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【第24回・最終回】雪の下の黒土の中から掘り起こす越冬ニンジン

【第24回・最終回】雪の下の黒土の中から掘り起こす越冬ニンジン

2017/12/26

写真集『野菜美』(新樹社刊)より

土の中で越年したニンジンは、夏に白い花を咲かせる

畑に立てた目印に向かって雪の中をラッセル。1m以上も降り積もった圧雪をかき分け、畝に沿った黒土の中から、秋に枯れたニンジン葉を探し出して根を掘り起こす。越冬ニンジンの収穫である。生野菜の少ない厳冬期から春先にかけての欠かせない作業で、掘りたてのニンジンの香りと何カ月ぶりかの土の感触は感慨深いものだ。

雪の下に保存した作物はマイナス20℃を下回る気温でも凍ることはなく、収穫時の鮮度を春先まで保てるのである。低温貯蔵することで作物の糖分も増すといわれている。しばらくは、わが家の食卓は新鮮な香りを味わえる生食と、シチューやカレーなど、厚切りにしたニンジン尽くしの日々が続く。

土の中で越年したニンジンは夏にかけて太くて立派な花茎を伸ばし、分岐した枝先には雨傘のような形の花序を付け、小さな白い花を数多く咲かせる。越年したニンジンを食材に利用できる期間はとう立ちする前までである。この時期の根は木質化し、硬くて食材には適さなくなるからである。

「北海道、我が菜園で出会った『野菜の命の物語』」は、今月のニンジンをもって、一応の区切りとなりました。普段、目にする機会の少ない野菜の野生と生命の形、その撮影記やコラージュするまでの過程をお話ししてきました。ボタニカル フォトエッセイは『北海道の森で出会った 樹木の命の物語』のトドマツに始まり、4年の長きにわたって連載させていただきました。この間、植物の生命の一端を読者の皆さまと共有できたことを喜びに思っています。

現在、敷地内の野草の撮影に奔走しています。新たな機会があれば、野草の写真を通して皆さまと場を同じくすることを願い、連載終了のごあいさつにさせていただきます。長い間、ありがとうございました。

JADMA

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