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連載

竜生九子[後編] ガガイモの仲間

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後もアドバイザーとして勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

竜生九子[後編] ガガイモの仲間

2016/09/20

竜はさまざまな生き物との間で子どもを作りました。長男の贔屓(ひいきまたはビシ)は、明らかに亀ですし、次男の螭吻(チウェン)は魚です。いよいよ[後編]になると話に無理があるのか、竜の姿から離れていきます。

七男は、山犬の風貌をもち、睚眦(ヤズまたはガイシ)といいます。目がつり上がり恐ろしく野蛮な性格を持ち、殺りくを好みます。目の際がつり上がることを睚(まなじり)といい、眦と書いてもまなじりと読みます。相手を恐ろしいまなざしで威嚇し、勝負を決することを「眦(まなじり)を決する」といいます。竜の七男は、軍旗や刀などの柄などにデザインされているので、あまり出合いたくありません。

八男は、狻猊(スアンニまたはサンゲイ)といいます。竜というよりライオンのような姿をしています。西域に住む獅子は体が大きく力の象徴です。恐ろしい姿とは違い、聴き上手、人の話を聴くことが大好きな温厚な性格をしています。火や煙を好み、寺の香炉などの足にいます。偉いお坊さんが座る場所を猊座(げいざ)といったり、碩学(せきがく)な高僧の敬称を猊下(げいか)というのはこの子にちなんでいます。

さて、さまざま形態をもち、比較的稀産なガガイモ類の話の続きです。イヨカズラは前回話したイケマと同じキナンクム属になっていましたが、APG分類によって新しい属に移されました。イヨカズラVincetoxicum japonicum(ビンセントキシカム ヤポニカム)キョウチクトウ科カモメヅル属。種形容語のjaponicumは日本を意味します。東アジアの暖地に自生し、海岸草原などやや乾燥した場所を好みます。

こちらはコバノカモメヅルVincetoxicum sublanceolatum(ビンセントキシカム サブランセオラツム)キョウチクトウ科カモメヅル属、日本特産の植物です。和名は小葉の鴎蔓(こばのかもめづる)です。夏の盛りに湿地のアシにまとわりついて花を咲かせていました。つるの長さは2mを超えます。花が地味で1cm程度と小さく、ヤブに生えるので探し出すことは難しい植物だと思います。一度生えると丈夫な植物なのですが、人が手を入れた場所にはなかなか生えてきません。この植物自身が少産なこともあり、あまり見かけない植物だと思います。

コバノカモメヅルの花を拡大して見ました。何となくブルースターという園芸植物の花に似ています。先端がカールしていて、風車のようでかわいい形をしています。種形容語のsublanceolatumとは葉の形を表し、やや披針形をしているという意味です。

ツルガシワVincetoxicum macrophyllum var. nikoense(ビンセントキシカム マクロフィラム バラエティー ニッコウエンセ)キョウチクトウ科カモメヅル属。山地のやや暗い林の中に生える、珍しいガガイモ類です。赤紫色の小さな花を付けますが、ペリプロカやガガイモのように花被に細かい毛が生えています。50cm程度の低木状ですが、上部でつるを伸ばす妙な植物です。種形容語のmacrophyllum は大きな葉を表し、母種のツクシガシワの変種(var.)です。変種名のnikoenseには日光の名前がついていて、日光の株によって変種にされたことを表します。日本の本州と四国の林の中に生えます。花の上におかしな袋果が付いているのがわかりますか。

ガガイモの仲間は東アジアだけでなく世界中に分布しています。形状もつる性だけでなく、低木状であったり、多肉植物状であったりさまざまです。花も美しいので園芸植物になっている種もいくつかあります。フウセントウワタGomphocarpus fruticosus(ゴンフォカルパス フルティコスス)キョウチクトウ科ゴンフォカルパス属。ペリプロカのように花被に毛が生えていますね。フウセントウワタはその奇妙な実で知られます。

フウセントウワタの袋果です。ガガイモ類は副花冠をもち、花被に細かい毛が生えていること。基本的には毒草であること。茎や葉を切ると乳液を出すこと。写真のような袋果ができること。そして、中に毛のついたタネがつまっていることなどが共通点としてもっているおかしな連中です。この面白いガガイモ類の話をしていると、いつまでも終わらないので再び竜の子どもたちに話を戻します。

いよいよ、話を閉めるのにふさわしい末っ子の話です。九男は椒図(ジュクトまたはショウズ)と呼び、貝のような生き物とされていて恥ずかしがり屋で用心深い性格をしています。とにかく防御に徹し、閉じることが大好きな子なのです。古い建物でいつも門番の仕事をしています。
竜生九子。面白いつくり話ですが、様々な日本の文化や言葉の中にひっそりと身を隠し生きつづけて居ます。
ガガイモ類も、ヤブや林の中で人目につかず生えているので、探さないとなかなか出会う事が難しい植物です。
あなたは、いくつの竜の子供たちとガガイモ類に出会う事ができるでしょうか?

次回は「黄河山水草木譜」を取り上げる予定です。お楽しみに。

JADMA

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