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将軍柏[後編] コノテガシワ

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後も嘱託として勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

将軍柏[後編] コノテガシワ

2016/07/26

広い大陸には何があるか分からないものです。とんでもない長寿のコノテガシワが大将軍柏です。その樹齢を中国の方に聞いたら「4500年以上」と言うのです。正直「大ぼらを吹いたでしょ?」と言いましたが、きっぱり「中国には紀元が始まる前から文字があり、記録がある」と言うのです。[後編]では大将軍のお出ましです。コノテガシワを題材に樹木の寿命についても考えてみたいと思います。

[前編]の続き、第二将軍です。幹は岩のようで、生きている樹木の感じがしません。ここまで頑強にこの木たちは生きます。この樹を見ていると、長寿を超えたもの、不老不死さえ感じるのです。

おそらく樹木にはプログラムされた「死」というのがないのだと思います。高分子化合物であるセルロース、それを包み込むリグニンは、いまだ分子量が確定していないと聞いています。木を分解するのはキノコの仕事です。乾燥した環境ではキノコは生えにくいでしょう。木部が腐らない限り、永遠の時を樹木は生きるのかも知れません。この第二将軍も紀元前には千年木とされていたので、今では樹齢3000年はくだりません。

目を180度転じてみると書院の奥に、得体の知れない樹木が見えます。それは、幾千年の年を重ねながらも、生き続ける大将軍のお姿でした。

大将軍は樹高20メートル程度もある巨木ですが、なんと落雷にあい、あらかたが炭になっていたのでした。

大将軍の姿を見ると、落雷は頂点に当たり、この木を四方に割ったのが分ります。樹木の木部は、実は、死んだ細胞でできていて樹木を物理的に支えます。細胞分裂をして成長していく場所は形成層と呼ばれる表皮に近い場所です。その場所が幸いにして残ったのです。満身創痍の大将軍はそれでも素知らぬふりで、青々とした葉を空に向かって広げていました。

漢の武帝がこの地を訪れた時のことが、文献に残っているそうです。それには、その時のこの樹の齢が3000年とされているそうです。この地は乾燥していて、日本のように樹木がすくすく育ちません。他でも樹齢2000年のコノテガシワを見ましたが、周りを圧倒する巨樹ではありませんでした。何を根拠にして紀元前に樹齢3000年としたのかは不明ですが、比較対象的に樹齢を決めたとしても、当たらずとも、遠からずと思います。それにしても紀元前に文字があり、文書が残っているのは中国文明のすごいところです。

武帝がこの樹を大将軍に列してから、2000年の時が流れています。この木は、紀元が始まる前にすでに3000年の樹齢でしたから、現在では樹齢5000年を越す計算です。樹木の専門家の推定樹齢でも、このコノテガシワは4500年以上の樹齢であることは間違いないとされています。崇山将軍柏は、悠久の時を超える、世界最大最古級のコノテガシワでした。

次回は「達磨とハグマノキ」。達磨大師が壁に向かい、9年間座禅修行をした場所に因む植物のお話です。お楽しみに。

JADMA

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