシナフジ。開花期は例年4月下旬~5月中旬頃。パーゴラを覆い尽くす紫のシナフジの花が咲いたら、整形式ガーデンの本格的な花の季節の到来です。その次はスタンバイしている深紅のバラたちが5月中旬頃開花し、緑の多い整形式ガーデンが華やかになるらしい。

[1]花壇の足元を覆う、薄ピンクの可憐な花を咲かせるタイム「ロンギカリウス」
[2]整形式ガーデンに愛らしい花色を添えるチューリップ「アプリコットビューティ」
[3]パーゴラの柱に絡む白いクレマチス「アーマンディー」の花
[4]バラの足元を彩るヒューケラ「キャラメル」

整形式ガーデン後方のボーダー花壇。右の黄色い花はバラ「カナリー バード」。庭園で一番に咲く半つる性、一重の一季咲きのバラ。足元でイベリスやヒアシンソイデス「スパニッシュブルーベル」も開花

新緑のホワイトガーデンをただ通り過ぎるのはもったいない!

花の少ない季節にホワイトガーデンを訪れるメリットはたくさん。立ち止まって観察すると、1~2月、不順な山陰の天候の合間をぬって木立性のバラの剪定やつるバラを誘引した、ガーデナーのプロの技が間近に見られます。
また、植物の草丈が低いから、ガーデンもすっきり。どんな植物が、どこに、どの植物の隣に植えられているのかも一目瞭然です。また、ホワイトガーデンを構成する、それぞれの季節に白花が咲く植物の名前がわかれば、夏や秋のようすを思い描くこともできます。もちろん、ホワイトガーデンを作る時や、庭に新しい白花の花木や宿根草を取り入れる時の参考にもなります。
植物の新緑を観賞しつつ、初夏、夏、秋、冬と頭の中で白花が移り変わる姿を想像しながら歩くのは実に楽しい。おまけに、植栽やガーデニングのヒントが詰まっていたら、ただ通り過ぎるわけにはいきません。
ガーデンのシンボル、バラのアーチ。もう少ししたら「つるアイスバーグ」の花で白く覆われ、前後して、ハマナスやオオデマリ、ユキヤナギなどの白花が咲く。そんなようすを想像すると、ホワイトガーデンの初夏の絵の完成です!

たくさんの白いチューリップ「ホワイトリバースター」の花がいっせいに咲きそろい、ここがホワイトガーデンだと告げているよう。清楚ながら存在感は抜群です

花の少ない冬や早春、コンパクトな八角形温室を訪ねてみてはいかが? ブーゲンビレアやグズマニアなどの色とりどりの鮮やかな花が多数咲き誇っています。温室のシンボルツリーは、鹿児島から運ばれてきた常緑のクワ科の高木、アコウの大木。中央に配置され、まわりを散策できるようにデザインされています。ランやシダが着生したアコウの木は、枝からヒゲのような気根が垂れ下がり、幹は編み目のように絡み合い、その巨大な木は熱帯雨林を想像させる迫力です。足元の植物も見せる演出が施され見どころ満載。寒い季節は外のガーデンの作業が減るから、冬のガーデナーの仕事は温室の鉢物の管理や植え替えだとか。

[1]熱帯雨林に生息するグズマニア。あでやかな花が咲くと、とってもトロピカル
[2]高温多湿や半日陰を好むオオインコアナナス。美しい花苞は数カ月楽しめます
[3]観葉植物として赤花をよく見かけるアンスリウム。長期間、花苞が観賞できます
[4]1と同じグズマニア。学名はスペインの自然科学者グズマンの名にちなんで
[5]一年を通して日当たりのよい場所で育てると、花数も増えるブーゲンビレア
[6]高温多湿で明るい場所を好むネオレゲリア。水分は葉から吸収します

球根植物と緑葉が爽やかなサンクンガーデン

庭全体がすっきり見える春。いろいろな色が混在した華やかなバラの季節に比べ、サンクンガーデンの色合いは球根植物が中心です。少ない色が美しい新緑の中に固まって咲いていて爽やかな印象。
球根の植えつけは、少し遅めの11月下旬~12月上旬にかけて。ぎりぎりまで秋の花を見てほしいから、宿根草などの切り戻しを終えてから植えるとか。樹木の剪定は、秋に大きくなりすぎた枝を抜くやり方。枝先を切り詰めると硬い感じに仕上がるから、太い枝を1本切って間引くように取り除くそう。また、秋口と早春の3月、宿根草の植え替えや株分け、移動をし、新しく植えたところはバークなどでマルチング。かつて7年間、ヘッドガーデナーを務めたキース・ゴット氏の手法を引き継ぎ、植物のサイクルに合わせた手入れをしています。

[1]高鉢に紫や黒のビオラを、足元に黒いチューリップ「ポールシェラー」を植栽。足元の刈り込まれた植物は秋に満開だったポリゴナム
[2]コルジリネの足元に群生するスイセン「タヒチ」。密植した球根植物の力強さを感じます
[3]初夏には各種バラやハーブの花が咲き誇る、噴水エリアに通じる花壇。日当たりがよいので、オレンジ色のバラの新芽が映えます。スイセン「ピンクチャーム」などが開花

宍道湖に面した、いこいの広場でのんびり

目の前に広がる宍道湖を一望できる広々とした空間がいこいの広場。ここにはイギリスから開園当時わざわざ運んできたベンチがいたるところに設置されています。きっと、天気のよい日は、しばらく宍道湖をのんびり眺めたくなる方たちへの松江イングリッシュガーデンならではの演出。日当たりのよい花壇では濃いピンクのシバザクラが満開で、広い芝生では家族連れがお弁当を広げてピクニック。東側の建物の壁面には、イングリッシュガーデンでよく見かける、横に枝を誘引したリンゴのエスパリエ仕立ても見られます。宍道湖を臨むガゼボの花壇では、ムラサキハナナやデルフィニウム、ビオラなどが植えられ、入り口にも飾られていたポットマンが愛らしいアクセント。

ベンチ横に置かれた銅葉のコルジリネと赤いアネモネの鉢が目を引きます。ベンチの後ろには、ユーフォルビアやハーブなどが植えられ、もちろん他の季節も花や緑が楽しめます

初夏のキングサリのアーチ、その先に広がるバラのテラスを思い描いて

新緑の美しさや球根植物、クリスマスローズが楽しめる春の松江イングリッシュガーデン。花が少ないからとためらわないで! 草木が茂っていない春が、ガーデナーにとって植栽のデザインやガーデニングのヒントを発見する絶好のチャンスです。そして、初夏、キングサリやバラなどが次々と咲くようすを思い描いたら、きっとまたガーデンを訪ねたくなるはず。
5月にこの連載で、バラの季節の松江イングリッシュガーデンのご報告をします。またお楽しみに!

松江イングリッシュガーデンの初夏の見どころは、ホワイトガーデンや黄色い花穂が垂れ下がるように咲くキングサリが40本も植えられたアーチ、そしてその先のローズガーデンです

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松江イングリッシュガーデン
島根県松江市西浜佐陀町330番地1
TEL 0852-36-3030
http://www.matsue-englishgarden.jp

次回は「夏の草花で楽しむローメンテナンス・コンテナ」を取り上げる予定です。お楽しみに。

JADMA

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