制作・文・写真
青木純子
あおき・じゅんこ
園芸家・フォトグラファー。京都市在住。庭で育てた草花を使い、生花のアレンジや押し花、ドライフラワーを作るアフターガーデニングを提案。2015年から『ガーデンフラワーカレンダー』(主婦の友社)を発行。ホームページはhttp://www.j-aoki.gr.jp/
【第27回】夏の草花で楽しむローメンテナンス・コンテナ
2016/03/01
数年は楽しめる手間いらずの寄せ植えやハンギングバスケット。たまには一年草を加えて華やかに庭やベランダを彩るのもすてきです。今月は、一年草を取り入れたローメンテナンスな夏のコンテナもご紹介!
庭やベランダにつり鉢を飾って、空間を立体的に演出
ローメンテナンスな寄せ植えに一年草?
手間いらずの宿根草や多年草、花木で夏の寄せ植えやつり鉢を作れば、酷暑の夏でも植物たちは元気。ガーデナーも助かります。でも、たまにはそんなコンテナに、夏の華やかな一年草を加えてみませんか? 「一年草を加えると世話が大変」と思われがちだけど、手間いらずの丈夫な一年草を選び、単植にしたり、ローメンテナンスな植物と組み合わせたりすれば、思ったより手入れも楽で季節の衣替えも簡単。秋や春、花色の違う花期の長い一年草に一部植え替えるだけで、変化する寄せ植えがしばらく楽しめたらすてきです。
今月は、そんな一年草を使った寄せ植えやつり鉢、そしてもちろん夏が大好きな手間いらずの植物で作った寄せ植えなどを多数ご紹介!
一年草を使った手間いらずの夏の寄せ植え ~ナチュラル編
夏の一年草は、手前の黒紫色のペチュニアと薄ピンクのハイビスカス(一年草扱い)。残りはすべてローメンテナンスな宿根草と多年草で構成したナチュラルな印象の寄せ植えです。秋、ペチュニアやハイビスカスを、黒や白、薄ピンクのビオラなどに植え替えると、秋~春はイメージチェンジした寄せ植えが引き続き楽しめます。簡単な季節の衣替えだけで数年変化する寄せ植えが楽しめたら、それも手間いらず。
後方の背の高い葉色が個性的なユーパトリウムは、銅葉のカラーリーフとして重宝します。草丈が1m前後に成長するから、初夏に数度切り戻すと背丈が低く抑えられコンパクトに。その後、分枝して花数も増えます。秋には白い小花が多数咲き、個性的な葉色との上品なコントラストが美しい。手間いらずの秋の植栽候補No.1です。また、秋、落葉したら地際で剪定します。
ニューサイランやカレックス、葉脈が赤いルメックス サンギネウスなどは、葉がとってもユニークな常緑の多年草。彼らを寄せ植えの定番脇役に抜擢すれば、周年飾れて、寄せ植えの骨格作りに大活躍します。
この寄せ植えに、一年草の和・ペチュニア「ミステリー」と「メロンパン」を加えたら、洋風和風、どちらの庭にも似合うコンテナが完成。秋に和・ペチュニアを黒や紫のビオラなどに植え替えると超シックに仕上がるはず。また、この和・ペチュニアは他のペチュニアに比べて耐寒性があるとか。花後、軒下や屋内で管理して冬越しさせれば、そのまま翌年も楽しめるかもしれません。試す価値大の和・ペチュニアです。
一年草を使った手間いらずの夏の寄せ植え 〜造形編
明るい色合いのニューサイランを選べば、夏の華やかな一年草とお似合いです。ニチニチソウやセンニチコウは手間いらずの一年草。丈夫で初夏から秋まで5カ月も長く咲き続けます。
定番の多年草に選んだ後方のニューサイラン。寄せ植えや花壇のアクセントに欠かせない、ローメンテナンスな葉を観賞する植物です。色は黒や紫、赤、銅葉、斑入りと多彩。草丈も60cm~2mと品種によって違うから、草丈を確認してから寄せ植えに使います。今回は寄せ植え向きの草丈が低いコンパクトタイプを選出。耐寒性が弱いものもあるから、耐寒性をチェックすることも大切です。また、コンテナ植えだから、1日1回、たっぷり水をあげるのも上手に育てるコツ。
定番のニューサイラン、残りのスペースに手間いらずの夏の一年草、ニチニチソウやアンゲロニアなどを植栽。秋、パンジーなどに衣替えする時、ニューサイランを傷つけないように、夏の花や使った用土、細かい根などを取り除き、新しく園芸用土や完熟堆肥、緩効性肥料を入れて植え替えます。
ニューサイラン「アプリコットクィーン」は草丈が30~50cm。コンパクトタイプだから寄せ植えに最適です。植え替え時、株が横に増えていたら、スコップで切るように切り離して小ぶりの鉢に植え、しばらく単植で育てると簡単に増やすことができます。
