小杉 波留夫
こすぎ はるお
サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後もアドバイザーとして勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。
Major メジャー サンザシ
2015/07/03
日本でサンザシは落葉高木として、庭園樹や盆栽として知られていますが、その果実はあまり知られていません。
サンザシの近縁種に実の大きなオオサンザシ Crataegus pinatifidaがあります。バラ科カラタエグス属で、中国の華北地方などに自生します。その変種であるオオミサンザシCrataegus pinatifida var. Majorは栽培品種として中国の北部などで生産され、世界的に広がっていると聞きます。
なぜか日本では菓子の状態ならまだしも、Majorはメジャー(主要)な果物にはなっていません。原生地の中国では、オオミサンザシはメジャー(主要)な果物として人気があり、実を棒に刺して水あめをかけ、ビンタンフールという子どもが大好きな菓子になります。
その実にはクエン酸とビタミンCが豊富で、酸味と甘みのバランスがよく、薬用、飲料、料理に用いられるほか、実を潰して砂糖と寒天を加えて練り、乾燥させた羊羹みたいな「山査子餅」や「山査子条」に利用されます。
5月下旬、この植物の自生地を山東省泰安市の山地で見かけました。半日陰の谷筋に生え、葉は互生し、長い葉柄があります。葉身が浅く、羽状に裂けて鋸歯があり、バラ科独特の白い花を咲かせていました。
サンザシの仲間は北半球に多くの種が自生していますが、食用できる種としてはオオサンザシとオオミサンザシがメジャー(重要)となっています。
青島の街角で売られていたビンタンフールという菓子です。これはオオミサンザシに水あめをかけたもの。値段は10元でした。中国で生まれた日本人の方は「子どもの頃の憧れの菓子だった。60年ぶりに食べた」と話をされていました。
オオミサンザシCrataegus pinatifida var. Majorの実で作られるビンタンフール。リンゴ飴みたいです。その大きさは3㎝弱あり、堅いタネがいくつか入っています。果肉は粉質でありながらしっとりしています。それは一度食べたらやみつきになる味で、酸味と甘みが見事に調和していて絶品でした。変種名のvar.Majorは「より大きな実」を表します。
果肉を砕き、砂糖を加えた山里紅汁。こちらも、酸味がアクセントになり、なんともいえないおいしさです。
山東省の低山の谷筋にオオミサンザシの自生種を見かけました。大きさは5m程度、白い花が咲いていたので、それと解りましたが、山中で花や実がついていないと特定は無理ですね。
オオサンザシCrataegus pinatifidaの花と葉です。種形容語のpinatifidaとは、葉が羽状に切れた葉という意味です。この葉がこの植物を特定するのに役立ちます。
中国中南部に自生するサンザシCrataegus cuneataの実です。種形容語のcuneataとはクサビの意味で、このタネの形を表します。実は秋から冬に熟します。