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【第12回】野沢菜

【第12回】野沢菜

2016/12/27

写真集『野菜美』(新樹社刊)より

野沢菜はカブの仲間だった

日本各地の自然風景を撮影していたころ、信州安曇野や小谷(おたり)の雪景色が好きで何度も取材を重ねた。その折、宿泊先でたびたびごちそうになった一品が野沢菜漬けである。独特の苦みが私好みで、帰路はいつも土産物屋で買い求めた。

野沢菜はカブの仲間だった。わが菜園で野沢菜を栽培するようになって初めて気付いたことだ。このカブは硬く、わが家では食材に利用しないが、信州では食べる習慣もあると聞く。いったいどのように食べるのだろう。わが家の野沢菜は、晩秋の霜を待って収穫し漬け込んでいる。葉が色づきだしたころに刈り取り、塩と昆布だけでたる漬けにする。厳冬期、屋外に置いたたるから取り出した凍り付いた野沢菜漬けの食感は、大いに食欲をそそる。
収穫時に残した小さな株は、そのまま越冬させる。4月下旬、厳しい冬を乗り越えた野沢菜は、残骸になった枯れ葉を割って赤い新芽を吹かせ、命を復活させる。菜園が春の緑と花の黄色に包まれるのは、それから約1カ月後である。この若菜やナバナのあえ物は、野菜の少ない季節のうれしい贈り物である。

野沢菜のコラージュは、カブの存在を示すためにも根を含めた全体像が必要だ。葉菜類はみずみずしさを損なわないためにも、相応の準備を施して撮影しなければならない。形が崩れないように透明な糸で葉柄を互いに結び付け、土も崩れないように広く掘り上げる。全体が写るように撮影台に載せ、後方から固定する。さらに、葉が垂れないように上部からも糸でつり下げ、根の周りの土や隙間に入り込んだゴミなどを流水とブラシを使って洗い流す。根や葉の位置を微調整し、葉がなえないうちに素早く撮影を終える。パソコン上で画像に写り込んだ糸を消し、全体像を背景から切り抜いて終了だ。コラージュを構成するための一枚の写真の物語である。

次回は「エゾネギ」を取り上げる予定です。お楽しみに。

JADMA

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