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Plant of Kunming [その12]長虫山の植生 中編

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後も嘱託として勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

Plant of Kunming [その12]長虫山の植生 中編

2018/10/16

秋になると昆明市周辺の野山には、野菊と呼ばれるシマカンギクChrysanthemum indicum(クリサンセマム インディクム)キク科キク属がたくさん咲きます。その黄色に妙にリンドウ属の青い色が似合います。今回は、野菊とリンドウ科の希少な植物から始まります。

長虫山の稜線です。草木が枯れるとこの山は、山火事防止のためにしばらく立入禁止になると聞きました。中国の中では水に恵まれる昆明市も日本の降水量に比べる約半分です。そして特に冬は雨が少なく乾燥します。

稜線の草地にはシマカンギクChrysanthemum indicumがたくさん咲いていました。種形容語のindicumは、インドのことです。日本の関西以西から長江以南の中国、インドまで生える分布の広い植物です。日本は、シマカンギクの北限分布に当たります。この植物は小菊のようで現在のイエギクの交配親として有名です。

シマカンギクのその隣に咲いている青い花を見てください。リンドウのようですがちょっと違います。

リンドウは根出葉から付く花茎が立ち上がり花冠は5つに分かれるのですが、この植物は花冠が4つに分かれ草姿も繊細です。

シロウマリンドウGentianopsis sp.(ゲンティアノプシス)リンドウ科シロウマリンドウ属この植物は、リンドウに近縁の植物でシロウマリンドウの仲間です。種は分かりませんでした。この属は日本では、中部山岳地帯の高山に希産する一年草です。ゲンティアノプシス属は、北半球に広く自生する植物ですが、日本に残存する少数の個体は、大陸につながっていた証拠なのでしょう。

日本では、秋の草原にセンブリが見られますが、昆明市でもセンブリ属の植物が多く見られるようです。至るところにセンブリ属の花が咲き終わった後が見られました。もう少し早ければ面白いセンブリ属に出合えたかもしれません。イネ科の枯れ葉の中に黒い花を付ける小さなセンブリを見つけました。

Swertia punisea(スウェルティア プニセア)リンドウ科 センブリ属。和名はありません。属名は、オランダの植物学者の名にちなみ種形容語 のpuniseaとは、Punica(ザクロ)のこと。花色がザクロ色で血のように赤いことを表します。

スウェルティア プニセアには、色幅があります。こんなおちゃめな花色はすてきです。もう少し花の大きさがあればいいのですが、1cmに足らないのは残念です。

写真は、ムラサキセンブリSwertia pseudochinensis (スウエルティア プセウドキネンシス)リンドウ科センブリ属です。東アジアの草原環境地域に生える二年草で日本では希少なセンブリです。写真のようにセンブリ属の特徴は柱頭がどれも開いているのですが、柱頭が尖っていて、センブリ属に似ていているようで違うセンブリがあります。

その名もヒメセンブリLomatogonium carinthiacum(ロマトゴニュウム ケリンティアクム)リンドウ科ヒメセンブリ属。種形容語は オーストリアのケルンテン州(Karnten)を表します。ヨーロッパにも生えていることが学名からも分かります。

ヒメセンブリは、日本では中部山岳地帯の限られた場所に生える植物で絶滅が危惧されています。まず見ることが難しい植物の一つです。しかし、世界では中国からヨーロッパにかけて広く自生する植物なのです。センブリ類の中では花がとりわけ大きく2.5cmぐらいで花色は薄い水色です。

私はヒメセンブリを見たいと長い間願っていました。その思いは日本ではかなわず昆明市近郊の山で実現しました。中国はこのヒメセンブリ属の分布の中心なのです。やはりヒメセンブリもまた、日本が大陸とつながっていたときの残存的分布なのだと思います。

長虫山には、いくつかのLeontopodium sp(レオントポディウム)キク科ウスユキソウ属がありました。ウスユキソウ属といえば、エーデルワイス(Edelweiss) Leontopodium alpinum(レオントポディウム アルピヌム)キク科ウスユキソウ属が有名でヨーロッパアルプスを代表する花といわれています。しかし、ヨーロッパでの分布は、この1種だけです、ウスユキソウ属の分布の中心は、ヨーロッパではなく東アジアなのです。日本や中国の高山には数多くのウスユキソウ属が生え、分類が困難なほどです。残念ですがこの種名は分かりませんでした。

レオントポディウム属は、2000m以上の高山で石灰岩地帯を好みます。多くの種は白い雪の結晶のような花姿ですが、花のように見えるのは花の周りを飾る白い葉で、苞葉(ほうよう)といいます。白い綿毛が密に生え、小さな花を保護しています。属名のLeontopodiumは、Leon(ライオン)を表し、全体でライオンの足という意味です。足というよりライオンのたてがみの方がイメージがしっくりきます。


こちらは、雲南省北部の乾いた原野に生えるLeontopodium artemisifolium(レオントポディウム アルテミシフォリウム)キク科 ウスユキソウ属。和名はありません。丈は50cm程度の大柄のウスユキソウです。

次回は「Plant of Kunming [その13]長虫山の植生 後編」です。お楽しみに。

JADMA

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