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連載

モンゴリアン メドー フロミス チューベローサとその仲間

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後もアドバイザーとして勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

モンゴリアン メドー フロミス チューベローサとその仲間

2015/01/16

内モンゴルの草原から南へ行くと、東は大興安嶺から西はアルタイに延々と続く、陰山山脈があります。そこは農耕文化と遊牧文化を分ける境界であり、紀元前には匈奴(きょうど)が跋扈(ばっこ)する土地柄でした。2000m前後の山塊には、上昇気流ができる斜面があり、乾燥した山塊にあっても、豊かな草地が広がる場所もあります。

そこにはお団子を串でさしたように咲く、ピンク色のシソ科フロミス属Phlomis tuberosa(フロミス チューベローサ)がいろいろな草仲間と一緒に生えていて、きれいなメドーガーデンができています。

黄色いモヤのように見えるのはアカネ科Galium verum(ガリューム ベルム)。日本にはない、ヤエムグラ属の黄花種です。白い花はキンポウゲ科カラマツソウ属Thalictrum

petaloideum(タリクトラム ぺタロイデウム)。この種はどこにでも咲いていました。オレンジ色の花は園芸種のウォールフラワーに似たErysimum bungei(エリシマム ブンゲイ)。分布の中心が地中海にあるアブラナ科の植物です。

他の花々は単独でも花を咲かせていましたが、どのようなわけか Phlomis tuberosa(フロミス チューベローサ)は必ず草仲間と共に生えていました。Phlomis属にはエルサレムセージなど園芸店で売られている種も多く、自生の中心を地中海沿岸部としています。ここのフローラは、私たちの住まう太平洋の岸辺と違い、より大陸的要素の強い植物でした。

シソ科フロミス属Phlomis tuberosa(フロミス チューベローサ)は超然として、一人で生きてゆくのが苦手らしく、いろいろな草仲間と一緒に生えています。

アカネ科ヤエムグラ属Galium verum(ガリューム ベルム)。黄花を咲かせて1m前後に成長する大型のGalium類。花からは色素が採れ、その乾物はノミを遠ざけるといいます。

属名のPhlomisは、ギリシャ語の「flame(炎)」にその名を由来し、葉をランプの芯に使ったとされています。乾燥した葉は確かに芯に使えるのかも知れません。白い花はThalictrum petaloideum(タリクトラム ぺタロイデウム)です。

オレンジ色のこの花は、アブラナ科エリシマム属Erysimum bungei(エリシマム ブンゲイ)。この属は南ヨーロッパを分布の中心としますが、東アジアには、このbungeiが分布します。水はけがよい岩山などに生え、草丈は60cm程度になります。

Phlomis tuberosa(フロミス チューベローサ)の種小名は、球根性を意味します。根を確認するのを忘れたことが悔やまれます。草丈は約1mで遠目にはピンクのお団子を串でさしているように見えます。

JADMA

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