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世界球果図鑑[その1]

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後も嘱託として勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

世界球果図鑑[その1]

2019/02/12

裸子植物(Gymnospermae)は、すでに絶滅した種子を付けるシダ植物(シダ種子植物類)から進化を遂げたとされています。古代の地球に現れ、恐竜と共に栄えた植物であり、現存の種はその時代の残存種といわれ原始的な特徴を備えています。裸子植物は、今栄えている被子植物への道筋をつくったご先祖様たちです。

シダ植物は葉の裏に胞子を付けます。裸子植物もまた、葉に直接、種を付けます。そのあたりはシダに似ています。多くの裸子植物は種を葉から進化した雌花の鱗片(りんぺん)に付けます。種子のもとである胚珠が子房で保護されていない構造で、むき出しなので裸子植物といいます。

世界に現存する裸子植物は、私の集計では740種程度。被子植物の30万種以上と比較すると、とても少ないのです。多くの裸子植物が生まれ、そして消えていったのです。

裸子植物の70パーセント以上は、球果植物マツ綱マツ目に分類されています。その多くがいわゆる松かさ(松ぼっくり)状の構造を持つ鱗片に種を包み込むのです。

松かさ(球果)は、木質で樹脂を豊富に含み、難分解性の強固な物質でつくられ、とても長い間、土の中でもその姿をとどめます。種ごとにユニークであり美しく、その独特の形状は種のシンボルだと思います。

東アジアの球果植物に接しているうちに、いつの間にか世界に生える球果植物とその松かさに興味が出てきました。そして、「松ぼっくり」の図鑑がないことに気が付いたのです。これはもう自分で作るしかないと思いました。甚だ無謀ではありますが、東アジアを中心としながら世界の球果にも知見を広げてみようと思います。可能な限り現地に赴き、山に登り、木を見て幹に触り球果を集めます。あるいは、海外に行った友人にもらったり、日本に植栽された球果植物を調べてきました。名付けて『東アジア植物記 世界球果図鑑シリーズ』をお楽しみください。

球果植物は、全てマツ目に分類されています。マツ目はマツ科から分かれ500以上の種を持ちます それらは、6つの科に分類されています。
・マツ科
・ナンヨウスギ科
・イヌマキ科
・コウヤマキ科
・ヒノキ科
・イチイ科
近年、スギ科はヒノキ科に統合されました。

「世界球果図鑑」は、その主役であるマツ目の半分を占めるマツ科マツ属の植物から始めたいと思います。この植物たちは、北半球にそのほとんどの分布があり北米に多様化が見られますが、なじみ深い東アジアの中国雲南省のマツ属から始めます。

No1. ウンナンショウ(雲南松)Pinus yunnanensis(ピヌス ユンナネンシス)マツ科マツ属。

種形容語のyunnanensis は、雲南省の意味です。写真は、雲南省 麗江市 玉龍納西(なし)族自治県にある玉龍雪山(標高5596m)の麓3000mほどの谷に生えるウンナンショウです。中国の雲南省、貴州省、四川省などに自生します。高い標高がお好みで乾いた場所に生えます。 

ウンナンショウは高い山では樹高は大きくなりませんが、標高が2000m程度になると20mほどになる高木です。樹皮は赤く、葉は3枚で1束の三針葉です。葉の長さは10cmから25cmほどと長いのも特徴です。

ウンナンショウの球果の大きさは5~10cmです。球果の大きさは相対的で必ずしも種の同定に役に立ちません。木の成熟度などによって大きさはまちまちなのですが形状は種独特のものです。ウンナンショウの球果はやや扁平(へんぺい)で球に近い形状を持ち鱗片が多く肉厚です。

そして重いのです。重さを数字で表すために同じ高さのクロマツとサイドバイサイドで比較しました。左はウンナンショウ約30g、右はクロマツ約15gです。ウンナンショウはクロマツの球果の倍の重さでした。ウンナンショウは、環境変化や松枯病に弱く至る所でこのマツの松枯れを見ました。一方、標高の低い雲南省東南部に行くと亜熱帯気候になりウンナンショウは生えません。そこには別のマツが生えます。それはバビショウ(馬尾松)です。

No2. バビショウ(馬尾松)Pinus massoniana(ピヌス マッソニアナ)マツ科マツ属。種形容語massonianaは、イギリスにあるキュー王立植物園のプラントハンター であるフランシス・ マッソン(Francis Masson)(1741~1805)にちなみます。バビショウは、ウンナンショウより高木になり松枯れにも強い様子でした。このマツは中国南部や台湾、東南アジアに原生する二針葉のマツです。

バビショウは、樹皮がアカマツ(赤松)のように赤く、タイワンアカマツ(台湾赤松)と表記されることがあり英語でもChines red pineといいます。アカマツより剛直な木で球果は最大で8cmほどになり大型です。

葉は、黄緑色で20cm程度と長くフサフサとしていて馬の尻尾のように見えるのでバビショウ(馬尾松)といいます。英語の別名もHorsetail pine。なかなかきれいな美人のマツです。

バビショウの球果は赤褐色で、大きさは5~8cmほどあり、一般的なクロマツよりやや大型です。鱗片の裏側が赤いのも特徴の一つだと思います。バビショウは、アジアの亜熱帯や熱帯域に生えるマツですが、耐寒性もあります。そして何より松枯れに強いのが美点です。

次回は「世界球果図鑑[その2]」です。お楽しみに。

JADMA

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