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 【第47回】ロンドン旅行記6 〜ヒドコート・マナー・ガーデンを訪ねて

【第47回】ロンドン旅行記6 〜ヒドコート・マナー・ガーデンを訪ねて

2017/11/07

英国のコッズウォルズ地方、モートン・イン・マーシュ駅から車で20分のところにある、ヒドコート・マナー・ガーデン。今月は、20世紀を代表する伝統的な人気のこのイングリッシュガーデンをガーデナー目線からご紹介します!

20世紀を代表する伝統的なイングリッシュガーデン!

ガーデンルーム形式の庭園は驚きの連続!

ヒドコート・マナー・ガーデンは、イチイやシデの生け垣で仕切った25の異なる庭園で構成された伝統的なイングリッシュガーデンです。実は、アメリカ人、ローレンス・ジョンストン氏と彼の母親が40年もの歳月をかけて造ったそう。1948年からナショナル・トラストが管理しています。生け垣の外からは中の様子が分からず、足を踏み入れた途端、想像もしなかった美しい庭園が広がる、驚きにあふれたガーデンルーム形式の庭園です。今月は、広大な庭園の一部をガーデナー目線でご紹介します!

ヒドコートといえば円柱に、回廊に、鳥!

広大なヒドコート・マナー・ガーデンには、フランス式庭園風に左右対称に整えられた庭園が二つあります。そのうちの一つがこの「円柱のある庭」。高さ5mほどの円柱形に整形されたセイヨウイチイの木が、生け垣で仕切られた庭の前後左右に配置され、足を踏み入れた途端圧倒されるほどインパクトが強い美しい庭園です! 足元に咲く、季節の草花が秩序ある庭園に優しさを添えています。

角を曲がると急に現れる、この光景に誰もが驚き感動します! 芝生と生け垣が200mも真っすぐに続くロングウォークと名付けられた庭園です。人影が小さく感じられるのも、まさにこの庭園のスケールの大きさ! ただ、手入れするガーデナーの方は大変そう……。

ヒドコート・マナー・ガーデンといえば、ベイシング・プール・ガーデンのシンボル、鳥の形に整形したセイヨウイチイのトピアリーを思い浮かべる方も多いはず! 池の手前の日陰エリアには、大型のギボウシやホクシアなどが植えられ、日陰の植物の多様さも教えてくれる美しい庭園です。

紫花が多用されたメープル・ガーデン

レセプションを抜けるとすぐのメープル・ガーデン。サルビアやアリウムなどの紫花とラムズイヤーやシロタエギクなどのシルバーリーフを多用した、大人の配色が参考になる庭園です。歴史を感じさせるレイズドベッドの雰囲気とぴったり。ここヒドコート・マナー・ガーデンには、ジョンストン氏が何十年もかけて世界各地を巡り採取した珍しいコレクションもあるとか。期待が膨らみます!

[1]耐寒性は強いけれど、夏の蒸し暑さが苦手なカンパニュラ。中には、日本の高温多湿の夏を越すカンパニュラ「アルペンブルー」などもあり、半日陰で育てると夏越しが簡単です
[2]花期は6月、草丈は60~80cmの蕾が濃紫で美しいアリウム「アフラチュネンセ」。直径約10cmの手まり状の美しい花は目を引くから、植栽のアクセントにぴったり
[3]耐暑性も耐寒性も強いサルビア「カラドンナ」。手間いらずの丈夫な花だから、紫花のエリアでは重宝する植物の一つです

白花や銀葉が多用されたホワイト・ガーデン

初めに出合うエリアは、整形された斑入り葉の低い生け垣で4つに仕切られたノット・ガーデン(チューダー様式)です。その中央に白花や銀葉の植物を植栽。その先に、白花のボーダー花壇が続きます(上写真)。バラやアリウムなどの白花の植栽に、アクセントに紫花のジャーマンアイリスなどが多数植えられていました。

