写真・文
奥田 實
おくだ・みのる
北海道東川町在住。2010年、樹木の生命美をとらえた写真集『生命樹』を出版する。また、自宅の菜園で育てる野菜を『生命樹』と同じ視点で撮影し、作品を構成した『野菜美』を2014年に出版。
【第22回】ゴボウの花咲く姿はまるでアザミの親分のようだ
2017/10/24
野生種のような力強い根に魅了された
まるで野に咲くアザミの親分のようだ。巨大に成長したゴボウが花を咲かせた姿を初めて目の当たりにしたときの印象である。
ゴボウの栽培は結構大変だ。毎春、もみ殻を混ぜながら菜園の一画を1m近くも掘り起こし、タネをまいていたからである。秋に真っすぐな根を簡単に引き抜くためだが、この作業は年を追うごとにおっくうになり、いつの間にか放棄してしまった。以来、ゴボウは野生種のように自らタネを落とし、世代交代するようになった。
越年草であるゴボウは冬前に地上部分が一度枯れ、翌春、残った主根から葉を芽吹かせる。このタイミングで掘り起こし、おいしいゴボウを収穫している。残った個体は成長を続け、何本もの枝を互生しながら茎を伸ばし、草丈は2mを超えるほどに成長する。枝先にはイガグリのような蕾を幾つも膨らませ、夏に赤紫色の花を咲かす。この花咲く姿が巨大化したアザミを連想させるのである。
ゴボウはユーラシア大陸が原産地とされている。最近、東欧の農家が原野に自生するゴボウを掘り起こし、お茶に利用する映像を見る機会があった。そこでは、ゴボウは栽培するものではなく野生種であり、根は図太く曲がりくねり、わが菜園で目にしているものと同じだった。
今月のテーマは八百屋の店先で見慣れたゴボウにはない、あっという驚きである。ゴボウの撮影は、野草を探すときのようなわくわくした緊張感があり、デスクワークは被写体任せの面白さを堪能させてくれた。撮影に選んだ個体は不耕起(ふこうき)の土壌では栽培種のように根を真っすぐに伸ばすことができず、想像を超えた姿で現れたのである。地上部の巨大さもさることながら、野生種のような力強い根に魅了された。掘り起こしながらコラージュのイメージがどんどん出来上がっていった。
次回は「ハナマメは1日6cmのスピードで空を駆け上がる」を取り上げる予定です。お楽しみに。