写真・文
奥田 實
おくだ・みのる
北海道東川町在住。2010年、樹木の生命美をとらえた写真集『生命樹』を出版する。また、自宅の菜園で育てる野菜を『生命樹』と同じ視点で撮影し、作品を構成した『野菜美』を2014年に出版。
【第18回】はち切れんばかりに膨らんだ莢が魅力のダイズ
2017/06/27
原種とされる野生種のツルマメを想像させる小さな花
6月末の晴れた日は、淡く赤みを帯びたノイバラの花の香りに酔いしれる、まさに花日和。菜園のダイズはやっと本葉を伸ばし始めたばかりだ。
このダイズを栽培する大きな目的は、みそ造りのためである。三家族が一年間に使用する30kg近いみそを二斗樽(にとだる)に仕込んでいる。みそ造りは厳冬期の1月に行うのが長年の恒例で、この季節は雑菌などカビの繁殖が少なく、緩やかに発酵が進む寒仕込みができる。大量のマメを軟らかく煮込むためにも、まきストーブの熱を有効活用できる冬は都合がよいのである。何にも増して、家族総出の作業が楽しいのはいうまでもない。
ダイズを栽培するもう一つの楽しみが、晩酌に欠かせないエダマメをたらふく味わえること。はち切れんばかりに膨らんだ鈴なりの莢の食べどきを確かめ、ポケットに詰め込む瞬間が一日の疲れを忘れさせる。中でも、硬めに湯がいた黒ダイズのエダマメの香ばしさは私好みである。残念なことは、北国の遅く短い夏が影響し、わが菜園のエダマメの初収穫が8月末までずれ込むのである。真夏にふさわしいビールの友とはならないのである。
前回、被写体の魅力によって構成が大きく変わることをお話しした。今回は、鈴なりの見事なエダマメが主役である。原種とされる野生種のツルマメを想像させる小さな花が結実し、未熟な果実が成長してタネになるまでの一年をイメージした。紅葉や枯れた色合いの果実にも画面を引き立てる重要な役割がある。また、根粒菌が付着した根の様子も面白く、これらを互いに関連付けながら構成した。
次回は「ミョウガはわが家の食を担う重要な食材」を取り上げる予定です。お楽しみに。