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休暇をとって集めた 球果図鑑[その2]

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後もアドバイザーとして勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

休暇をとって集めた 球果図鑑[その2]

2017/03/28

「松にも色々ありまして♪」まつのき小唄(作詞:藤田まさと・夢虹二 作曲:不詳)を知っている人は60歳以上のお仲間だと思います。懐かしい昭和の歌謡曲の一節ですね。詩のとおりマツにはいろいろあります。マツ科マツ属は老舗で、北半球各地で分化し、世界にはさまざまな種が生えています。前回、二針葉マツと五針葉マツの球果を紹介しました。今週は三針葉マツの球果から始まります。

なぜか私たちの住む世界には四針葉マツはありません。二針葉、三針葉、五針葉なのです。マツ葉の数は1、1、2、3、5、8、13、21、34、55と、一つ前の数字を足し算して得られる数列に従っているようです。クロマツやアカマツの二針葉、ハクショウ(白松)などの三針葉、そしてゴヨウマツ類の五針葉です。

私の知っている三針葉マツ類の球果には、どれもとげ、もしくはとげ状の突起が付いています。右の大きな球果3つはダイオウショウ(大王松)Pinus palustrisです。左のとげとげの3つがテーダマツPinus taeda、いずれも北米東部に生えるマツです。一番下にある小さな球果、穴あけの先端付近にあるものが、東アジア唯一の三針葉マツであるハクショウの球果です。

ハクショウは以前にも紹介したことがあるので、覚えている方もいらっしゃるかもしれません。ハクショウもしくは白皮マツPinus bungeana(ピナス ブンゲアナ)マツ科ピナス属。中国中西部の山岳地帯に自生する三針葉マツで、老成すると樹皮が剥がれ、地肌が白く見えるのです。険しい崖に自生するその姿も美しいマツです。

テーダマツPinus taedaマツ科マツ属は北米東岸の降水量の多い地域に生えます。三針葉マツであるテーダマツの球果には、鋭いとげが発達していて、素手で握ると「イテーダ」となるので注意が必要です。

マツ科にはマツ属以外にいくつかの属があります。アブラスギKeteleeria davidiana var. formosana(ケテレーリア ダビディアナ バラエティー フルモーサナ)マツ科アブラスギ属は、漢字で油杉と表記し、ユサンともいうのでスギと思われるかもしれませんが、マツの仲間です。それは球果を見れば分かります。

アブラスギの種鱗にはタネが2セット入っています。それには翼が付いていて、高いところから落とすとクルクルと回りながら落ちてきます。膨らんだところの中身を確認しましたが、ほとんど胚が入っていませんでした。代わりによい香りのするオイルが詰まっていて、つぶすとヒノキにも似た香りを発します。

アブラスギは亜熱帯、熱帯域に生えるマツの仲間です。球果はマツ類のようですが、葉はイヌマキみたいに幅広で互生します。日本に自生はなく、台湾、中国南部付近に自生します。アブラスギの針葉は油分を感じるほど艶々していて触っても痛くありません。美しく好感の持てる針葉樹なので、もっと日本の公園などに植えたい樹木の一つです。

アブラスギの種形容語のdavidianaは、自然科学に造詣の深いフランス人宣教師Armand David(アルマン ダヴィド)氏に因みます。彼はジャイアントパンダの存在をヨーロッパに報告した人でもあります。変種名のformosusとはきれいな、美しいという意味のラテン語ですが、学名上は台湾産を意味します。台湾が美しい島であることに因むのでしょう。球果はこのようにこずえに直立しています。

今度は小さくて、もろいツガの球果の登場です。種鱗も薄く、すぐに土に同化してしまいそうで、観賞の対象にはなりそうもありません。樹木は立派な常緑針葉樹なのですから、もう少し球果も頑張ってほしいものです。長さ2~3cm程度で幅は1.5cm程度大きさでした。

ツガTuga sieboldii(ツガ シーボルディー)マツ科ツガ属。種形容語のsieboldiiはご存じシーボルトに因む名前です。彼はその著作『日本植物誌』の中で、ツガはかなりまれな高木で、その木材は非常に珍重されていると記述しています。老成した株は、枝が水平に広がり20mくらいで直立していました。幹も太く、よい材が取れそうです。

針葉樹の高木は、葉や花などの同定に結びつく物証が高いところにあるので判別が難しいのですが、下に落ちている球果を見つけると、その木が何の木なのか分かります。ツガの球果は2~3cmの小型で、緑色からこげ茶に熟し、こずえの先にぶら下っていました。

次回は「休暇をとって集めた 球果図鑑[その3]」です。お楽しみに。

JADMA

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