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 【第33回】春のローメンテナンス・コンテナ

【第33回】春のローメンテナンス・コンテナ

2016/09/06

来年の春はどんなふうに楽しもう?と、『家庭園芸』片手に想像を巡らせながら計画を練るのが夏の終わりの恒例行事。今月は、おすすめの春のローメンテナンスなコンテナを単植編、2種植え編、寄せ植え編といろいろご紹介します!

秋に仕込んだコンテナ、期待通りに展開したらうれしい!

ローメンテナンスな植物を使って楽しむ春のコンテナ

せっかく準備する春のコンテナ。翌春だけでなく、そのあとも数年そのままロングライフに楽しみたいですよね。おまけに、手間いらずの植物たちなら、手入れも楽でお得。今月は、そんなローメンテナンスな植物で作る春のコンテナをご紹介!
コンテナには、単植(1種植え)、2種植え、2種以上の寄せ植えと種類はさまざま。先を見越して、植える植物をローメンテナンスなものに厳選するのは、無理しない園芸には大切です。球根植物なら、植えっぱなしでどんどん増える丈夫な種類を選ぶのがポイント。一年草なら、こぼれダネで簡単に増えるものがおすすめです。また、花木なら、ツバキのように、日なたでも半日陰でも花を咲かせ、病害虫に強いものがぴったり。そんな条件をクリアしたお好みのローメンテナンスな植物なら、ガーデニングも無理しないで楽しめます。

春の草花を単植で楽しんで・その1 <単植編>

栄養系スイートアリッサムの白やピンク、紫の混色の苗を2株ずつ植えて、単植のコンテナを2つ作りました。白い栄養系スイートアリッサムの「スノープリンセス」のように、四季咲きで成長旺盛。高温多湿の夏はコンテナを半日陰に移動すると夏越しも大丈夫。冬は日当たりのよい軒下に移動させると、なんと冬中、花が絶えません。
管理のコツは水をあげすぎないこと。また、花後の早春と初夏に形を整えるように半分の草丈まで切り戻すと、また盛り上がるように次々に咲いてくれます。この数年、我が家の庭を春も秋も華やかに彩る、手間いらずの一押しの植物です。

上の写真は、2年目の栄養系スイートアリッサムの単植のコンテナを通路に飾った翌年の春の庭。早春に切り戻したけれど、5月には豪華に咲いて通路を華やかに彩ってくれました。奥の銅葉のヒューケラのコンテナは3年前のもの。園芸店やカタログで欲しい草花に出合ったら、まずは植物の原産地や性格などを調べ、ご自分の庭の環境に合うロングライフでお好みの手間いらずの植物を選びましょう。何年もすみついてくれて、そのうえローメンテナンスで重宝します。

春の草花を単植で楽しんで・その2 <単植編>

黄花クローバー「ラッキークローバー」を単植で楽しみました。横に広がる性質を利用して、高さのある楕円形の鉢の中央に1株だけ植えたら、5 月には生い茂り、株一面に黄色のホップのような小花を多数開花。その愛らしい姿は絵になります。つり鉢や花壇の手前、寄せ植えにおすすめ。夏は半日陰の風通しのよい所に移動させたけど、高温多湿が苦手だから京都では一年草として扱う方がよいかもしれません。

春の草花を単植で楽しんで・その3 <単植編>

洋風の庭にツバキは似合わない…と敬遠しないで! 実はツバキはとっても手間いらずで、洋風の庭にもよく似合います。日なたでも半日陰でも花を咲かせ、丈夫で病気にも強く、最近は花姿や花色もとっても多彩。今回は淡いクリーム色が魅力の八重咲きの「黄基」(きのもと)を白い鉢に植えて、2鉢ペアで並べて庭に飾りました。白い鉢植えなら洋風の庭にしっくりなじみ新鮮。また、白やピンクのバラ咲きのツバキも、ローメンテナンスで洋風の庭にピッタリです。

