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連載

燃える種[中編]ナンキンハゼ

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後も嘱託として勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

燃える種[中編]ナンキンハゼ

2019/01/29

昔の夜は、今よりもっと暗かったと思います。大きな台風が来るとマッチとろうそくをそろえ停電に備えました。ろうそくの明かりだけで過ごす夜もあったのですが、今では遠いおぼろげな記憶の中です。電気がない時代、夜の闇を照らす明かりはろうそくでした。江戸時代、ナンキンハゼはろうそくを作る目的で中国から日本に移入されたのです。今は、めったなことで停電はしませんし、発電機も普及しナンキンハゼからろうを採る必要はなくなったのかもしれません。しかし、ナンキンハゼからろうそくを作る技術はどのようなものだったのでしょうか? 実証してみることにしました。

まず、ナンキンハゼの種を集めます。結構大変な作業でしたが500g集めました。表面の脂肪分は重さの20パーセントと仮定しました。この100gのろう物質でどれくらいのろうそくができるか実験です。

ハサミやナイフで表面の脂肪でできた仮種皮だけを取り出そうと思ったのですが、10粒ほど作業を続けると根気がなくなります。

そこで、ナンキンハゼの脂肪が比較的低温で溶け出す性質を利用して、鍋で煮る作戦に切り替えました。

石油ストーブの上でコトコト煮出しますが、あまり効果が上がりません。仮種皮の脂肪の上に何かの膜があるらしく素直に溶け出さないのです。棒など突つき、こそげ落とすように時間をかけてかき混ぜます。すると背脂の入った豚骨スープのようになってきました。

鍋から種とかすだけを取り出します。時間をかけてかき混ぜてもかなりの脂肪が種に残っていますが見切りました。なんだか、ラーメン屋になった気分です。

「豚骨スープもどき」を静かに冷やすと表面のろう物質が固体になりました。

ろうだけを取り出し、もう一度溶かすと水分が蒸発するのと同時に異物が沈殿しました。

ろう物質の上澄みだけを湯煎にかけ液体状態を維持しておきます。

灯心と型を用意します。灯心は、木綿糸、タコ糸を用意しましたが、頼りなくすぐに消えてしまいました。灯心にも工夫が必要でした。結果、和紙を三つ編みにして溶けたろうにつけておいたものにします。和ろうそくは形状も重要だったのです。よく燃えるろうそくには、ろうそくの形があります。私は、肥料アンプルの空き容器を型に利用しました。

溶けたろうを型に流し込み、冷やすとろうが固まります。その重さは、32gでした。100gの原料でしたから32パーセントという歩留まりでした。これでは、ろうそく職人になるには無理かもしれませんが、技術は理解できました。

型から抜くと和ろうそくが出来上がりました。しばらく、ナンキンハゼの明かりだけで夜を過ごします。なんとも頼りなげな明かりです。夜更かしを諦めて早く寝ることにしました。次回後編は、ナンキンハゼ植物本体の話です。

次回は「燃える種[後編]ナンキンハゼ」です。お楽しみに。

JADMA

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