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国民的果物 油桃

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後もアドバイザーとして勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

国民的果物 油桃

2014/07/18

モモは、バラ科モモ属の落葉低木で、学名をAmygdalus persicaという。種小名は“ペルシャ産”の意味だが、ペルシャ由来ではなく、中国黄河上流の高原に野生種を産する東アジアの果物です。

中国においてモモは国民的果物となっていて、いつでもどこでも手に入れることができる。栽培の歴史は古く、不老長寿の食べ物とか邪気を払うとかさまざまな言い伝えがあり、それは日本にも伝わって、桃の節句などの文化として残っている。

日本ではおしりの丸いモモが普通で、そういうモモしか知らない私たちは、おとぎ話に出てくるおしりの尖ったモモの挿し絵に、何か違和感を持っていなかっただろうか? しかし、ご安心あれ。おしりの尖ったモモは故郷、中国にちゃんと存在している。中国南部の先が尖ったモモは、果肉が硬いうちから甘く、皮付きで食べても美味しい。

広い中国には特徴のある地方品種があり、中でも「蟠桃」は形がユニークで、上からペチャンコにつぶしたような形をしている。品種改良を進めている気配は感じられないので、きっと古い系統と思われる。南の地域では見たことがなく、華北、東北、内モンゴルでは路上で販売している所を多く見たので、北方系の品種だろう。こちらは味が日本のモモによく似て、果肉が柔らかく甘いため日もちはよくない。

「油桃」(Amygdalus persica var. Nectarina)は、毛がなく表面がつるつる。黄色地に紅色が乗ったこの油桃の味は忘れることができないほどで、滞在中は毎日食した。肉質は緻密でカリカリっとした食感があり、甘さと酸味が調和して清々しい。内モンゴルの路上でたくさん売られていたが、ほかでは見なかったので、地域性があるのかもしれない。大きさはスモモ程度だが、学名からわかるとおりモモと同種だ。

モモは黄河上流の高原地帯に自生する。写真は山東省済南市平陰県に流れる黄河の様子。

モモは中国原産。様々な品種があり、地域によって採れる時期が違い、いつもどこかでモモが栽培されているという。
こちらは、雲南省石林のモモ。

おとぎ話に出てくる先のとがったモモ。硬いうちから甘く、皮ごと食べる。カリカリと食感がよい。昆明の街角で売っていた。

遼寧省大連の道端で売っていた蟠桃。中国南部で見ることはなかったので北方系の品種だと思う。果肉は柔らかく日本のモモと食感は似ている。

内モンゴルの呼和浩特の街角で売っていた油桃。スモモではなくモモの変種。 果肉は甘く、硬いけれど食感がよいのでいくらでも食べられる。
それにしても、1500gで163円※ほどとは安い!!
※1元/16.37円(2014年7月現在)

JADMA

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