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武骨な洒落者 ヤマボクチ(山火口)属

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後もアドバイザーとして勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

武骨な洒落者 ヤマボクチ(山火口)属

2015/12/11

アザミとゴボウを足して2で割ったような植物にヤマボクチ属の植物があります。草紅葉も終わった枯野に、1m程度の大きさで枯れたアザミのような大きな頭花が立っていたら、それはヤマボクチの仲間かもしれません。

このヤマボクチ属の頭花(キク属の記事で紹介しましたね)は、武骨で硬い槍のような総苞(花や花序を包む葉)片が密集して花を保護しているのですが、そこにはクモ毛(クモの巣のような毛)が生えています。

昔の人はそれを集め、火打石からでる火花を移し採り、火口(ホグチ)にしたというエピソードが名前の由来となっています。このヤマボクチ属(Synurus属)の植物は少数民族で、世界でも東アジアにわずかな種が分布しています。

ハバヤマボクチSynurus excelsus(エクセルサス)キク科シヌラス属。種形容語は背が高いことを表します。漢字で「葉場山火口」と書き、草刈山に生えるヤマボクチという意味になります。

総苞は花を保護する葉が変化したものです。トゲの中から花を咲かせるようで、いかにも武骨な印象があります。その総苞片にはクモの糸のような細い毛が巻きついています。この毛を、火をおこす際の火口(火打石から出る火花を移しとる火種)にするとは、昔の人は生きていくのも大変だったのです。

ハバヤマボクチの全体像です。福島以西の日本に自生しますが、珍しい植物だと思います。

オヤマボクチSynurus pungensキク科シヌラス属。種形容語のパンゲンスとは、硬くとがった苞を表します。赤紫と白の配色が絶妙です。このシックな色彩感覚には驚くばかり。自然は時に驚くようなデザインを見せてくれます。クリムソンパープルの花冠から、白いおしべが出て、めしべの先に花粉がついているのがわかります。

オヤマボクチは漢字で「雄山火口」と書きます。何という雄大で雄雄しい名前でしょうか。この植物はキク科ですが舌状花がなく、筒状花だけからできています。草丈は1.2m程度で花の大きさは5cm程度になります。ハバヤマボクチは西に、オヤマボクチは本州中部から北に生えるヤマボクチです。

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