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竜生九子[中編] ガガイモの仲間

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後も嘱託として勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

竜生九子[中編] ガガイモの仲間

2016/09/13

皆さんは、水道の水が出る所を蛇口(じゃぐち)と書くことを知っていると思います。では、なぜ蛇(へび)の口(くち)なのでしょう。奇妙な言葉だと思いませんか? その漢字の語源も竜の子どもたちに関係しています。今回は、六男の話と、東アジアに生えるガガイモ類の話を前回に続き、いたしましょう。

竜の子どもたちのうち六男は覇下(ばしゃ、または、はか)といいます。水が大好きな子で、水路の出口や、湧き水口、建物の排水路の先端で活躍します。竜に似ていても非なる風貌をもち、水の出口にニュウと顔を突き出します。写真は河南省少林寺の覇下です。

こちらは山東省曲阜の覇下です。これらは想像上の生き物ですので、彫刻の作家ごとに姿が違うことは仕方ありません。

竜の六男である覇下は、海を超え、東京都調布市深大寺にもいました。ここは湧き水が豊富にでる地形です。中国の彫刻を模したのでしょう。できが良くないので竜に見えず、蛇に見えます。水道の蛇口は、いつの間にか竜の口(覇下の口)が蛇の口に変化して「蛇口」になったのです。

さて竜の子どもたちの話から、唐突ですがガガイモ類の紹介の続きです。前々回ノモカリスの記事で紹介した、プラントハンター、ジョージ・フォレストGeorge Forrestの名を刻む、中国のガガイモ類です。Cynanchum forresti(キンナクム フォレスティー)キョウチクトウ科キナンクム属。黄色い副冠が盛り上がったガガイモ類独特の花をつける低木です。

Cynanchum forresti(キナンクム フォレスティー)はキョウチクトウ科です。この科の植物は毒草が多いので注意が必要です。ガガイモ類にも毒があるので食べてはいけません。 ヒツジやヤクなどの動物も食べないので、他の植物に比べ、高山の放牧地に有利に生息できるわけです。

同じ理由で日本の山地に目立つ植物があります。それはイケマ(生馬)Cynanchum  caudatum(キナンクム コーダツム)キョウチクトウ科キナンクム属です。多年草のつる性植物で、葉柄の先にハートの形をした葉を対生に付けます。つるが動物の尻尾に見えるのでしょうか。種形容語caudatumは尾を意味します。ニホンシカが増えすぎて植生が変わった奥日光において、特に目立ちます。

またイケマは、毒草故にアサギマダラという美しいチョウの食草の一つです。アサギマダラの幼虫はイケマの毒に耐性があります。それを食べるとアサギマダラが毒虫になるのです。アサギマダラはイケマの毒を利用して天敵から身を守っています。

ガガイモの仲間でチョウの食草になっている植物は、他にもあります。沖縄など琉球列島に生えるホウライカガミという植物です。ホウライカガミParsonsia alboflavescens(パルソンシア アルボフラベスケンス)キョウチクトウ科は、海岸付近の石灰岩地帯に生えます。ガガイモ類とキョウチクトウ類の中間的な植物でした。このホウライカガミはオオゴマダラというチョウの食草です。ここでも、植物が合成する二次的代謝物の毒が、食物連鎖を通じて利用されています。

次回は「竜生九子[後編] ガガイモの仲間」を取り上げる予定です。お楽しみに。

JADMA

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