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東アジアの珍菜 野菜

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後もアドバイザーとして勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

東アジアの珍菜 野菜

2014/12/05

古来、“里”は人が住まう場所で、“山”は神が住まう場所とされました。その中間が“野”であって、そこは人と神が出会う場所でした。“小野”“中野”の違いがあり山に近い野は“大野”といい、人が亡くなると里から担いで“野”に置いたので“野辺送り”という言葉があります。

野に生える草の根や茎、花、葉を利用するから、“野菜”であり、山の食用草であるから“山菜”と呼ばれます。東アジアには、たくさんの見慣れない珍しい“野菜”がありそのいくつかを、食べ方と同時に紹介したいと思います。ちなみに、里で栽培される菜は、蔬菜(そさい)と呼ばれますが、いつの間にか蔬菜と野菜の区別をしなくなりました。

ドクダミ Houttuynia cordata(ドクダミ科)
日本から東南アジアに分布する東アジアの植物です。日本ではどこにでも生えていて駆除困難な雑草ですが、中国の少数民族ではこれを生食します。イ族の友人は嬉々としてそれを生で食べるのです。美味しいよ、美味しいよ!と言って薦めるのですが、どうしても私には食べることができません。

バウヒニア アクミナータ Bauhinia acuminata(マメ科Bauhinia属)
花や蕾を食用にする花食文化が東アジアには、たくさんあります。熱帯に多いこの植物の若葉や蕾、花びらは食べることができ、歯触りがよくシャキシャキとした食感が箸を進めます。中国名を「白花羊蹄甲」といい、花は純白で美しく、「ソシンカ」ともいいます。

ソラナム コアグランス solanum coagulans(ナス科ソラナム属)
シーサーパンナ泰属自治州でのこと、タイ料理の小さな食堂に入った時、珍しい食べ物があるといって出てきたのがこれ。グリーンピースの親分ほどの大きさで、果肉が少なくてタネが多く、バサバサしていて青臭い。この地のその辺に生えているナス科の雑草の実らしく、滅多に食べられないよ!と言うのですが、滅多なことでは食べたくないものでした。

タマリロ Cyphomandra betacea(ナス科キファマンドラ属)
亜熱帯高地の林道を歩いていて、妙な果実を見つけました。「木トマト」という現地の食べ物と聞いて持ち帰り、当地と同じディップにしましたが不味! あとで調べたら、南米原産の野菜、タマリロでした。どうやら20世紀に入ってこの地にも伝わったものらしいのですが、山野に散逸し、自生状態で生えていました。

オッテリア アクミナータ Ottelia acuminata (トチカガミ科ミズオオバコ属)
葉がオオバコに似ていて、雲南、四川の湖などに分布します。花は白色の一日花で、花茎の先を水面に出して咲かせます。茎を食用としてスープにして食べるのですが、ヌルミがあり、つるっとした食感でした。

JADMA

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