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世界球果図鑑[その9]

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後も嘱託として勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

世界球果図鑑[その9]

2019/06/25

さまざまなマツ科マツ属の球果の中で、東アジアに生えるチョウセンゴヨウは、特別に変わっていてヘンテコです。それでいて、この球果に含まれる種子の栄養は、東アジア北部の森において生態系の起点になると考えられています。それ故に、このマツはあらゆるマツ科マツ属植物の中で唯一その国際取引を監視するワシントン条約(CITES)に登録されたのでした。チョウセンゴウヨウを保護することが貴重な生態系を保護することになると考えたられたのです。

チョウセンゴヨウの球果です。周りには松やにの乾いた樹脂がこびり付いていて白く汚れたように見えます。私が確認した球果の大きさは8~11cm、重さは30~40gでした。その大きさは日本に産する球果の中では最大の大きさです。木に付いた状態で鱗片(りんぺん)を開き種子を飛ばしたり、動物の摂食活動によって種子の分布を図る他のマツ属と違ってチョウセンゴヨウは鱗片を開きません。堅牢なマツ属の球果の中にあってこの球果はもろく、手で握ると壊れます。

チョウセンゴヨウは、たくさんの球果を毎年実らせ多くの球果を落とします。その中には1cm程度の大きな種子をたくさん含んでいるのです。球果を手でひねったり足で踏みつぶしたりするだけでそれは簡単に崩れ、あるいは、自然に風化していくようにプログラムされているのです。

チョウセンゴヨウの種子は、情け容赦ない人間の採取にも耐えるような資源量を持ちます。通常、松の実といわれ世界的に利用されているのはこのチョウセインゴヨウの種子です。少し値段は高めですが、おいしいものです。

森の王者アムールトラは、チョウセンゴヨウの森に住むといいます。毎年たくさんの球果を落とすチョウセンゴヨウは、リスやネズミなどの小動物や鳥たちの食料になります。そして生態系のピラミッドを形成し森の王者を支えます。

アムール川の支流が流れる中国とロシアの国境地帯にはチョウセンゴヨウの森林があります。絶滅の危機にあるシベリアトラを守るには、それを支える豊なチョウセンゴヨウの森を守る必要があるとされロシア産チョウセンゴヨウは、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Floraに登録されました。一般には、ワシントン条約や、英語の頭文字をとってCITES(サイテス)と呼ばれています。

No.20 チョウセンゴヨウPinus koraiensis(ピヌス コーライエンシス)マツ科マツ属。種形容語のkoraiensisは朝鮮半島にあった高麗(こうらい)を表します。北東アジアに原生し、朝鮮半島、中国東北部とロシアのウスリー地方に生息し、日本の本州中部などの山地にもまれに産します。

チョウセンゴヨウは成木になると樹高は30m以上、直径は1m以上になります。樹皮は灰色ですがやがて薄く鱗片状に剥がれ灰褐色になります。木材として有用でもあり資源として利用されるために伐採され森林破壊に繋がっています。シベリアには高さ42mに及ぶ巨木があると聞きます。

チョウセンゴヨウは、東アジア北部からシベリアにかけての森林生態系を代表し最も重要な樹木とされています。古代の日本においてもチョウセンゴヨウはかなり広く生息し、寒冷期の日本にも大陸から分布を広げ広範囲に生息していたことが化石の研究で分かっています。

チョウセンゴヨウは、5本の針葉が束生する5針葉松で葉の長さは8cmほどです。葉は太く気孔線が目立つのでゴヨウマツ独特の葉色で青白く見えます。

今一度、チョウセンゴヨウの球果を眺めてみましょう。熟した球果は黄色い茶色鱗片は反り返っているものの開いてタネを散布することはありません。質感は軽く手でひねると壊れるくらいに脆いのです。中には1cmほどの大きな種子がごろごろと入っています。

次回はいよいよ東アジアの最東端に位置する日本に生息するマツ科マツ属のお話です。お楽しみに。

JADMA

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