[A]成長旺盛で花つきがよい丈夫な姫シャガ。鉢植えだと、花壇と違って行儀わるく広がったりしないから手間いらず。愛らしい小花を毎年4月後半に咲かせます
[B]夏は木漏れ日、冬から春は日当たりがよい花壇がお好みのアネモネ「シルベストリス」。しばらく鉢植えで育て、株が充実してきたら花壇植えにする予定。春と秋に開花
[C]草丈約15cm、星形の5弁の花が魅力的なオーニソガラム「ウンベラータム」。別名「ベツレヘムの星」(クリスマスツリーの一番上にある星)。植えっぱなしで大丈夫
[D]密植すると華やかで丈夫なプシキニア「リバノティカ」。花が咲き進むと、花の重みで倒れやすくなるから、思い切って切りとって部屋に飾るとすてきです
[E]斑入りのウエストリンギアを単植で育てて。庭のいろいろな場所で緑が欲しい時に簡単に飾れ、しかも常緑だから一年中庭を彩りうれしいかぎり
[F]個性的な葉が周年観賞できるルメックス ブラッディドッグ(赤すじソレル)。高温多湿が苦手だから単植のコンテナで育て、夏は風通しのよい半日陰に移動します

春の球根植物を2度楽しんで・その1 <2種植え編>

2種類の植えっぱなしで増える丈夫な球根植物で鉢植えを作ると、一鉢で春が2度楽しめ、そのうえ数年花数を増やしながら春の庭を彩ってくれるからとってもお得。鉢いっぱいに広がったら、一回り大きな鉢に植え替えてあげれば、もっと長く楽しめます。初めに、ヒヤシンソイデス ヒスパニカ(薄ピンク)の花が咲き、あとから追うように黄色の原種系チューリップ「ホンキートンク」(薄黄)が咲く趣向。ピークがほぼそろう球根植物をペアで選ぶと豪華なコンテナが完成します。

春の球根植物を2度楽しんで・その2 <2種植え編>

黄色の小花がかわいい原種系チューリップ「バタリニー」とホメリアを一緒に植えつけて。どちらも、植えっぱなしで大丈夫な球根植物たち。「バタリニー」が先に開花し、あとからホメリアの黄色の花が咲きます。花期をずらして球根植物を選ぶと、一鉢で春が長く楽しめるのが利点。パステルカラーが愛らしいホメリアは南アフリカ原産の半耐寒性植物。一日花だけど、次々と長期間咲いてくれます。冬は鉢を日当たりのよい軒下に置くと、京都でも冬越しは大丈夫。

春の球根植物を2度楽しんで・その3 <2種植え編>

花期の違う、原種系チューリップ2種を鉢に植えつけました。最初はピンクと白がトレードマークの「ステラータ」が、次は薄黄色がかわいい「バタリニー」が開花。日当たりさえよければ、どちらも植えっぱなしでどんどん増えるほど丈夫だから、数年、そのまま春の庭を彩ってくれます。以前、宝塚の「英国風庭園 シーズンズ」で咲き乱れていた「バタリニー」。狭い我が家の花壇での再現は無理だから、鉢植えを飾ることにしました。この花を見るたびに、「シーズンズ」を思い出します。

春の球根植物を2度楽しんで・その4 <2種植え編>

白や薄ピンク、紫のネメシアの苗の間に、紫のヒヤシンソイデス「イングリッシュブルーベル」の球根を植えつけました。特に、ネメシアは花期の長いうれしい一年草。冬から春遅くまで咲き続けます。可憐なネメシアの花が次々に開花するのを眺めているうちに、5月には「イングリッシュブルーベル」の花が加わり豪華な春のバスケットが完成します。ネメシアはこぼれダネで増える丈夫な植物だから、数年そのまま楽しめる手間いらずのバスケットです。

せっかく咲いてくれた春の花たち。新しく我が家の庭に仲間入りしたツバキも加えて、春の花で作った生花のアレンジを部屋に飾りました。写真上は、水に浮かべた簡単アレンジ。花材は、ツバキやクリスマスローズ、ラナンキュラス、ヒヤシンスなど。写真下左も水に浮かべたツバキやクリスマスローズなど。写真右下は、原種系チューリップ「ヘレナ」が主役のアレンジです。「ヘレナ」の花色に合わせて器を選ぶととってもキュート! 花材は、サクラソウやビオラ、原種系チューリップ「ヘレナ」。

春の花が次々に楽しめる寄せ植え・その1 <寄せ植え編>

使用した草花:クリスマスローズ(2種)、ヒヤシンス「フェスティバル」、原種系チューリップ「ヘレナ」、栄養系スイートアリッサム(混色)、スイセン「ベラ エステラ」

早春から晩春まで長く楽しめる、パステルカラーの配色の大鉢の寄せ植えに挑戦。重いけれど、容量が大きいからいろいろな植物を寄せ植えられるのが大鉢の魅力です。選んだのは、手間いらずの春の球根植物やクリスマスローズなど。少量ずつ多数寄せ植えて大きなコンテナを構成しました。一番初めに開花するのは白やピンクの八重咲きのクリスマスローズ、次はヒヤシンス「フェスティバル」や原種系チューリップ「ヘレナ」。淡い黄花が愛らしいバタフライ咲きのスイセン「ベラ エステラ」が最後に仲間に加わる展開です。厳選した植えっぱなしでも増える丈夫な球根植物を少しずつ植えつけたから、来年はもっと花数も増えて豪華に彩るはず。
重い大鉢は場所をあらかじめ決めて設置し、そこで花材を植えると楽です。

