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200万年の時を越えて[前編] 化石杉

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後も嘱託として勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

200万年の時を越えて[前編] 化石杉

2016/03/15

先週の「杉の大杉」には驚きましたが、世界にはさらに背の高いスギがあります。その名は「ハイペリオン(Hyperion)」。固有名詞を持つ巨樹で、樹高は世界最高の115.55mです。樹種は北米カリフォルニア州の海岸山脈に原生するスギの仲間で、「世界爺雌杉(セコイヤメスギ)」と呼ばれる植物です。

セコイヤメスギSequoia sempervirens(セコイヤ センペルビレンス)ヒノキ科セコイヤ属。属名はネイティブアメリカンの集落の長sequoiah氏にちなみ、種形容語sempervirens とは常緑の葉を意味します。英語ではレッドウッドという雄大な針葉樹です。樹皮はコウヤマキに似てとても厚く、縦に裂けます。

セコイヤメスギは常緑で、葉は互いちがいに着いた互生と呼ばれる着き方です。枝の先端は、寒い冬から新芽を守るための冬芽を作ります。

その根元にはセコイヤメスギ独特の球果がたくさん落ちていました。普通、針葉樹の周りにはこの球果と呼ばれる果実が落ちています。それは樹脂に富み、高分子な化合物でできていて、けんろうで難分解な物体です。そして、時として時間を飛び越えるタイムカプセルような役割を果たしました。

黒松、赤松、五葉松、琉球松、大王松、テーダ松、コウヤマキ、ヒマラヤシーダ、ヌマスギ、広葉杉、ヒノキ、サワラ、コノテガシワ、スギ、トウヒ、セコイヤなど、球果は種(しゅ)によってさまざまですが、種の繁殖に関わる器官なので保守的で容易に姿を変えません。それは種としての本質に関わるからです。そして、その形状は古代から大きな変化をしないものです。球果は種独特のものです。球果から種を特定するのは難しいことではありません。

日本各地の古い地層からこの球果が見つかります。それはセコイヤの球果に似ていますが、違う構造をしていて、つい最近までは現存する裸子植物には知られていない未知の球果でした。そして、その周りから木片や葉などが化石として見つかりました。1941年、日本の三木茂博士は岐阜県や和歌山県などの約1100万年〜100万年前の粘土層の中から、原生裸子植物のヌマスギやセコイヤとは異なる未知のスギ類の球果などを見出し、化石杉属として発表したのです。

三木博士が未知のスギ属を発見した着眼点は、セコイヤなどの互生する葉と違った対生(十字対生)する葉のつき方と球果の違いなどでした。右がセコイヤメスギSequoia sempervirens の球果です。球果は、葉が変化したものです。セコイヤメスギの葉は、互生の構造をしていてらせんを描いています。左の未知のスギは、球果の鱗片が向かい合わせの対生です。十字対生とも呼ばれます。そして、化石として出てきた葉も対生でした。さらに葉にはセコイヤにあった冬芽がなく、落葉する種らしいのです。

少し前置きが長くなりました。化石杉についての続きは[後編]をお楽しみに。

JADMA

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