小杉 波留夫
こすぎ はるお
サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後もアドバイザーとして勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。
お寺と「ジンジャ」 ロスコエア
2015/03/06
チベット族は、ラマ教と言われていたチベット仏教を篤く信奉しています。
インドに近いこともあり、漢字にされた経典ではなく、民族の言葉で直接経文を記しているので、中華文化の恣意が反映されていません。
小高い丘には、タルチョー(経旗、五色の伝統的な祈祷旗)がはためき、人々はマニ車を回します。
善を積んだ人々にとって、最高の葬儀は鳥葬とされています。
鳥に乗って魂は天界へと旅立つと信じられています。
雲南省チベット仏教の総本山、松賛林寺(ソンツェリン・ゴンパ)はラサのポタラ宮を思わせる、チベット仏教のお寺です。
香格里拉(シャングリラ)の郊外5km、標高3300mにあり、森林限界よりも上になるため空気が薄く感じます。
そんな、お寺がある近くの場所に、「ジンジャ」があります。といっても神道の神社ではなく、植物のGinger(ジンジャー)類です。ショウガ科の仲間は、熱帯の林床に多い単子葉植物ですが、 冷涼な気候を好む高山性のGinger類がRoscoea属(ロスコエア属)です。
ロスコエアは地下茎を持つ多年草で、一見するとランと見間違えるほど美しい植物です。
松賛林寺(ソンツェリン・ゴンパ)は、香格里拉(シャングリラ)にあるチベットの仏教寺院です。その姿はお寺よりむしろ要塞といった雰囲気があります。
空気が薄く参道の階段を上るには一苦労します。寺院入り口の垂れ幕には、シャンク貝や吉祥紐などの文様が見られます。
峠や山の頂には五色の旗、タルチョーがはためいています。
これには経文が印刷されており、旗がはためくたびに風が仏法を広めると考えられています。
このタルチョーは、チベットの他、モンゴルの荒野でも見られます。
意外にもチベット仏教はモンゴルやシベリア等ユーラシアに広く信者がいます。 後ろに見える小高い丘の上は鳥葬が行われる場所です。
ロスコエア・カウトレオイデスショウガ科ロスコエア属 Roscoea cautleoides
花色は薄い黄色で、植物体に比べ大きな花を付けます。
こちらもロスコエア・カウトレオイデス、雲南省の高山に生えるショウガ科の多年草です。蘭のような葉を持ち、花を頂部に咲かせます。
ロスコエア・アルピナ Roscoea alpina
種形容詞のalpinaとは高山性を意味します。花は頂部に一つずつ咲きます。
ロスコエア・アルピナは普通、赤紫色ですが、アルビノ系を見つけました。 ロスコエアと知っていないと蘭と間違えます。
雲南の高山には、幾つかのロスコエアが生えています。
おそらくロスコエア・チベティカ Roscoea tibeticaかと思いますが、 変異が多いので確定できませんでした。