小杉 波留夫
こすぎ はるお
サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後もアドバイザーとして勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。
燃える種[前編]ナンキンハゼ
2019/01/22
私がナンキンハゼという植物を初めて意識したのは、この植物の故郷である中国南部の雲南省昆明市の石林という世界遺産の景勝地です。ナンキンハゼは東アジア南部固有の植物です。この植物は、黄緑色をした総状花序(そうじょうがじょ)の花を夏に咲かせ、きれいな紅葉を見せた後に奇妙な白い種を付けます。
ナンキンハゼTriadica sebifera (トリアディカ セビフェラ) トウダイグサ科ナンキンハゼ属。属名Triadicaとは種子が3つ連なったという意味を持ち、種形容語のsebifera とは種の周りに付く脂肪を表します。ナンキンハゼの学名はその種の形状と性質を表すのです。
これが、ナンキンハゼの種子です。およそ0.2gに満たない質量ですが、この小さな種は大きな火力を秘めているのです。
ライターで種に火をつけると、始めは表面の脂肪分がちょろちょろと燃えます。ここまでは想像できました。
ところがです。しばらく燃えるとガスが勢いよく噴射されたのです。それはジェット機の噴射に似ています。
やがて別の場所からも噴射が起き、火炎の放射になりました。
これは尋常な種の燃え方ではありません。「ゴーゴー」と音響効果付きで燃焼したのです。
火炎の噴射が収まると種全体が激しく燃えます。燃焼時間は平均で1分程度でした。なぜこのような燃え方をするのでしょうか?