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連載

精霊花 ミソハギ

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後も嘱託として勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

精霊花 ミソハギ

2014/08/15

2011年夏、何か私でもお手伝いできないかと福島県南相馬に出かけた。その沿岸部分は海からかなりの距離までが、津波がれきで埋め尽くされ、あまりの被害の大きさに言葉を見つけることができなかった。

あの震災から4回目の夏がやってきた。家屋や田畑があった場所は地盤も下がったのか、湿地になり葦原へと姿を変えようとしている。その中に、ミソハギ科ミソハギ属の多年草、ミソハギ(Lythrumanceps)が点々と花を咲かせていた。

溝に生えるので“溝萩”とも思えるし、旧盆に花を咲かせるので“盆花”というゆえんも理解できる。多くの御霊への供養を意味するかのようで、その地に咲くミソハギの姿には、不思議な美しさと悲しさを感じずにいられない

ミソハギは日本、朝鮮など東アジアに原生している。津波後の湿地に広範囲に花を咲かせている状態から、いずこからか伝播したようには見えず、その場所の原始原野に埋没していたタネが芽を出して花を咲かせたように、私には思えた。

福島県南相馬市。まだまだがれきの山が残っていた3年前の夏。

今ではすっかり湿地となり、見渡す限りの葦原が広がる。家屋や田畑の姿は跡形もない。

穂状に小花をつけるミソハギ。葦原にちらほらとこの濃ピンク色が差し込んでいる。

水分の多い溝に咲くから“溝花”?
禊ぎ(みそぎ)に使う萩に似た花だから“禊萩”という説もあるらしい。

JADMA

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