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人目を忍ぶ恋心 サネカズラ

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後も嘱託として勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

人目を忍ぶ恋心 サネカズラ

2014/12/19

石原裕次郎の「夜霧よ今夜もありがとう」という歌謡曲をご存じですか? 人目を忍ぶ恋心を歌ったヒット曲です。平安時代にも、同じように恋心を歌った「なにしおはば あふさかやまの さねかづら ひとにしられで しるよしもがな」という、百人一首で有名な三条右大臣(藤原定方)の歌があります。今回は、このサネカズラについてのお話です。

マツブサ科カズラ属のサネカズラ(Kadsura japonica)は、「日本の葛(かずら)」という意味の学名がついている、つる性の常緑樹です。身近な東アジア照葉樹林帯に自生し、葉はクチクラ(角皮)が発達して丈夫。果実は花床が赤い球体となり膨らみ、その周りに小さな実が付くユニークな形で、よく目立ちます。この形状ゆえに、昔から人々の興味をひいてきたのでしょう。

美味しそうに見えて無味無臭。味気ないのですが、昔の人はサネカズラのツルを利用する方法を発明しました。ツルの皮をむしり、水で揉むと出てくる粘液を、乱れた髪につけて整髪剤にしたのです。サネカズラを使ってぼさぼさ頭を櫛でとかし整えたので、「美男葛(ビナンカズラ)」の別名もあります。

では、昔の人はなぜそこまで、この植物に執着したのでしょうか。どうやら、サネカズラの“サネ”は「小寝」に通じるらしいとか。なにやら艶っぽい妄想が、美男葛の名を生んだのかもしれません。

サネカズラの集合果は緑色から桃色へ、そして赤く色づきます。東アジア照葉樹林帯に自生し、身近な里山の林縁に見られます。自宅そば(横浜市)の林縁で撮影しました。

花は8月に咲きます。雌雄異株でこの花はオス花、径2cmくらいの小ささです。

照葉のつる性樹木で、学名の意味は「日本の葛」と立派なもの。果実は葉に隠れてしまうので、注意して見ないと気づかずに通り過ぎてしまいます。

花床に小果が付きます。無味ですが12月になるとわずかに甘くなります。そして小鳥たちの食べ物となり、中に入っているタネが、動物によって拡散していきます。

水に浸し、芯から樹皮をはがしてよく揉むと、ヌルヌルとした粘液が出てきます。昔はこれを整髪剤にしました。昔の男性は女性にもてたい一心で、このサネカズラから粘液を採ったのだと思われます。

JADMA

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