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将軍柏[前編] コノテガシワ

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後も嘱託として勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

将軍柏[前編] コノテガシワ

2016/07/19

中国ではヒノキ科の植物を総じて「柏」と呼びます。ヒノキ自身は大陸には自生しないので「柏」というとビャクシンの仲間か、コノテガシワを指すことが多いと思います。松柏は風雪の中でも一年中、緑の葉を絶やさない常緑樹で、困難な時も節を曲げない高潔さの証とされます。
今回の題は、世界中に唯一、一属一種が東アジアの大陸中北部に自生するコノテガシワです。その中でも威風堂々とした風格を持ち、その齢と大きさから、紀元前に将軍に列せられた巨木、将軍柏についての話です。

コノテガシワ(中国名:側柏)Platycladus orientalis(プラティクラダス オリエンタリス)ヒノキ科プラティクラダス属。この植物は鱗片葉を持ち、枝が横に張らず上に伸びます。そして手のひらを立てるように葉を展開します。この枝葉のつき方は他の植物には見当たらないものです。種形容語のorientalis は、「東方の」という意味を持っています。

冬に柏子と呼ばれる球果を側面につけるその姿は、まさに中国名の側柏の名にふさわしいものです。そしてこのコノテガシワには、葉に裏と表がありません。

日本では、わい性品種がガーデンセンターで多く売られていて、低木と思われているかも知れませんが、10m以上、時には20mにもなる高木です。画像は、中国中西部の大室山斜面に点々と自生するコノテガシワの自生状況です。

コノテガシワは陽樹で、他の木々との共生を好みません。日当たりを求め、時にはこのような、垂直な崖にも自生していました。土壌のない環境でも、わずかな岩の裂け目、隙間に根を伸ばします。成長が遅いわりに頑強に生育する植物です。

さて、将軍柏についての話です。中華文化の中心地は中原です。その中心には中岳と呼ばれる崇山(すうざん)があります。ここは河南省登封市にあり、洛陽の都から程近い霊山として、紀元前からの、文化と学問、宗教の府としてさまざまな施設が作られてきました。それらは、世界遺産となっています。

将軍柏は崇陽書院の中に生えています。正しくは、将軍柏が自生している場所に古代の教育機関(儒教大学院)である崇陽書院が建てられたのです。

漢の武帝(在位:紀元前141~87年)は、この書院ができる前のこの地に訪れ、そのあまりに見事で類するものがない、3本の巨木に将軍の位を授けたとされます。画像は、第二将軍といわれるコノテガシワです。残念ですが、第三将軍は消失し、この世にいません。

次回、「将軍柏 後編」では、紀元前にすでに古木として知られていた、大将軍柏の登場です。お楽しみに。

JADMA

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