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咲いて一日 落ちて一日 オオハマボウ

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後も嘱託として勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

咲いて一日 落ちて一日 オオハマボウ

2015/08/14

暑い日が続きますが、いかがお過ごしでしょうか? 猛暑日の連続には嫌気がさしますが、気分を変えて夏のリゾートを彩るハイビスカスの話です。ハイビスカスという植物名は、野生種を改良して作り出した園芸種の流通名です。

学名はHibiscus なので、植物学的には、学名のHibiscusをそのまま読んで「ヒビスカス」と呼びます。この植物は熱帯を代表する花ですが、温帯域の日本にも黄色いヒビスカスが自生していることを皆さんはご存じでしょうか?

恐らく日本はHibiscus 属の自生の北限だと思います。サカタのタネの本社がある神奈川県の南東部に位置する三浦半島には、落葉低木のアオイ科ヒビスカス属 ハマボウHibiscus hamabo(ヒビスカス ハマボウ)が自生しています。

ハマボウは、この地域からトカラ列島までの海岸に生え、夏にヒビスカス属独特の黄色い花を次々と咲かせます。種子島より南の島しょに行くと、ハマボウをひと回りも大きくした オオハマボウHibiscus tiliaceus(ヒビスカス ティリアセウス)という種が自生します。

この植物は常緑で落葉種のハマボウとは違う種です。ヤマアサの別名があり、沖縄ではユウナと呼ばれ、ハワイではハウ(Hau)と呼ばれます。葉がハート型をしていて大きく、よく茂るため、海風を防ぐ防風林に利用されたり、樹皮から繊維を採ったりと、美しい花を眺めるだけでなく、暖かい島々では多目的に生活に利用されています。

青い空と青い海、夏ならでは景色です。この時期になると園芸店ではハイビスカスの鉢植えが多く売られます。今回はそんなハイビスカスについての話です。

夏はこの花の季節です。園芸店で販売されているハイビスカスは、いくつかの原種の交配から生まれた園芸種です。買い求めた鉢植えは水を切らさないようにしましょう。せっかく買ったのに、花や蕾が落ちてしまったという相談をよく受けます。水切れさせると花や蕾が落下するのでご注意を! また、花が次々に開花するので肥料切れにも注意しましょう。

熱帯、亜熱帯地域を中心に分布するヒビスカスですが、神奈川県三浦半島にもこの属の自生種があります。黄色い花をつけるハマボウです。落葉の低木で、この木は樹高3m程度でした。関東から西の地域では、海水につかるような干潟などにも生える海浜植物です。

ハマボウHibiscus hamabo。花の大きさは7cm程度。一日花ですが、次々と花オクラに似た花をつけます。

オオハマボウHibiscus tiliaceus。ハマボウより大きく、花弁が大きく重なり合って丸く咲きます。咲き始めは朝9時頃でしょうか。咲き始めはレモンイエローで、夕方には花色が移り変わり、散っていきます。中心のえんじ色は虫を誘うのに有効なのでしょう。

株元に落ちていた昨日の花です。花弁とおしべ、めしべがセットになってツバキのように散ります。まだ花弁組織はしっかりしていて、持ち帰ったら夕方まできれいな状態でした。オオハマボウは「咲いて一日、落ちて一日」楽しめる花だったのです。レモンイエローから、夕焼けのように染まる花色の変化がすてきです。

オオハマボウの種名はtiliaceusといいます。それはシナノキ属(Tilia)のような葉という意味です。ハートの形をした丸い葉は、確かにシナノキに似ています。オオハマボウは低木ですが、10mを超えることもある立派な樹木です。潮風を防いだり、樹皮から繊維を採ったり、全草を漢方に使ったり、さまざまに利用されています。紙が貴重だった時代は、葉をトイレットペーパーの代用にしたと聞きました。花を楽しみだけでなく、日本のヒビスカスは有用な生活の糧だったのです。

JADMA

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