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東北お祖母ちゃん ヤブツバキ

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後も嘱託として勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

東北お祖母ちゃん ヤブツバキ

2015/05/29

今回は中国の椿(チン)ではなく、日本の椿(ツバキ)についてのお話です。

ツバキ属は、東アジア照葉樹林帯独特の植物群で、長江以南の中国南部に分布の中心があります。そして、この仲間の北限に自生し、かつ日本に広く自生するのが、ヤブツバキ。ツバキ科ツバキ属Camellia japonica(カメリア ヤポニカ)です。

この種は日本が自生の中心地域で、朝鮮半島南部、台湾にも分布するといわれますが、未確認情報ながら山東省の無人島にも自生すると聞くので、今後の確認が必要です。

日本の東北地方南部まで広がる照葉樹林帯であれば、ヤブツバキを比較的豊富に見ることができます。花や艶葉、材の美しさのみならず、植物全体を利用するさまざまな文化があり、私たちに身近な植物といえます。

この種の北限に近い、岩手県大船渡市末崎町の碁石海岸を臨む小高い丘に、「三面椿」というお祖母ちゃんツバキが生えています。何度か見てきましたが、今年も真っ赤でおしゃれな花を咲かせていました。

現在は根回り8m高さ10mですが、全盛時は倍の大きさを誇るツバキだったと聞きます。樹齢は驚くことに1400年。日本最大で最古のヤブツバキです。

古木の樹齢は伝承などで推定する訳ですが、この樹齢が真実だとすると、お祖母ちゃんツバキは三陸を襲ったいにしえの天災である「869年貞観津波」、「1611年慶長津波」、「1896年明治三陸津波」そして「3.11津波」を生き残ってきたことになります。

「三面椿」のすぐ下の集落は大きな被害を受けましたが、不思議なことに津波はこのツバキがある熊野神社の鳥居の前で止まりました。このツバキが1000年以上もここに立っていたことは、少なくともその間、この場所に天災の被害がなかったことを示します。

日本各地に存在する古木や巨樹は、自然への敬愛を感じるものですが、ある意味ではその場所が安心、安全であることを私たちに語っているのです。

写真は屋久島林檎椿で、ヤブツバキの変種Camellia japonica var. Macrocarpa。マクロカルパとは大きな実を表します。筒咲きの愛らしい花をつけます。

ヤブツバキの花は5枚の花弁とたくさんのおしべがありますが、1つのユニットになっていて、離れずにそのままの形で散ります。年内から開花を始め、4月頃まで咲くので開花期間も長く、花には蜜をたくさんつけるので、冬の間、お腹を減らした小鳥たちを養います。

岩手県大船渡市、三陸復興国立公園の碁石岬です。北国みちのくといえど、この辺りの太平洋沿岸は比較的温暖で、ヤブツバキが自生します。おそらくこの辺りがヤブツバキの自然自生の北限ではないかといわれています。この地に最大、最古といわれるヤブツバキが生えているのです。

神社の3面にヤブツバキが生えていて「三面椿」といわれます。他の2面には古木がなく、「三面椿」だけが昔を伝えます。2011年3月11日の大津波は不思議なことに、この鳥居のすぐ前で止まりました。

その名は「三面椿」。一重咲きの華やかな花をつける推定樹齢1400年のお祖母ちゃんツバキです。今は往時の半分の大きさになってしまいましたが、根回り8mの堂々としたヤブツバキの古木です。

この株は世界で1番の寿命を誇るヤブツバキです。樹勢も強く、今でも美人のツバキです。

ツバキは成長が遅く、とても材が硬いのです。それにしても堂々とした腰周りをしています。幹に手を当てると過ぎてきた年月が浸み込んでくるように感じました。

JADMA

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