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連載

【第6回】トマト

【第6回】トマト

2016/06/28

写真集『野菜美』(新樹社刊)より

もぎたてのトマトは太陽のご馳走である

我が菜園のトマトは露地栽培だ。太陽の申し子のような真っ赤に熟れたトマトを味わいたいがゆえである。だが、寒冷地かつ北向きの菜園は気温が低く、トマトの収穫期は8月に入ってからだ。ちょうどこの頃は、至る所で雑草が繁茂し、菜園の草刈りに追われる日々でもある。真夏の日ざしがジリジリ照りつける炎天下での労働は、体がフラフラ、喉はカラカラになる。
このような時、ひと息いれるために叢(くさむら)に座り込み、もぎたてのトマトにかぶりつくのである。ジュワーッと甘酸っぱい果汁が喉を潤し、体の奥へと吸い込まれていく。太陽のご馳走である。

『野菜美』の取材の年、生食用のトマトが全滅してしまった。雨が多く、露地栽培ゆえに病気が多発し、撮影の素材として耐えられなかったのである。代わって、この菜園で世代を重ねているイタリアントマトがコラージュを飾ることになった。枝もたわわに実ったカラフルな色合いが、画面を引き立ててくれたのだ。
このトマトは生食すると、あまりおいしくない。だが、コトコト煮込むことで、うまみが数段増すから不思議である。シチュー、パスタ、ソテーなどのソースやピューレに仕立て、冬ごもりに欠かせない保存食となる。

野菜を撮影する時の素材を選ぶ条件は、とにかくみずみずしいことにつきる。トマトは多雨による影響で、実割れやカビ、病気にもかかりやすい。撮影用に選んだ株にはテントをかけて雨を防いだ。菜園での撮影は、機材の設置場所などの制約が多いなか、自然な雰囲気を壊さぬよう心がけた。

次回は「トウモロコシ」を取り上げる予定です。お楽しみに。

JADMA

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