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野生のスイートピー[前編] レンリソウ属

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後もアドバイザーとして勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

野生のスイートピー[前編] レンリソウ属

2017/10/24

甘い香りを周りに振りまき、フリルの美しいスイートピーは、地中海のイタリア南部シチリア島、キプロス、エーゲ海諸島に自生するLathyrus odoratus(ラチルス オドラツス)マメ科レンリソウ属から改良されました。17世紀に発見されたLathyrus odoratusは、イギリスに渡り、園芸植物として育種されたのです。いろいろな花色、フリル花などが生まれました。そして日本にたどり着いたスイートピーはさらに改良され、切り花用として産業化されています。

今の時期、園芸店のタネ売り場には秋まきのタネが並んでいます。私の記憶では、秋まきのタネの絵袋(タネが入った袋)で一番販売量が多いのは、スイートピー ロイヤルミックスです。開花苗が売っていないのでタネをまいて育てるしかないこと、日当たりのよい場所にタネさえまけば簡単に育てられることが人気の理由だと思います。

ジャコウレンリソウLathyrus odoratus(ラチルス オドラツス)マメ科レンリソウ属。種形容語のodoratusとは芳香のあるという意味です。甘い香りがあり、通称はスイートピーです。漢字で麝香連理草、中国名は香豌豆です。野生のLathyrus odoratusの花色は紫色といわれています。優勢花色からスカーレット、ピンク、ローズ、ホワイト、ラベンダー、ブルー、バイカラー、ストライプなど複雑な色合いも生まれ、花姿も豊かになりました。

スイートピーの仲間(レンリソウ属)は世界の温帯域に自生があり、日本にもわずかながらその仲間は自生しています。日本に生える野生のスイートピーを紹介していきます。波の荒い陸中海岸です。日本全土の海岸にはハマエンドウが夏に開花期を迎えます。

ハマエンドウLathyrus japonicus(ラチルス ジャポニクス)マメ科レンリソウ属。この植物は生態から和名で浜豌豆と呼ばれ、英語ではsea peaとかbeach peaなどといいます。

ハマエンドウの種形容語japonicusは日本産を表しますが、日本のみならず、全世界温帯域の海岸などに自生する植物です。偶数羽状複葉を持ち、先端に巻きひげを持ちますが立ち上がりません。風の強い海岸域に適応してわい性で、絡みつきながら地を這います。

ハマエンドウの花は2.5~3cm程度の大きさがあり、花色は青紫、青と白の2色系、白色もあります。いかにもマメ科らしい美しい花だと思います。

花が終わるとすぐに4~5cm程度の大きな豆果を付けます。スナックエンドウやグリーンピースに似ていて、なかなかおいしそうに見えます。マメ科はダイズ、インゲン、エンドウ、ソラマメなど人類にとって重要な食料になっている半面、毒草も多いので注意が必要です。

豆果の中には大きなタネが5個入っていました。このタネは大きく食料になりそうなのです。日本にはレンリソウの仲間を大量に食べる文化はないのですが、世界的に食料にする地域があります。ところがです。レンリソウ属は触ったり、少しぐらい食べても何ともないのですが、大量に食べた場合、恐ろしい毒を秘めていたのでした。それは次週お話しします。

次回は「野生のスイートピー[後編] レンリソウ属」です。お楽しみに。

JADMA

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