小杉 波留夫
こすぎ はるお
サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後もアドバイザーとして勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。
罰当たり1000年、茶樹を食す [前編] チャノキ
2015/05/15
新茶の季節がやってきました。世界中、一体どれくらいの人がお茶を飲んでいるのでしょう。私を含め、お茶を飲まない日のない方が、たくさんいらっしゃるのではないでしょうか。
チャノキはどこに、どのように自生しているのでしょう。そして、その利用方法は、誰が、どのように、発見あるいは発明したのでしょう。チャノキという植物について少し考えてみたいと思います。
お茶の原料はツバキ科カメリア属のチャノキ、学名Camellia sinensis(カメリア シネンシス)の葉です。緑茶、紅茶、ウーロン茶、プーアル茶はすべてこの植物の葉、茶葉から作られています。
種形容語のsinensisは中国を表し、雲南省東南部全域の標高2,000m程度の照葉樹林帯に野生種は生息しています。そんな、チャノキ原生地のひとつ、雲南省とミャンマーの国境近く、モウハイ県にある南糠山に入りました。
南糠山は亜熱帯の低山で、どことなく、東京都にある高尾山に似た懐かしい雰囲気があります。亜熱帯の熱い空気は山を登り、冷やされ霧や雲になります。下草にはベゴニア類やトレニア類、リシマキア類が見られました。背の高い樹木が点在し、適度な日よけになり、50%程度の遮光状態だと思います。湿度があり、幹には地衣類がつくような環境です。
ここのチャノキ、Camellia sinensisは、どれも見上げるような大きさで、葉の大小の違い、葉色の違いがあり多様で、しかも大量に生えています。ふつう栽培されるチャノキの寿命は100年未満ですが、ここには茶王と呼ばれる樹齢800年を超える木もありました。
雲南省昆明には茶城なる茶の市場があり、茶葉が山積みで売られています。中国茶の作法で洗茶をするのは、ほこりを除くためです。
雲南省モウハイ県南糠山は亜熱帯の低山です。大きな樹木が茂り、木漏れ日の中にチャノキが自生します。
雲南省は照葉樹林帯が始まる場所、そして日本は照葉樹林帯の終着駅となるので、どことなく日本の低山に雰囲気が似ているのは、このためでしょう。写真は南糠山の林道です。
野生のチャノキは2~3m程度あり、自由奔放に枝を伸ばしていました。中国でも野生茶は珍重され、茶摘みは木に登って行います。
霧が発生し湿度の高い場所です。
古茶樹の幹に地衣類がついています。こうした木のお茶がおいしいといわれます。
チャノキといってもさまざまな個体があります。写真は小葉で赤葉の木、赤いお茶が取れそうです。
アゼナ科トレニア属Torenia concolor(トレニア コンカラー)、ツルウリクサです。チャノキの下草として生えていました。いくつかの場所でこの植物を見ることができましたが、いずれも溝や林道の脇で、人間が手をいれた場所、水が流れた跡がありました。
同じく下草には根茎性ベゴニアのいくつかの種が見られました。熱帯、亜熱帯で湿度があり、斜面がある場所ではベゴニア類が見られます。写真はBegonia dryadis(ベゴニア ドライアデス)です。
後編に続きます。