[A]ヒヤシンス「フェスティバル」(右)と原種系チューリップ「ヘレナ」(左)
[B]薄ピンクの八重咲きのクリスマスローズ。一番に開花します
[C]栄養系スイートアリッサムの混色。初夏まで咲き続けるのが最大の魅力

春の花が次々に楽しめる寄せ植え・その2 <寄せ植え編>

使用した草花:ラナンキュラス(白)、栄養系スイートアリッサム(混色)、黄色クローバー「ラッキークローバー」、トウテイラン(白)

栄養系スイートアリッサムの混色の苗を左右1株ずつ植え、中央手前にクローバーを、奥にラナンキュラスを配置。春の初めは清楚なラナンキュラスとスイートアリッサムのコラボを楽しみ、ラナンキュラスが終わったらシルバーリーフが個性的で手間いらずの多年草、トウテイラン(白)に植え替えました。5月には、ほふく性のクローバーが横に広がり、ホップに似た黄花を株一面に次々と咲かせ見ごたえ抜群。そして秋遅くまで、栄養系スイートアリッサムとトウテイランが彩ります。翌年はクローバーの位置にビオラを植えてまた楽しむつもり。トウテイランは秋咲きの耐暑性、耐寒性のある丈夫な多年草。草丈約50cmに成長するから、7月に摘芯して草丈を低く抑えておくと、寄せ植えのバランスがよくなります。

春の花が次々に楽しめる寄せ植え・その3 <寄せ植え編>

使用した草花:キンセンカ「冬知らず」、ネメシア、ツバキ「香妃」、デージー「ラベンダードリーム」、ヒヤシンス「フェスティバル」、オーニソガラム「ヌータンス」、フリージア

花木、球根植物、一年草と、いろいろな春の花が楽しめる、欲張りだけど手間いらずの大鉢です。冬の間は、こぼれダネで簡単に増えるキンセンカ「冬知らず」やネメシアが少しずつ長く咲き、春一番は香りのよいツバキ「香妃」が開花。そのあと、かわいいピンクのデージー「ラベンダードリーム」やヒヤシンス「フェスティバル」、そして個性的なオーニソガラム「ヌータンス」などと続きます。春の最後を締めるのは白いフリージアの花。白だけを選んだつもりが、なんと赤いフリージアが一輪開花。きっと、白い球根の中に赤が紛れ込んでいたのでしょう。もちろん、このままにしておけば、数年そのまま春の花が楽しめます。

[A]薄ピンクの八重咲きの花が上品な、香りのよいツバキ「香妃」
[B]中央が黄、まわりがピンクの愛らしい配色が魅力のデージー「ラベンダードリーム」
[C]淡い配色の締め役は濃いピンクの一年草のネメシア。こぼれダネで増えます
[D]繊細な印象のヒヤシンス「フェスティバル」。多数花穂を上げて開花
[E]白と緑の花色がシックで個性的なオーニソガラム「ヌータンス」
[F]香りのよい花を咲かせるフリージア(白)。切り花にもおすすめ

「あれも育てたい」とか、「これはいただいたから」とどんどん増えていく鉢植え。皆さんもそんな経験ありませんか? 「無理しないで美しい庭作り」をめざして以来、実は、作る鉢の数だけ鉢を減らすように努力しています。
春のコンテナを用意する秋は、宿根草や多年草の植え替えにもピッタリな季節。鉢植えの植物を花壇に地植えにしたり、性格の似た鉢植え同士を大鉢にまとめたり、友人にプレゼントしたりと、鉢を減らします。基本的に鉢の数が少ないと、世話や水やりが減って楽。めんどうですが、そんなふうに意識しないとあっという間に増えるのが鉢植えです。また、鉢そのものも、先を見越して軽い素材のグラスファイバー製のものなどに順次入れ替えていくと、少々高価だけど、長もちして運ぶのも簡単。春のコンテナを作るとき、ぜひお試しください!

次回は、「ロンドン旅行記3 〜シークレットガーデンと街の花壇のようす」を取り上げる予定です。お楽しみに!

JADMA

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