小杉 波留夫
こすぎ はるお
サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後もアドバイザーとして勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。
エディブルフラワー ヤブカンゾウ
2014/08/08
先週ご紹介したニッコウキスゲ(Hemerocallis middendorffii var. esculenta)のバラエティーネーム、「esculenta」は食用を表している。実は、この仲間は花の咲いていない蕾(つぼみ)をそのまま食べると、甘くシャキシャキとして歯ごたえがあり、なかなか美味なのである。だから、中国では野菜として市場などでよく見かける。 同じキスゲ属でも都会のヤブには、ヤブカンゾウ(Hemerocallis fulva var. kwanso)が生えていて、タネのできない3倍体※にもかかわらず、あちこちで見ることができる。誰かが植えたわけでもなさそうなのに、分布を広げているから不思議だ。こちらも蕾のほか花、若葉なども食べられる。この種は丈夫でバイオマスも多く、蔬菜(そさい)として考えてもよいのかもしれない。
キスゲ属は東アジアの植物で、このヤブカンゾウは中国から伝わったといわれるが、本場中国でも古くから栽培されていて、実は原生地はよくわからないらしい。
※3倍体…基本の染色体数の三倍の染色体数をもつ生物体。四倍体と二倍体との交雑によって生じ、不稔性になることが多い。種なし果実の育成に利用。(三省堂 大辞林より)
中国の市場で、並んだ野菜の中にキスゲ属の花の蕾が束になって売られていた。
生で食べてもおいしい。ヤブカンゾウの蕾をゆでて天日干しにしたのが生薬の「金針菜」。
蕾が開くとご覧のとおりの鮮やかな花色。ヤブという名が残念なくらいの美しさ。
夏にグンと花茎を伸ばし、八重咲きの花をいくつも開く。花色は変異が大きい。