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連載

【第3回】フキ

【第3回】フキ

2016/03/22

写真集『野菜美』(新樹社刊)より

フキノトウや地下茎、新芽との一体感が作品の要

フキが菜園の中まで侵入してきた。手軽に旬の味を楽しむために、畑の片隅に自生させていたが、母屋までも乗っ取られそうな勢いなのだ。フキの葉柄は夏になると1mを超えて伸び、葉は雨傘のように大きくなって空を覆う。私はこのフキ原が好きで、野良仕事の合間に、這うようにもぐり込んでは寝転んで空を見上げている。そこは原生のジャングル、浮世と隔絶した秘密の空間なのである。

フキは雌雄別株で雌花と雄花がある。晩秋の頃には落ち葉の下ですでに蕾になっている。北海道では雪の下で越冬し、雪解けと共に花を咲かす。開花後、花茎を伸ばしタンポポのように綿毛を風に燻らす(くゆらす)のは雌株である。雄株の花茎はあまり伸びないで早くに枯れてしまう。これらの若い花茎をフキノトウと呼び、天ぷらやフキ味噌にして春を味わうのである。初夏の頃の若い葉柄は、サッと湯がいた薄味の煮びたしがほろ苦くておいしい。少しかたくなった葉柄は、濃い味つけの常備菜にして夕餉(ゆうげ)の一品にしている。

作品作りでは、フキの生命力を美しく引き出すためにも、形のよいフキノトウや地下茎、新芽も一緒に掘り起こすことが撮影の要であった。畑の端までホースを伸ばし、水流を調整しながら根茎の部分を丁寧に洗い流した。花を汚さないように泥はねにも注意が必要である。納得するまで泥との格闘が続いた。

次回は「アスパラガス」を取り上げる予定です。お楽しみに。

JADMA

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