[1]ナデシコの仲間かなと想像するけれど、植物名が分かりません。ヒドコート・マナー・ガーデンでは初めて出合う植物が多いから、立ち止まってばかりでなかなか前に進みません……
[2]半日陰のエリアでよく見かける、日本でもおなじみのラミウム。斑入り葉や白や紫の可憐な花が、暗くなりがちなエリアを明るく演出してくれる手間いらずの植物です
[3]耐寒性が強いけれど、暑い夏が苦手の宿根カスミソウ。半日陰の花壇で、乾燥気味に育てると大丈夫。草丈は約1mにもなり、支柱が必要です

[4]コッズウォルズ地方で有名なはちみつ色の石造りの家が映えるイングリッシュガーデン。タイムスリップしたような風景に、ヒドコート・マナー・ガーデンの伝統や歴史を感じます

半日陰のエリアにあるホクシア・ガーデンは見応えあり!

半日陰のエリアに集められたさまざまな種類のホクシアは、貴婦人のイヤリングと呼ばれるほど優雅で個性的な花。草丈が1m以上のものもあり、絵になる花姿は心に残ります。冷涼な湿り気のある環境がお好みだから日本の高温多湿の夏は苦手。でも、「エンジェルス イヤリング」のように耐暑性の強いホクシアなら、日本の夏でも大丈夫!

赤花と銅葉のコンビネーションが見事なレッド・ボーダー!

庭に植えるには少し勇気がいる、赤花や銅葉の花木を効果的に多数配置した長さ約40mのレッド・ボーダー。周りを囲む緑の生け垣とのコントラストが絶妙です! 通り抜けることはできないけど、銅葉のスモークツリー「ロイヤルパープル」やとがった葉のコルジリネ、銅葉のカンナなどが個性を発揮する、記憶に残るボーダー・ガーデンです。

[1]芝生が長く続くロングウォークを抜けたら、西洋風あずまや(ガゼボ)で休憩!
[2]圧倒的な存在感の草丈約80cmの多肉植物「黒法師」。寒さが苦手だから、冬は温室や部屋の中に取り込むのが上手に育てるコツ

[3]レッド・ボーダーの入り口には、多数のホクシアやゼラニウム、「黒法師」などの鉢植えが飾られ、後方の植栽とベストマッチ!

[4]赤いバラを点在して配置し、植栽を華やかに引き締めます
[5]ちょうど初夏から夏への植え替え時に遭遇。日陰のエリアを重点的に植え替えていました

[6]日陰のエリアの一年草を植え替えていたガーデナー。長さ約40mのボーダー花壇だから、季節の植え替えも結構大変そう……

[7]ヨーロッパの涼しい気候がお好みのホクシアとレックス ベゴニアの寄せ植え
[8]耐寒性も耐暑性も強く、手間いらずのコルジリネ。植栽に変化を付けてくれます
[9]背景のスモークツリーの銅葉に映える、鉢植えのオレンジ色のゼラニウム

私と夫は、ロンドンのパディントン駅から列車で1時間半、モートン・イン・マーシュ駅まで行き、あらかじめ予約していたコッズウォルズの観光協会に登録しているタクシーを利用しました。今回は、ヒドコート・マナー・ガーデンだけでなく、歩いて10分のところにあるおすすめのキフツゲート・コート・ガーデンも訪問。もちろん、コッズウォルズ地方で有名なハチミツ色の石造りの家々が並ぶチッピング・カムデンにも寄り道! タクシーを使うと時間に縛られず、ガーデンをゆっくり散策できるのが利点です。おまけに、タクシーの運転手はその地域の新しい情報をたくさん持っているから、思わぬ情報も得られたりしてお得。ツアーもよいけれど、ゆっくりガーデン巡りをするなら観光協会に登録されたタクシーがおすすめです!

次回は「庭からの贈り物で作る簡単クリスマスアレンジ」を取り上げる予定です。お楽しみに!

JADMA

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