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Plant of Kunming [その9]東アジア的珍菜2

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後も嘱託として勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

Plant of Kunming [その9]東アジア的珍菜2

2018/09/04

昼食、夕食において中国の家庭料理では、4つのおかずと1つのスープを供することを基本とします。それを四菜一湯といいます。料理屋さんには、メニューがないことが多く、台所へ行き材料を指名して作ってもらいます。どんな料理が出てくるかはコックの気分次第、運任せなのです。その材料を見ると、日本に比べ鮮度がかなり落ちるものの、実に豊富な野菜があり、不思議で奇妙な珍菜たちとも出合います。どんな味がするのか、写真を見て想像してください。

これが、昼食でした。四菜一湯の5皿です。なかなかヘルシーでしょう。4人で100元(1700円)ほどです。ハスの実ナッツはお茶請けですから品数に加えません。

注文は、たくさんの食べたい野菜と少しの肉類を指定するだけです。後はコックの気分次第で人数分の料理が出てくる仕組みです。

1つ目の珍菜はこれです。何でしょう? 私も初めて見て、初めて食べるものです。日本では食べることはありません。前代未聞の野菜です。キクラゲなどは理解できますが、この緑の野菜には驚きました。これは、針葉樹であるマツ科植物の若葉をゆでたものです。少しマツ臭い気がします。白亜紀に生きた草食恐竜たちは、裸子植物を食べたとされます。大昔の恐竜の気分になって食べました。

日本でその料理を食べることがないのは、その植物が生えていないからです。それは、中国南部を中心にして分布するケテレリアKeteleeriaマツ科アブラスギ属の若葉でした。アブラスギ属は温暖な東アジア南部から東南アジアに固有の針葉樹です。針葉樹を食材にするとは、恐るべき食の探究心です。

次の野菜もまず日本では食べることができません。細切れの肉とナッツにあえてある緑の野菜は、トーナ シネンシスと呼ばれる高木の葉です。この葉は、ニラとニンニクを混ぜた匂いと味なのです。中国名を香椿という独特の“木の葉野菜”です。

香椿と書いてxiāngchūn(チャンチン)と発音します。香椿Toona sinensis(トーナ シネンシス)センダン科チャンチン属。それは、見上げるような高木です。高い木の若葉の収穫は困難だろうと思います。

しかし、香椿の木はよくできていて、孫生えをたくさん出すのです。それなら収穫は楽なはずです。

これは、珍しい野菜ではありませんが、普通は食べない部位です。それは、カボチャnánguā(ナングア)の花とつるです。実を食べるのだから、花やつる食べてもいいだろうというわけです。シャキシャキとした歯応えでおいしかったです。カボチャはCucurbita(ククルビタ)ウリ科カボチャ属の野菜です。

雲南省の野菜市場では、実を食べる野菜のつるの部位をよく見ます。写真はハヤトウリのつるです。私は、この植物の実よりつるの方がおいしいと思います。ハヤトウリSechium edule(セキウム エドゥレ)ウリ科ハヤトウリ属。栽培にはタネではなく実を植え付ける、熱帯アメリカ原生のウリ科の植物です。

次の珍菜はこれです。キノコのようにも見えるこの得体の知れない白い野菜は何でしょう。日本にもたくさん生えているのですが、通常、日本では食べません。これを食べようと普通には思わないのです。何でしょう?

その食材の正体は、ガマの地下茎から伸びる新芽だったのでした。ガマTypha(ティファ)ガマ科ガマ属です。中国料理の食材の豊富さは驚くばかり、その探究心と食のために労を惜しまない根性、気合の入れ方は半端ではありません。東アジア的珍菜世界は、まだまだ底を知ることができません。

次回は「Plant of Kunming [その10]東アジア的珍菜3」です。お楽しみに。

JADMA

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