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日本三大毒草 [後編] トリカブト

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後も嘱託として勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

日本三大毒草 [後編] トリカブト

2015/09/18

前編はこちら

日本に自生する数あるトリカブトの中で、とりわけ毒性が強いとされるエゾトリカブトを探して、北海道、野幌の森を歩いてきました。折からの雨で道は川となり、グチャグチャになりながら散策すると、あそこにも、ここにも青い、烏帽子(エボシ)のようなエゾトリカブトがうな垂れるように咲いているのでした。

夏の終わり、トリカブトはなぜか陰気に薄暗い森の奥深くで花を咲かせます。関東にもヤマトリカブトAconitum japonicum var. Montanumなどが咲きますが、北海道に自生するエゾトリカブトの毒性が際立ちます。全草が猛毒ですが、とりわけ根に毒が多く含まれ、この地に住まったアイヌ民族は、これを矢毒に使用して強大なヒグマに打ち勝ち、生態系の頂点に君臨してきました。

自然物は体によく、化学合成物は毒のような感覚がありますが、その認識は間違いです。トリカブトに含まれるアコニチンなどのアルカロイドは猛毒で、2~6mg が致死量です。根、花、茎、葉の順番に毒性が少ないそうですが、その葉を2g程度食べただけで危険です。そして未だ解毒剤がありません。

トリカブトは花が咲いていると間違いようがありませんが、若葉の頃はおいしい山菜として知られるシドケ(モミジガサ)、ニリンソウなどによく似ているので、誤食の事故が絶えません。日本三大毒草のドクウツギ、ドクゼリ、そしてトリカブトは、食用になる野山の幸たちと皆よく似ているのです。

山菜摘みは春の楽しみ。独特の味わいがあり日本の食文化のひとつだと思いますが、自然は時として、恵みだけでなく恐ろしい牙をむくものでもあることを忘れないようにしなければなりません。植物の知識をしっかり身につけ、危険を避けるようにしたいものです。

エゾトリカブト(キンポウゲ科アコニツム属)Aconitum sachalinense subsp. yezoense 。種形容語はカムチャッカ産を意味していて、エゾトリカブトはより葉が深く裂ける。カラフトブシAconitum sachalinense の亜種とされます。

エゾトリカブトは花が重いのか、しゃんと立っていません。花の形は兜というより、まげの上からかぶる帽子、烏帽子に似ています。

トリカブトの毒は狩猟を生業とした時代や、戦乱に明け暮れた時代に盛んに用いられたといいます。韓流の時代劇『トンイ』のきゅう敵だった張禧嬪(ヒビン)の賜死に使われた附子湯(プジャタン)もトリカブトの毒です。

ドクサノオウ(ケシ科ケリドニューム属)Chelidonium majus。私たちの身の回りにいくらでも生えているクサノオウです。この植物も古くから薬用に利用され、毒草として知られています。ケルドリンなどのアルカロイドを含み、中毒事故の多い植物です。

クサノオウの茎を折ると黄色い乳液を出します。これに多くのアルカロイドが含まれるのです。エゾトリカブトの味見はできません。しかし、毒がどんな味がするかクサノオウで実験してみました。結果は味ではなく痛みでした。舌に焼けつくような激痛を感じ、慌てて吐き出しました。よい子の皆さんは決してまねしないでくださいね。

JADMA

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