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連載

【第5回】エンドウ

【第5回】エンドウ

2016/05/24

写真集『野菜美』(新樹社刊)より

大きな托葉や若い莢の実が透けたように見える

野菜は植物であることをつい忘れがちになる。ただ食べるだけだった野菜を植物としてとらえることが、著書『野菜美』の原点である。そのひとつが、野菜の原種を思わせる身近な野草の存在である。先祖種がアジアに自生するとされ、野菜としての起源が古いエンドウは特に興味深い。花は園芸種のような雰囲気も漂わせ、菜園を華やかに演出してくれる。

エンドウの旬は、ここ北海道では6月下旬から7月にかけてで、この頃は大雪山の裾野が新緑に覆われる季節である。エンドウは我が菜園には欠かせないもの。夕暮れ時の逆光線の中で浮き上がる、大きな托葉(たくよう)の葉脈と若い莢の中の実が透けたように見える瞬間が好きな時だ。なかでも、白花と赤花の揺れ動くさまは風さえも見えるようだ。
中の実が熟していない平坦な莢がみずみずしく、ヘタの部分を片手でつまみ、ポキポキと折りながら収穫する。この初物を薄味の出汁(だし)でさっと煮て溶き卵を落とし、温かいうちに食べる。噛みしめた時の青臭さとシャキシャキ感は、労働のご褒美である。ぷっくらとした薄緑色の莢からはじけ出るのがグリーンピース。この炊き込みご飯の、お釜のフタを開けた時に立ちのぼる湯気と香りは心の味である。

撮影する野菜は、撮影を前提に育てる場合と、一群の中の株をピックアップする2通りがある。巻きひげをほかの株に絡ませながら成長するエンドウの撮影は至難の業。写真映りがよい株をあらかじめ探し出し、釣り糸に這わせるように成長させる。美しい全体像の切り離しと、白い背景紙の設置、均一な光線が撮影に欠かせない。この時は心地よいそよ風も厳禁だ。

次回は「トマト」を取り上げる予定です。お楽しみに。

JADMA

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