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超然として語らず インドボダイジュ

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後も嘱託として勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

超然として語らず インドボダイジュ

2015/03/27

お釈迦様がその木の下で悟りを開いたとされるフィカス レリギオーサ(Ficus religiosa)、和名でインドボダイジュ(印度菩提樹)。クワ科イチジク属で、種形容語のreligiosaとは「宗教」を意味し、この植物名の由来を表しています。

菩提とは悟りのこと。このインドボダイジュは、仏教三大聖樹のひとつにされています。写真を見るとわかりますが常緑の相当な高木です。葉の先端が長く伸びるのが特徴で、東アジア南部では、村の守り神や都市のシンボルにされています。

ところが、日本においてボダイジュはさまざまな誤解や誤訳によって理解が難しい植物のひとつになっています。熱帯アジア原産のこの植物は、正真正銘のボダイジュなのですが耐寒性はなく、仏教が北に伝わるにつれて栽培できなくなることから、代用植物として寺にシナノキ属のティリア・ミケリアナ(Tilia miqueliana)が植えられました。この代用植物がボダイジュとされ日本に伝わったのです。

有名なシューベルトの歌曲「リンデンバウム(セイヨウシナノキ)」を日本ではセイヨウボダイジュと訳し、「湖に沿いて茂るボダイジュ」という歌詞をつけてしまいました。私には、シューベルトがお釈迦様のことを考えて曲を作ったと考えることができません。

そして、仏教が弾圧されたインドにおいても、お釈迦様の木を守るため、よく似たガジュマルをボダイジュとして偽り、そのボダイジュを守ったといわれることから、ますます、ボダイジュの姿があやふやになっているのです。

本当のボダイジュ、インドボダイジュ(Ficus religiosa)は、聞こえてくるものにかかわらず、見えるものは無常なものと悟っているのでしょう。そんな人事の事情はどうでもよいとばかり、何の釈明もせず、超然としているだけです。

ラオス国境付近に有名な中国茶葉の生産地があります。その村の中心には、守り神としてインドボダイジュの巨木があります。

熱帯、亜熱帯に行くと、古木、巨木の類にはたくさんの着生ランが見られます。このインドボダイジュには、人の手が届かない高所にランが着いています。

インドボダイジュは信仰の対象とされます。株元にはお釈迦様の立像があり、祭事のお供えものが置いてあります。

西双版納タイ族自治州の州都、景洪は雲南省の南部にあり、北回帰線より南にある熱帯の都市です。中心部には6階建てビルよりも大きなインドボダイジュが町のシンボルのようにそびえます

東アジア南部に行くとインドボダイジュは街路樹としても植えられています。葉は肉厚でハート形をしていて、先端が3~4cmの長さでとがっているのが特徴です。

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