手間いらずの夏のハンギングバスケット
ローメンテナンスなハンギングバスケットには、常緑で成長旺盛なつる性やほふく性の多年草がぴったり。垂れるように育つから、豪華なつり鉢が簡単に完成します。また、地植えだと広がりすぎるリシマキアやワイヤープランツも、つり鉢だから伸びすぎたら切るだけ。手入れもとっても簡単です。また、チョコレート色の葉色が個性的なリシマキア「ペルシャンチョコレート」は、初夏、星形の鮮やかな黄花を一面に咲かせるので魅力的。秋遅くに少し整理したら、翌年もまた楽しめます。
ランタナは生育旺盛でローメンテナンスな多年草です。病害虫の被害もほとんどなく、花は黄、紫、ピンクととってもカラフル。横に広がる性質を利用して、ランタナひと株を直径20cm、深さ25cmの大きめのつり鉢に植えつけ。徐々に垂れて、秋には豪華な単植のハンギングバスケットが完成します。
生育期に株元に緩効性肥料を適量施し、水切れしないように1日1回たっぷり水をあげるのが上手に育てるコツ。表土に完熟堆肥を敷きつめマルチングしておくと、乾燥しにくく、冬は防寒にもなりおすすめです。冬の間、南向きの日当たりのよい軒下に取り込むだけで、京都でもつり鉢仕立てで冬を越します。
冬〜春の間、中央に赤いビオラ、周りに斑入りのヘデラやチェッカーベリー、ハツユキカズラなどの多年草を植えた手間いらずのつり鉢。初夏にビオラを整理して、夏の一年草、カリブラコアに植え替えました。選んだカリブラコアは成長旺盛で愛くるしい「ピンクグレイス」。花色が薄ピンクからローズ色まで変化する、見応え抜群のおすすめのカリブラコアです。伸びすぎて剪定したら、生花のアレンジで楽しみましょう。水あげがよいカリブラコアだから、深さのある白い器にワサッと生けてテーブルに飾ると、次々と咲いてとっても豪華です。
ローメンテナンスな大鉢の寄せ植え
毎年初夏に花を咲かせる手間いらずの代表格、エキナセア。病害虫の被害もなく、年々大株に育つ強者です。存在感のある花は遠目でも目を引くほど。最近は、ピンクや白、オレンジ、緑、黄と花色も豊富で驚くほど個性豊かです。今回は、エキナセアだけを5種類、一辺40cmの大鉢に寄せ植えました。
オレンジ色の「ホットパパイア」が多数、右側の「ハーベストムーン」が数輪開花。でも、他のエキナセアたちの顔が見えません。多分、手前の「ホットパパイア」が大きく育ったせいで、後ろのエキナセアたちが日陰になってしまったから。「皆に日が当たるように鉢の向きをときどき変えていれば…」と反省しきり。手間いらずの植物とはいえ、もう少しお世話をしないといけませんでした。
数年はそのまま飾れる豪華な寄せ植えが完成。後方に西洋ニンジンボク、その手前にエキナセア3種、そして一番手前にアガスターシェを配置。どれも冬を越し、翌年の夏も花が楽しめるローメンテナンスな寄せ植えです。淡いブルーや黄、ピンクやオレンジの花色が、夏の庭にパステル調の優しい色合いを添えてくれます。
西洋ニンジンボクは成長旺盛だから、花が咲いたら収穫して生花のアレンジを作って飾ります。剪定してもまた枝を伸ばし開花。秋、エキナセアとアガスターシェは地際まで切り戻し、西洋ニンジンボクは早春に高さ約30cmに剪定します。
暑い夏だからこそ、威力を発揮するローメンテナンスな寄せ植え
夏が大好きで成長旺盛、病害虫に強く、乾燥がお好みなのが夏の手間いらずの植物。プラス、草丈が低ければ、豪雨や台風が来ても倒れにくく庭も荒れません。もちろん、支柱も必要なし。おまけに耐寒性も強ければ、そんなローメンテナンスな植物で作る単植や寄せ植え、ハンギングバスケットは、数年そのまま楽しめます。
でも、たまには花期の長い華やかな一年草を仲間に入れてあげるのも魅力的。丈夫でよく咲く一年草で、単植のつり鉢や鉢植えを作るとお手軽です。寄せ植えなら、骨格を手間いらずの植物で押さえて残りの小さなスペースを一年草用にすると、季節の衣替えもまだ楽。
面白いもので、手間いらずの植物ばかり育てていると、一年草が妙に懐かしくなってしまいます。長く続けたいガーデニング、手間いらずの植物を組み合わせながら、上手に一年草を使うとまた新鮮です。
次回は「庭の草花で作る簡単アレンジ」を取り上げる予定です。お楽しみに。