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半寄生する植物[後編] シオガマギクの仲間

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後も嘱託として勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

半寄生する植物[後編] シオガマギクの仲間

2016/12/13

シオガマギク属(Pegicularis、ペディクラリス)は高山や寒冷地など冷涼で湿った環境を好み、北半球に広範囲に自生していますが、日本を含む東アジアが分布の中心です。とりわけヒマラヤ地域と雲南省南西部には、さまざまなシオガマギクの仲間が分布していて、その多様さは驚くばかりです。
今回は形も奇抜で、美しい東アジア南東部のシオガマギク属をいくつか見てみましょう。

シオガマギク属は高い山に行くと普通に見ることができます。雲南省南西部の標高3000m程度の高層高原には、たくさんの種が自生しています。

私が東アジアのシオガマギク属で一番きれいだと思うのは、Pegicularis monbeigiana(ペディクラリス モンベイギアナ)です。
ガクは筒状で、花弁は唇形といわれる形状です。下弁は平たく3つに分かれ、上弁は左右に折りたたまれ湾曲して先がとがっています。このような形状は、花粉媒介の昆虫と共に進化してきたと考えるのが普通ですが、昆虫学者でない私には説明のしようがありません。花色は、下唇が純白、上唇がはっとするような赤紫色をしています。

Pegicularis monbeigiana(ペディクラリス モンベイギアナ)ハマウツボ科シオガマギク属は、とりわけ大きなペディクラリスです。この仲間の多くが10~20cm程度の小型であるなか、70cm程度もある大型の種です。このモンベイギアナは雲南省南西部の標高2500~4200mの高原に特産です。私が見たものは3400m付近にありました。

数あるシオガマギク属の中でも、特に花冠が長く、湿地を好むPedicularis longiflora(ペディクラリス ロンギフローラ)。種形容語のlongifloraとは、文字通り長い花を表します。雲南省からチベットそして、パキスタンに及ぶ高山に自生し、いくつかのバラエティーがあります。この種はTubiformis(ツルビロルミス)という変種だと思います。

Pedicularis longiflora(ペディクラリス ロンギフローラ)は10cm程度の小型シオガマギク属です。日本にもキバナシオガマと呼ばれるペディクラリスがありますが、この種は黄色というより黄金色で花色が鮮明です。それにしても、こんな長い花冠の先にある蜜を吸う昆虫は誰なのでしょうか?

Pedicularis siphonantha(ペディクラリス シフォナンタ)。標高3000m程度の湿った草原に群生していました。種形容語のsiphonanthaとはサイフォンと表します。唇状の上弁が折り重なり管状になり、サイフォンのように曲がっているからです。

Pedicularis rex(ペディクラリス レクス)は派手な色彩が多いこの仲間の中では、地味で大型です。草丈は60cmくらいでした。日当たりのよい、やや乾いた広々とした場所や針葉樹の林縁などに生えていました。

この種はPedicularis microchila(ペディクラリス ミクロチラ)だと思います。正直よく分からないのです。それほどこの地域のシオガマギク属はさまざまで、多くの種が自生しているのです。他にも多くのこの仲間を見ましたが同定できずにいます。きっと植物学者でも困るはずです。

近年、業界ではこの美しいシオガマギク属の園芸品種化を画策する動きがありましたが、その取り組みは失敗に終わりました。それはこのシオガマギク属がハマウツボ科という寄生、半寄生を生業にする複雑な生態を有する植物群だからでした。この仲間は葉緑素をもって光合成をしますが、宿主であるイネ科植物の根から栄養を取らないと、まともな生育ができません。シオガマギク属などハマウツボ科の植物は、初めは光合成をして自分で栄養を作り出し生きていたはずです。どのような経緯があって、寄生や半寄生という生活にたどり着いたのでしょうか? それを説明するには、まだ勉強が足りません。

次回は「冬の海岸に生える海菜(ワダン)の仲間」を取り上げる予定です。お楽しみに。

JADMA

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