写真・文
奥田 實
おくだ・みのる
北海道東川町在住。2010年、樹木の生命美をとらえた写真集『生命樹』を出版する。また、自宅の菜園で育てる野菜を『生命樹』と同じ視点で撮影し、作品を構成した『野菜美』を2014年に出版。
【第17回】収穫したシシトウで「美味、時々、辛い」を実感
2017/05/23
清らかな花が結実し、深緑色から焦げ茶、赤へと変幻自在
春の遅い北国ではシシトウの露地栽培は結構、大変だ。中南米が発祥とされるトウガラシの仲間は寒さが苦手なようで、生育には気温と地温の上昇が必要である。定植後の寒さ対策は怠れない。
わが菜園では、6月のカッコウの鳴き声を何度も確認しながら苗を定植するが、6〜7月にかけては蝦夷梅雨(えぞつゆ)やオホーツク海高気圧の影響により肌寒い不安定な天候に悩まされる。苗の成長も阻害されることが多く、収穫は8月の半ばごろまでずれ込んでしまう。店頭に並ぶシシトウを横目に、初物を味わえる日までひたすら我慢の日が続く。
収穫期には、朝に夕に、柔らかく成長した採れたてのシシトウを中華鍋に放り込む。転がすように焦げるほど強火で焼き上げ、ひとつまみの塩を振りかけて冷めないうちにほおばっている。手間ひまかけない食べ方だが、「美味、時々、辛い」が素直な感想。この辛みは栽培中の何らかのストレスが原因との説があり、いじけるように育った硬い実は特に辛く、本能優性の先祖返りに思えてならない。
コラージュは花が美しいとか、果実がおいしそうなどの被写体の魅力によって構成が大きく変わる。題材もさまざまだ。画面構成は縦か横か、組み入れる素材の色や形、面体か線形かなどによっても配置は微妙に相関する。黒っぽいタネ一つが主役の存在を奪いかねないのである。
コラージュを完成させる最大の面白さは、植物という題材を一枚の画面に完結させる過程の試行錯誤にある。シシトウは白い清らかな花が結実し、鈴なりの実が深い緑色から、やがて焦げ茶、赤へと変幻するさまが面白い。植物の不思議を皆さんと共有できることが何よりだ。
次回は「はち切れんばかりに膨らんだ鈴なりの莢が魅力のダイズ」を取り上げる予定です。お楽しみに。