制作・文・写真
青木純子
あおき・じゅんこ
園芸家・フォトグラファー。京都市在住。庭で育てた草花を使い、生花のアレンジや押し花、ドライフラワーを作るアフターガーデニングを提案。2015年から『ガーデンフラワーカレンダー』(主婦の友社)を発行。ホームページはhttp://www.j-aoki.gr.jp/
【第39回】北海道の自然に溶け込むイングリッシュガーデン、イコロの森を訪ねて
2017/03/07
うっそうとしたカラマツなどの森林を抜けると出合えるイングリッシュガーデン、イコロの森。アイヌ語で「イコロ」とは宝物を意味するとか。今月は、昨年の初夏に訪ねた、宝物がたくさん詰まったイコロの森の訪問記です。
美しい正統派イングリッシュガーデン、イコロの森は必見です!
もともとの木々を残し、周りの森の再生も手掛けるイコロの森
北海道苫小牧市にあるイコロの森。森林に囲まれた自然の息遣いが感じられる美しいイングリッシュガーデンです。イコロの森はローズガーデンやホワイトガーデンなど主に11個のガーデンで構成され、北海道のその地に合った植栽やガーデナーの工夫なども見どころ。イギリスで園芸を学んだガーデナーたちが設立当初から携わっているから、本場のイングリッシュガーデンをほうふつとさせる植栽やデザインは訪れる人々の期待を裏切りません。
美しい芝生が広がるエントランスガーデン
最初に出合ったのは、芝生が美しいガーデン。円柱形のすらっとした樹形が目を引く5本のヤマナラシ「エレクタ」がシンボルツリーです。このガーデンの右にナチュラルガーデンが、左奥にボーダーガーデンが、そして奥にローズガーデンやホワイトガーデンが展開します。上の写真、手前右の銅葉はメギ、左はイチイ。
ピンクや白、紫の優しい配色が魅力のレストランガーデン
レストランを訪れる方に無料で開放しているガーデン。紫のサルビアやネペタ、ピンクのアスチルベやバラなどが咲くかわいらしい配色のボーダー花壇に囲まれたガーデンです。もちろん花だけでなく、紫葉のアメリカテマリシモツケ「ディアボロ」やシラタマミズキなどの葉ものの美しさも見逃せません。
必見! 白花と緑葉のコラボが見事なホワイトガーデン
白い花穂を多数立ち上げた、大株の草丈約2mのペルシカリア ポリモルファを点在させ、斑入りや銀緑色の葉ものを巧みに配置してホワイトガーデンがデザインされています。また、白花や斑入り葉の配置が絶妙でとってもリズミカル。地味だけど、印象に強く残る美しいホワイトガーデンです。
入り口の芝生のガーデンとレストランガーデンとの境にある、法面施工用のじゃかごで覆われた石積みの塀。裏側のレストランサイドにはハニーサックルが、こちら側には強健種のつるバラ「ニュードーン」が植えられ、つる性植物が絡みやすくしてあります。手前左は銅葉のメギ、その右隣はオレガノ。
もともとイコロの森は、樽前山が噴火してできた火山れきに覆われた土地だとか。この花壇では、ここの土を使い、この地に合った植物、バーバスカムやゲラニウムなどを植え、無肥料、無灌水で育てています。また、全体に防草シートを敷き、十字に切り込みを入れて植物を植えたそう。超手間いらずの花壇の提案です!
延々と続く植栽が見応え抜群のボーダーガーデン
長さ約90m、奥行き約5mのボーダー花壇が左右に配置され、薄紫や薄ピンク、薄黄などの宿根草で構成された優しい印象のボーダーガーデンです。3年に一度株分けしたり、土壌改良や植え替えをしたりするそう。ギボウシなども大株に育ち、背景の森にガーデンがすっかり溶け込んでいます。
パステルカラーのバラが咲き乱れるローズガーデン
ここ苫小牧は、雪は少ないけれど冬はマイナス20~30度になり、寒風が強い土地柄だとか。無農薬で育てているから、耐寒性や耐病性に優れた修景バラを主に選んでいるのが、このローズガーデンのポイントです。強風からバラを守る生け垣で囲まれているから、香りもガーデンにとどまり最高! 美しい緑に囲まれた秘密のバラの園のよう。
他にも見逃せないガーデンがたくさん!
苫小牧にあるイコロの森は、旭川・富良野・十勝までを結ぶ人気の北海道ガーデン街道にはありません。でも、新千歳エリアにも、こんなにすてきな本格的イングリッシュガーデンがあります。うっそうとした緑に囲まれた、宝箱を開けたようなイコロの森は、周りの森を再生させながら素晴らしいイングリッシュガーデンを作り上げています。ぜひ足を延ばして訪ねてみてください! きっと心に残ります!
次回は「春を楽しむアフターガーデニング」を取り上げる予定です。お楽しみに!